1時間を過ぎても一向に食べ終わる気配が無い。
すでに腹一杯で何かを口に入れるのが苦しい状態がずっと続いている。
固いものを噛み続けているので顎が疲れてきている。
普段の食生活でいかに柔らかいものを食べているのかを思い知らされる。
顎が筋肉疲労を起こして痛みを感じるまでになったのは、僕の人生の中では後にも先にもこの時だけだ。
後年、映画「セブン」を見たときに、このときの事を思い出してしまった。
死に到るまで食べ続けるなんて、大変な苦しみなのだろうなと思う。
まあ、この時は2、3時間で終わることなので、大したことはないとは言える。
困るのはその分だけワークが遅れてしまうことだ。
「キャベツを片付けるのに時間がかかってしまい出来ませんでした。」
などという言い訳が通用するほど、オウムというのは甘い集団ではない。
和気あいあいと、おしゃべりでもしながらならまだ気がまぎれるかもしれないが、供養している間は沈黙の行である。
2時間を過ぎた頃になって、ようやく全てを片付けることが出来た。
腹がパンパンでゆっくりとしか動けない。
身体を少し傾けるだけで、吐く気も無いのに胃袋の中身が外に出そうになる。
翌日の護摩供養はキャンセルしたいところだが、サマナたちは強制参加である。
幹部たちと違って逃げることが出来ない。
3時間を過ぎた頃になって、知り合いのV姉さんが2階から降りてきたが、その時に「今生で一番苦しかった。」と言っていた。
やはり女の身にはきつかったのだろうと思う。
それにしても腹立たしいのは幹部たちの行動である。
これまでもニンジンが丸ごと出ているような時には参加せず、丹とソーマと果物だけの時だけ参加したりしていた。
こんな連中が成就者だなんて、お笑いぐさだなと思ったものだ。