僕がワークを外された後は、生活班の災難、富士宮異臭事件へと続いていくのだが、直接タッチはしていない。
身に憶えのあるサマナもいれば、あのときのあれがそうかと思うサマナもいるだろう。
僕はといえばしばらく電話番をしていた。
上九の出入り口に近いところにコンテナを置き、そこへ電話線を引き込んでようやく電話が繋がるようになったのだった。
だからといってどこからも電話がかかってくるはずもなく、暇な時間が過ぎていった。
サマナ生活であれほどのんびりしたことはなかったのではないかと思う。
そうこうするうちにようやく電話がかかってきた。
出てみるとそれは麻原だった。
村井から報告が行ったのだろう。
「Rか?」と聞かれたので、「はい。」と答えると、麻原は「だめやないかあ。」と言って笑っていた。
こちらとしては仕方なく「はい。」と答えると、「じゃあ、頑張れよ。」と言って電話は切れた。
これが麻原の持つ魅力というか、魔力なのだと思う。
世間の人たちは何故オウムのサマナたちが麻原の言うことを聞いてしまったのか不思議に思うことだろう。
しかし、サマナにしてみれば、こんな対応をされたら頑張るしかなくなってしまうのだ。