自分の名前が呼ばれるのを待っている人たちが、次々に呼び出されていく。
なかなか順調ですよ。
もし、このまま面会できたら凄いことだよなあ、そろそろ順番からいって僕の名前が呼ばれる頃だなと思っていると。
「もとあーるさん。」
と呼ぶ声がする。
あれ?
受付窓口じゃなくて、あさっての方向から呼ばれたような気がするなと思って、辺りを見回すと。
廊下のちょっと奥の方の横手のドアから、ロマンスグレイのおじ様が出てきていた。
手には僕が書いた面会申込書を持っている。
もうすでに嫌な予感がする。(笑)
重ねて、「もとあーるさん?」と聞いてくるので、「はい。」と答えると、
「ちょっとこちらへ。」と言われて、廊下の陰になっているところへ連れて行かれた。
面会申込書の小池 泰男と書かれているところを指差しながら、
おじ様「この方、死刑の確定判決でてますよね?」
元R師「はい、そうですね。」
おじ様「確定判決が出てしまうと、面会も手紙のやりとりも出来ません。」
元R師「そうなんですか。」
「前にこちらに電話した時には、手紙は本人が受け取り拒否をすれば返却されるけど、返却されない場合は本人に渡されると聞いたんですが。」
おじ様「いえ、そういうことはありません。全てこちらでの預かりになります。」
おいおい、それはダメでしょう。
預かったんなら預かったで、連絡くれよ。
元R師「ということは、死刑判決が確定してしまうと、絶対に本人には連絡が取れないということですか?」
おじ様「いえ、そういうわけではありません。」
「御本人から申請があり、こちらで許可した場合は可能になります。」
元R師「その本人からの申請というのはどうすればいいんですか?」
おじ様「御本人に連絡を取っていただく必要があります。」
見事な思考ルーチンだ。
完全に閉じてしまっている。
どこにも付け入る隙がない。(笑)
元R師「では、絶対に何も接触は出来ないということですか?」
おじ様「差し入れならできます。」
「死刑確定後は現金と切手のみになりますが。」
なるほどね、そういうことか。