僕のせいで、山羊のメーさんが売られて行ってしまい、それから暫くは大切な家族を失なった虚脱感から、学校の勉強も手につかず、ボーツとした毎日を過ごす事が多くなりました。
気が付けば先生から注意を受ける事が度重なり、恐い先生の筈が《 どこか具合でも悪いんじゃないのか 》と心配される程になっていました。
そんな日々が続いていたある日の夜の事です。
みんなが寝静まった深夜になつて、 又いつもの嫌な雨が天井からポタリポタリと、降ってきました。
雨が降ってくる時は、前もって至る所にバケツや空缶を並べて雨受けをするのが我が家の慣わしになっていました。
ラジオの天気予報では、今日は晴れの筈なので何も用意していません。 僕たちがこの家に引っ越ししてきて、父が屋根瓦の修理をしたのですが、
セメント瓦に足を乗せると、その傍からボロボロと割れていく始末でした。
それ迄、屋根瓦さんは、六畳一間で安普請の古い平屋であっても雨、風に耐え文句も言わず、長年、雨さんから守ってくれていたのです。
屋根瓦さんはずっと皆を守ってくれて、とうとう疲れてしまってお年寄りになったのです。
《 後少し我慢して待っててくださいね、長年本当にありがとうございました。》僕は感謝の気持ちを心の中で呟きました。
全体を修理しないとダメだと解り、修理を諦めました。 お金のない我が家では修理代が貯まる迄、我慢するしかないとの結論に達したのです。
その為、天井からの雨漏りは至る所にあり、寝る場所にも事欠く程でした。 当然のように雨が降ってくると、そこら中に配置したバケツや空缶から響いてくる雨音で一晩中眠れません。
そんな時、僕は天井板の滲みを眺めながら、色んな模様に見えてきて楽しい事を考えて、目が冴えて来るのでした。
雨が続く様だといつもの雨受けをしないとならないのです、 然し今回はいつもと様子が違っていました。
雨が温かいのです、雨音もあまりしてきません、その上、僕の顔の近くから何やらブッブッと人の様な小さな声が聞こえて来るのです。眠りが浅かった僕は耳を澄ませて聞きました。
すると、眠った筈の僕に母が小さな声で語りかけていたのです。
《 えいちゃん、ごめんね、…お母さん酷い事してしまったね、許してね… 》
《 体が小さいのはみんなお母さんのせいだよ、栄養のある物も食べさせられなくて、お母さんのせいで苦労かけてしまったね、…》
《 皆の事を考えると、想いあまってあんな事をしてしまって …》
《 もう絶体にこんな事はしないから、勘弁してね、本当にごめんね。約束するよ。…》
僕は、雨の正体が母の涙と解った時、完全に意識がハッキリとしていたにも関わらず、目を開ける事が出来ませんでした。
僕も自然と涙が出てくるのが止められませんでした。 母は僕と山羊さんの事をずっと気にしていたのです。
目を閉じて眠ったふりをしながら、涙を気付かれない様に徐々に体を横に傾けました。
本当は起き上がって母を労りたかったのですが代えって母の涙を誘う事になると、普段の母の威厳が保てなくなる、皆が尊敬出来る母でいてほしかったのです。
僕達の為に体のあちこちに痛みを抱えながら働いてくれている、母の事を思うと、心の中で言いました。
《 お母さん、良く解っているよ、そんな我が儘言える家で無いことは、僕が一番わかっているからね。心配しないでいいよ、》
《 僕は小さい時から体が弱かったけど、全然平気だったよ、》
《 神様が僕に、良い大人になる為に修行させてくれているんだからね、》
《 体が小さいのもお母さんのせいではないよ、》
《 お母さんは僕達の為に、一生懸命働いてくれている事を、誰よりも一番僕が知っているからね。》
《 山羊さんも皆の役に立てて、天国に行って喜こんでいるよ、だから心配しないでいいよ、》
《 もし僕が天国に行けたら、山羊さんに会いに行って許してくれるか解らないけど、心から謝ってくるからね。》
《 そして今度は僕が山羊さんを背中にオンブして気の済む迄、遊んであげたいよ。》
《 以前お母さんが教えてくれた事を忘れてないよ、だから逆に僕は嬉しいよ、》
《 でもちょっぴり哀しい時もあったけど、もうすぐ僕も大人の仲間入りするんだから、ちゃんと解っているからね。》
《 そして早くお母さんを楽にしてあげるからね。》
そう想いながら、明日の朝からは元気な姿をお母さんに見せたいと無理に眠りました。
続く…_…
気が付けば先生から注意を受ける事が度重なり、恐い先生の筈が《 どこか具合でも悪いんじゃないのか 》と心配される程になっていました。
そんな日々が続いていたある日の夜の事です。
みんなが寝静まった深夜になつて、 又いつもの嫌な雨が天井からポタリポタリと、降ってきました。
雨が降ってくる時は、前もって至る所にバケツや空缶を並べて雨受けをするのが我が家の慣わしになっていました。
ラジオの天気予報では、今日は晴れの筈なので何も用意していません。 僕たちがこの家に引っ越ししてきて、父が屋根瓦の修理をしたのですが、
セメント瓦に足を乗せると、その傍からボロボロと割れていく始末でした。
それ迄、屋根瓦さんは、六畳一間で安普請の古い平屋であっても雨、風に耐え文句も言わず、長年、雨さんから守ってくれていたのです。
屋根瓦さんはずっと皆を守ってくれて、とうとう疲れてしまってお年寄りになったのです。
《 後少し我慢して待っててくださいね、長年本当にありがとうございました。》僕は感謝の気持ちを心の中で呟きました。
全体を修理しないとダメだと解り、修理を諦めました。 お金のない我が家では修理代が貯まる迄、我慢するしかないとの結論に達したのです。
その為、天井からの雨漏りは至る所にあり、寝る場所にも事欠く程でした。 当然のように雨が降ってくると、そこら中に配置したバケツや空缶から響いてくる雨音で一晩中眠れません。
そんな時、僕は天井板の滲みを眺めながら、色んな模様に見えてきて楽しい事を考えて、目が冴えて来るのでした。
雨が続く様だといつもの雨受けをしないとならないのです、 然し今回はいつもと様子が違っていました。
雨が温かいのです、雨音もあまりしてきません、その上、僕の顔の近くから何やらブッブッと人の様な小さな声が聞こえて来るのです。眠りが浅かった僕は耳を澄ませて聞きました。
すると、眠った筈の僕に母が小さな声で語りかけていたのです。
《 えいちゃん、ごめんね、…お母さん酷い事してしまったね、許してね… 》
《 体が小さいのはみんなお母さんのせいだよ、栄養のある物も食べさせられなくて、お母さんのせいで苦労かけてしまったね、…》
《 皆の事を考えると、想いあまってあんな事をしてしまって …》
《 もう絶体にこんな事はしないから、勘弁してね、本当にごめんね。約束するよ。…》
僕は、雨の正体が母の涙と解った時、完全に意識がハッキリとしていたにも関わらず、目を開ける事が出来ませんでした。
僕も自然と涙が出てくるのが止められませんでした。 母は僕と山羊さんの事をずっと気にしていたのです。
目を閉じて眠ったふりをしながら、涙を気付かれない様に徐々に体を横に傾けました。
本当は起き上がって母を労りたかったのですが代えって母の涙を誘う事になると、普段の母の威厳が保てなくなる、皆が尊敬出来る母でいてほしかったのです。
僕達の為に体のあちこちに痛みを抱えながら働いてくれている、母の事を思うと、心の中で言いました。
《 お母さん、良く解っているよ、そんな我が儘言える家で無いことは、僕が一番わかっているからね。心配しないでいいよ、》
《 僕は小さい時から体が弱かったけど、全然平気だったよ、》
《 神様が僕に、良い大人になる為に修行させてくれているんだからね、》
《 体が小さいのもお母さんのせいではないよ、》
《 お母さんは僕達の為に、一生懸命働いてくれている事を、誰よりも一番僕が知っているからね。》
《 山羊さんも皆の役に立てて、天国に行って喜こんでいるよ、だから心配しないでいいよ、》
《 もし僕が天国に行けたら、山羊さんに会いに行って許してくれるか解らないけど、心から謝ってくるからね。》
《 そして今度は僕が山羊さんを背中にオンブして気の済む迄、遊んであげたいよ。》
《 以前お母さんが教えてくれた事を忘れてないよ、だから逆に僕は嬉しいよ、》
《 でもちょっぴり哀しい時もあったけど、もうすぐ僕も大人の仲間入りするんだから、ちゃんと解っているからね。》
《 そして早くお母さんを楽にしてあげるからね。》
そう想いながら、明日の朝からは元気な姿をお母さんに見せたいと無理に眠りました。
続く…_…