もう少し後で書く予定だったのだが、野田ブログを見ていて考えが変わった。
いいタイミングなので書いておこうと思う。
オウム真理教における修行の段階は、クンダリニーヨーガの成就、クンダリニーヨーガの完成、そして最終解脱の3つであると言っていい。
一応まだこの先に完全解脱があることはあるのだが、それは今生無理だし来世も無理だからだ。
そして、僕がクンダリニーヨーガの成就を認定された時に麻原から与えられた課題がクンダリニーヨーガの完成であり、そのための修行法が四無量心を背景とした四念処である。
これと関連があり、これをクリアした先に最終解脱に至る実践がある。
あれは93年の半ば頃だったと思う。
麻原から電話がかかってきた。
特にどうと言うことが無い会話が続いたが、麻原は終始機嫌が良かった。
そして、電話を切る間際になって、麻原が突然こう言ったのだ。
「今生、とりあえず最終解脱しろよ。」
命令口調ではなく、優しく語りかけるような口調だった。
僕はこの頃、最終解脱について考えることが多かった。
正悟師や正大師を見ていて、こんなもんじゃないという思いが強くあった。
自分はこんなもののために出家したんじゃない、最終解脱するために必要な条件なり修行法なりがあるのなら知りたいと思っていた矢先のことだった。
そこでこれ幸いとばかりに、麻原にどうすれば最終解脱できるのかを聞いてみた。
麻原はしばらく間を置いて、こう答えた。
「一切を幻影と見て、この現世を生きる。」
一切を幻影と見る。
一切を幻影、一切を幻影、一切を幻影。
心の中で反芻した。
しかも、この現世、この現世、この現世。
なぜ出家ではないのか?
分からない。
麻原はさらに続けた。
「グルさえも幻影だぞ。」
グルさえも幻影、グルさえも幻影、グルさえも幻影。
オウムというのはグルが全てであるはずだった。
グルに帰依し、グルに意識を向けて、グルを観想し、グルからエネルギーをもらう。
それが幻影。
麻原本人が、真っ向からグルを否定してしまった。
まさに観念の崩壊と言うしかない。
黙ったままでいるしかない僕に対して、麻原は「分かるか?」と聞いてきた。
「よく分かりません。」と答えると、麻原は「実践しろ。実践すれば結果はついてくる。」
「頑張れよ。」そう言って電話は切れた。
僕は受話器を置いて、そのまましばらく考え込んでしまった。
これがどういうことなのかは、サマナそれぞれが自分のカルマに応じて答えを出すしかないのだろうと思う。