「さだめ川 」(ちあきなおみ/細川たかし)
作詞:石本美由起/作曲:船村徹
「さだめ川 」は1975年に発売されたちあきなおみさんの21枚目のシングル曲で、後の「酒場川」「矢切の渡し」「紅とんぼ」という船村演歌の傑作群へと続く、ちあきなおみさんの最初の演歌の曲です。
同年の『第26回NHK紅白歌合戦』のステージでは作曲者の船村さんがギター演奏で華を添えて、本楽曲を歌唱しました。
また、1986年には細川たかしさんの29枚目のシングルとして発売され、同年の『第37回NHK紅白歌合戦』でも歌唱されました。
当時、演歌をまだ歌っていないちあきなおみさんは、真偽のほどは定かではありませんが、船村演歌なら歌いたい、と言ったという話が、伝えられていますが、確かにこの曲を皮切りに、ちあきさんに提供した船村演歌は、船村先生の曲の中でも傑作揃いであり、日本の演歌の頂点を極めたような「矢切の渡し」さえをも生み出しました。
ちあきなおみという天才歌手が歌うことを想い描きながらの作曲は、船村先生のメロディメーカーとしての天才的才能を大いに刺激し、豊かなインスピレーションを生み出し、これらの傑作群に繋がったのでしょうか?
作曲家と歌手の関係は互いの才能を刺激し合って多くの名曲を生み出すものかも知れません。
そんな幸せな関係は、市川昭介先生と都はるみさん、或いはバート・バカラックとディオンヌ・ワーウィックなどもそんな奇跡的な関係だったのかも知れません。
船村演歌を歌った後、ちあきさんは一気に過去の演歌をカバーするようになり、そんな中からちあきなおみさんの歌唱によって名曲となった「涙の酒」や「帰れないんだよ」等の演歌の名曲が生まれました。
ポップスの歌手としてデビューし、「喝采」でレコード大賞まで獲得したちあきなおみさんに、演歌の世界を切り開いたこの「さだめ川 」は「矢切の渡し」の世界に似た許されない恋、禁断の恋を貫く想いを歌った曲です。
決して水に流すことの出来ない事実を一生抱えながら生きてゆかなければならない、そんな重い恋愛を貫こうとする二人の想いやその人生を、「さだめ川 」という「川」に譬えた曲です。
「さだめ」とは「掟(おきて)」や「決まり」のことを言うのですが、そこから運命、宿命という意味合いにも使われ、運命(さだめ)という当て字が用いられることもあるようです。
演歌に限らず、歌の世界では川の名前をタイトルにしたものが多く見受けられますが、それは一か所に留まることがなく、絶えず流れてゆく「川」を、人の人生のはかなさと重ね合わせて見るからなのでしょう。
言わば「RIVER SONG」とでも呼ぶべき曲の一つでもあります。
この「さだめ川」のオリジナルであるちあきなおみさんの歌唱は2種類あるようで、最初のシングルバージョンはかなり細やかに歌詞の言葉を表現しようとしていて、少し強めに歌詞の想いを表現しているのに対して、その後のたぶんアルバム収録のために再録音したものと思われますが、より音楽的に、音とメロディーの美しさに主眼を置いた歌唱となっています。
これは、前にも書きましたが、「酒場川」と「矢切の渡し」の録音と全く同じ経過を辿っているように思えます。
3曲とも初回の録音はかなり表現主義に傾いているのに対して、二度目の録音は音楽的な魅力を重視して、表現と音楽性とのバランスの取れた美しい歌唱になっております。
市川由紀乃さんのこの曲のカヴァーは「ベストセレクション 2008」に収録されているようで、由紀乃さん32・3才頃の歌唱だと思われますが、市川演歌の特徴である一字一音を緻密に表現する歌唱であり、「七色の声」と呼ばれる、持ち前の多彩な歌声から、その歌詞の持つイメージや情感を表すために、最も相応しい歌声を選んで歌っており、結果として豊かな色彩に彩られた、緻密で芳醇な歌唱となっています。
由紀乃さんは、歌詞の一字一音に秘められた情感やイメージを表現しているのですが、その多彩な歌声に共通しているのは、それぞれの音がそれぞれに異なる音としての美しさや魅力を失わないことです。
ちあきさんの二度目の歌唱も同じであり、全編に亘って、音としての魅力を追求しており、そのことにより、美しい上に、より歌詞の内容が聞き手に伝わります。
市川門下の末裔でもある市川由紀乃さんは、歌詞を歌うこと、歌詞の一字一音まで緻密に表現しようとする歌唱ではありますが、その「表現」は飽くまでも音楽的語法としての表現であり、音楽であることから決して踏み外すことはありません。
歌詞を表現することによって、歌詞の心とその世界をより豊かに聞き手に届けることが出来、なおかつ、歌い手としての歌唱することへのモチベーションを格段に高めることに繋がるのですが、その歌詞の「表現」が純粋な音楽的語法によって表現されることにより、結果として、その歌唱の濃密で多彩で美しいという音楽的魅力として表れてくるのだと思われます。
人の心を音符に託した「心で歌う」という、インスピレーションに溢れた船村演歌の天才的旋律を、歌詞の一字一音に宿された繊細かつ多彩な情感やイメージをも掬い取って表現しようとする市川演歌の手法で再現することにより、芳醇で味わい深い、まるで美術品を観るような市川由紀乃さんの「プレミアム美演歌」が立ち現れて来るのです。
それは、言わば演歌界の二大潮流とも言うべき、市川演歌と船村演歌の統合であり、市川由紀乃さんの歌唱は、都はるみさん、ちあきなおみさんというお二人の天才歌手を正統に継承し、統合した、言わば日本の音楽ジャンルである「演歌」における歌唱の「完成形」である、と言って差し支えないのではないのかと考えております。
<「さだめ川 」(ちあきなおみ/細川たかし)>
作詞:石本美由起/作曲:船村徹
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<「さだめ川 」 市川由紀乃(カバー)>
<「さだめ川 」 市川由紀乃(カバー)>
<「さだめ川 」 市川由紀乃(カバー)>
<「さだめ川 」 細川たかし+市川由紀乃+香西かおり(カバー)>
<「さだめ川 」 ちあきなおみ(オリジナル)>
<「さだめ川 」 ちあきなおみ(オリジナル)>
<「さだめ川 」 細川たかし(オリジナル)>
<「さだめ川 」 五木ひろし(カバー)>
<「さだめ川 」 大川栄策(カバー)>
<「さだめ川 」 テレサ・テン(カバー)>
<「さだめ川 」 石川さゆり(カバー)>
<「さだめ川 」 天童よしみ(カバー)>
<「さだめ川 」 神野美伽(カバー)>
<「さだめ川 」 島津亜矢(カバー)>
<「さだめ川 」 大石まどか(カバー)>
<「さだめ川 」 天野涼(カバー)>