抗核抗体について | In my life ~研究・育児日記~

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2011年5月ー2014年2月までBostonに留学していました。
現在は帰国して臨床、教育に追われる日々です。

今日は朝からGrandroundがありました。
遅刻なしに朝8時に到着。

今日のレクチャーはMGHのリウマチ科のAssociate PであるDonald先生の講義でした。

「Serological Surprises」

というタイトル。

主に抗核抗体(ANA)についてのお話でしたが、以下興味深かった点を示します。

1. ANAをどのタイミングで測定するか?
症例)
50歳女性。数ヶ月持続する筋骨格系の症状のみを主訴に来院。既往歴なし、薬剤歴なし。
血算、尿検査異常なし。
膠原病が否定出来ないのでとりあえずANA測定??

答えはNo.

ANAの測定はSLE様の所見がある場合と手指の硬化がある場合が積極的な適応。
その他の膠原病や橋本病等でも陽性となりうるが診断的意義は乏しい。ウイルス感染症や熱傷患者等の広汎なtissue injuryでも一時的に上昇しうる。

また、臨床的には大きく分けて160倍、640倍、2560倍が重要。
160倍以上で陽性、640倍以上だと中等度陽性、2560倍で高度陽性と分類します。
(ですがANAは定量性に乏しくHEp2細胞の感度や抗体の濃度により各施設間での誤差が多いのが問題です。)

2. 症状がなくてANAのみ陽性の患者の予後は?
これは以前の研究を引用していました。
276人の無症候性ANA患者を5年間フォローして、膠原病関連疾患(薬剤性ループス含む)と診断されたのが112人、そのうち52人がSLEと診断されました。
後に病気を発症した人は家族歴が濃厚であった。

3. ANAの弱点
患者血清とHEp2細胞を用いた間接免疫蛍光染色(IIF)ですが定量性がない。従来の方法では蛍光強度が弱いRo60/52(SS-A)を見落とす。
といった点で、確かにスクリーニングでは私も抗核抗体とSS-Aを同時に測定していました。
最近、modified HEp2 cell substrateが利用可能であり、この細胞を用いればSS-Aも拾い上げることができるのでスクリーニングに有用。

らしいです。

4. 細胞そのものを見ることでわかる特殊な染色パターンの解説。
通常、検査に出すとHomogenous、Peripheral、Speckled、Centromere、Nucleolar型といった分類で帰ってきますがそれ以外の特殊な型が存在する。

例)
Oligodot staining型
セントロメア型のdot patternに似ていますが、dotの数が少ない場合。
通常20個以上のdotが核内にあるのですが5-7個程度であり、PBCの約20%にみられるそうです。
(通常陰性、もしくはCentromere型と診断)

Golgi body型
ゴルジ体に対する自己抗体で、自己免疫性肝炎に特徴的。症例報告が散見されます。
抗平滑筋抗体とは別の自己抗体。
これも通常の検査では検出されにくい。

Rings and rods型
この染色パターンはHCV感染に特徴的。
対応抗原はIMPDH2であり、リバビリン治療と関連がある。


以上です。

今回も勉強になりました。