「柿の木坂の家」作詞:石本美由紀、作曲:船村徹(1957年)
日本歌手協会名誉会長を務められた青木光一さんの曲でちあきなおみさんのカバーでも知られている曲です。
この曲の由紀乃さんのカバーは名誉会長のご本人とデュエットするくらいですから、以前から高く評価されていた歌唱なんだと思います。
歌い出しの柔らかさや随所に由紀乃さんのうっとりするような優しい歌声が散りばめられていて、不思議な魅力に満ちています。
何でこんなに優しく柔らかに歌えるのでしょうか?
その人柄から来るものもあるのでしょうが、やはり声の持つ魅力というものを良く知っていて、歌唱にはそのことが大切であると考えているのでしょう。
一字一句を大事に心を込めて歌うことにより、歌詞がよく伝わり、由紀乃さんが思い描いているイメージが見えてきます。
この曲はやっぱり、ちあきなおみさんのカバーを忘れるわけにはいきません。
やはり、歌い出しの柔らかく、そして深い歌声から魅了されてしまいます。
ちあきさんは、由紀乃さんのように一字一句の細やかさというよりも、一文節ごとにその感情をより深く歌い込むような歌唱で、歌というよりも、まるで役者が演技するときの台詞のようです。
この感情移入は誰にも出来ません。
一曲を通して、柔らかく深みのある低音や澄んだ高音、ビロードのように滑らかな歌いまわしなど、心地よい音の魅力に溢れた歌唱です。
音楽とは文字どおり、音を楽しむと書きますが、歌唱でもそのことが最も重要で、ちあきなおみさんも市川由紀乃さんもそれを深く認識していて、一曲の歌唱のなかでそれを追い求める姿勢は変わらないような気がします。
また、歌詞を歌うことの大切さはお二人の歌唱を聴くと、よく分かります。
歌詞を深く、或いは細やかに歌うことによって、多彩な表現が生まれ、それはそのまま歌唱の魅力に繋がります。
歌詞を深く、細やかに歌うことによって、歌詞の主人公の心や気持ちが、歌詞の描いている情景或いは光景が、よく伝わりますし、さらには、その歌詞に入り込んでいる歌手の熱量までも伝わり、聴き手の心に響いてきます。
歌う本人が感じていることやイメージしか伝わらないのであって、その部分が欠落或いは表面的だといくら美しい声や大声量で、或いは高度な演歌的歌唱技法を駆使しても、魅力の乏しい、いわゆる、歌い流した歌になってしまいます。
ちあきなおみさんが重厚なビロードの肌触りであれば、市川由紀乃さんは高級な絹の肌触りとでも言えるのではないでしょうか?
<柿の木坂の家 市川由紀乃>
<柿の木坂の家 市川由紀乃>
<柿の木坂の家 市川由紀乃>
<柿の木坂の家 青木光一+市川由紀乃>
<柿の木坂の家 ちあきなおみ>
<柿の木坂の家 ちあきなおみ>
<柿の木坂の家 青木光一(本人歌唱)>
・他カバー歌唱
(参考までに歌い流した歌唱も一部入っています)
<柿の木坂の家 天童よしみ>
<柿の木坂の家 船村徹>
<柿の木坂の家 三山ひろし>
<柿の木坂の家 氷川きよし>