今月の症例 | In my life ~研究・育児日記~

In my life ~研究・育児日記~

2011年5月ー2014年2月までBostonに留学していました。
現在は帰国して臨床、教育に追われる日々です。

今日は朝から臨床のカンファレンスに参加しました。
前回までは講演、レクチャーが主だったのですが、今日は久しぶりに興味深い症例を提示し、みんなでディスカッションをするという形式でした。

症例は中年の中国人女性。
10年前より在住しているが、英語でのコミュニケーションにやや難あり。
以前に多発性筋炎と診断されたが、治療を拒否している。
中国の漢方薬は毎日内服しているが成分は不明。

突然のめまい、立ちくらみを主訴にPCPを受診。
ECGでRBBBとpauseを指摘され循環器内科にreferとなり、エコーにてsevere TRとRVHを指摘。
基礎疾患にリウマチ疾患があるためconsultとなった方でした。

血液検査でCKは軽度上昇していますが、CK-MBは正常。
心臓MRIで右室のscar、degenerationなし。
多発性筋炎の経過は無治療にもかかわらず筋所見は自然軽快傾向。

以上より、βブロッカーにて経過を見ていましたが立ちくらみの症状は改善なし。
ECG所見も増悪しており最終的にペースメーカーの適応となり、その際の心筋生検にてCD8陽性細胞の浸潤、心筋の線維化、瘢痕化があり多発性筋炎に伴う炎症で矛盾がない所見が得られ、ステロイド開始し症状は劇的に改善した。

という症例です。


ポイントは

1.実は潜在性の心筋炎を伴っている多発性筋炎患者が多い(皮膚筋炎よりも多い)。
2.心筋炎を予測するマーカーとしてCK-MBは有用でない。
3.抗SS-B抗体、抗ARS抗体が心筋炎の有用なマーカーとなりうる。
4.心筋炎合併患者の予後は有意に低い。
5.治療はステロイド+免疫抑制剤(+IVIG)

今日の内容は比較的わかりやすく、臨床から離れて1年と少しですが、まだ何とか話についていけました。