上手くいったと思って喜んでいるところへ村井がやってきた。
時間は夜の12時ごろだったと思うので、村井は遅くまで感心やなみたいな感じで話しかけてきたが、ドラム缶の中にフィルターが入っているのを見て突然怒り出した。
「何を勝手なことをやってるんや。」と言うので、許可はもらいましたよと答えると、「誰が許可したんや。」と言い出す始末。
どうやら僕が会いに行ったことは憶えているのだが、水酸化ナトリウムを使うという話は覚えていないらしい。
まったく困ったものだ。
僕が村井と一緒にワークをしたのはこのときだけだったが、ずっと村井の下でワークをしていたCSIのサマナたちは苦労の連続であっただろうなと思う。
水酸化ナトリウムを使うのはダメだという村井に対して、じゃあどういう方法があるんですかと聞いても村井は答えられない。
そこで村井と言い合いになってしまって、これ以降は僕はボツリヌスのワークから外されてしまう。
実は僕は村井と言い合いになったことが何回かある。
目撃された方も結構いるのではないかと思う。
今から思えばよく無事でいられたものだという気がする。
あるときなど、「お前らが湯水の様に使っている金を、支部活動がどれだけ苦労して集めていると思っているんだ。」と言ってしまった。
これはさすがに言った後にまずかったかなと思った。
これがもし普通の企業であれば、係長が取締役に対してお前呼ばわりして批判していることになる。
ただで済むはずもない。
しかし、このときの村井の対応は驚愕に値するものだった。
彼は怒ることもなく静かにこう言っただけだったのだ。
「救済活動にはそれぞれに役割があります。」
「我々も頑張っているので、支部活動にも頑張っていただきたい。」
これを聞いたときには、さすがはマンジュシュリー正大師、やっぱり聖者だったんだと思ったものだ。