転生したのでしょうがなく 03賭け | aitocolab ブログ 
「それでは、
転生ポイントを
確認しましょう」

おじさんは、
机の上に
二枚の書類を置いた。

一枚目には、
俺の名前と、
数字が書かれている。

「こちらが、
あなたの獲得ポイントです」

「……これが?」
俺は、
書類を覗き込んだ。

数字を見て、
少しだけ安心する。
思っていたよりは、
多いような気がした。
……いや、
実際のところ、
多いのか少ないのか
よく分からない。

「一般的な転生者と比べますと、
平均より少し下になります」

「少し下……」

予想していたとはいえ、
やはり少し残念だった。

生前の自分を振り返れば、
特別なことをした覚えはない。

誰かを救ったわけでも、
大きな功績を残したわけでもない。
それでも、
もう少しだけ期待していた。

「ちなみに、
このポイントで何ができます?」

「そちらの二枚目をご覧ください」

おじさんが、
もう一枚の書類を
こちらへ向ける。

そこには、
能力の一覧が並んでいた。
身体能力の強化。
魔法の適性。
病気への耐性。
その他、
いくつかの便利な能力。

ただし、
必要ポイントを見ると、
どれも簡単には手が届かない。
「……高くないですか?」

「能力によっては、
相応のポイントが必要になります」

「このポイントだと?」

「大きな強化は難しいですね。
身体を少し丈夫にする、
その程度でしょうか」

俺は、
もう一度書類を見た。
異世界。
剣と魔法。
魔物もいるらしい。
そんな世界に、
大した能力もなく行く。

「……ちょっと、
厳しくないですか」

「お気持ちは分かります」

「せめて、
自分の身くらい守れる力が
欲しいんですけど」

「それには、
もう少しポイントが必要ですね」

おじさんは、
淡々と答えた。

俺は、
書類を机に置く。

正直なところ、
がっかりしていた。

異世界に行けること自体は、
少し楽しみでもある。
けれど、
憧れていたのは、
物語のような冒険だ。
何もできないまま、
魔物に襲われて終わるのは
さすがに勘弁してほしい。

「……このポイント、
増やす方法はないんですか?」

「基本的には、
ございません」

「基本的には?」
おじさんは、
一瞬だけ言葉を止めた。

「例外的な方法なら、
なくはありませんが……」

「それは?」

「おすすめはできません」

その言い方が、
少し気になった。

「構いませんが、
危険を伴います」

「分かりました。
それでも教えてください」

おじさんは、
小さく息を吐いた。

そして、
俺の書類を指差した。

「そのポイントを使って、
ある賭けに参加する方法です」

「賭け?」

「成功すれば、
大きなポイントを得られる可能性があります。
ただし、失敗すれば……」

「今のポイントを失う?」

「はい。
全額です」

書類に目を落とした。
今のままでは、
できることが限られている。
失うものは、
確かにある。
けれど、
このまま異世界へ行くことにも
不安があった。

「……分かりました」

「え?」

「その賭け、
やらせてください」

おじさんは、
少し驚いた顔をした。

「本当によろしいのですか?」

「はい。
どうせなら、
可能性に賭けてみたいです」

俺は、
書類を指で押さえた。

「持っているポイント、
全部でお願いします」

「全額ですか?」

「はい。
オールインで」

おじさんは、
しばらく俺を見つめていた。
それから、
確認の手続きを始めた。

つづく