父が再び酒に溺れて、外泊を繰返し、家に帰ってくる事が少なくなりました。

たまに帰ってくる時は、酔っ払つて知らない人や、借金とりを連れてきて、

友達になつた、食事をだせ、と言って母をこまらせていました。

酒が無いと、卓袱台をひっくり返して大暴れ、そんな事を、何度も繰り返す父、

それ以来、わが家では酔っ払つた父の声が聞こえて来ると、直ぐさま卓袱台や大事な物を片付けるのが、恒例の事となりました。

ある時等は、いつもの如く酔っ払いの父の声が遠くから聞こえてきたので、  母は暫く戸を開けないでいると、

鍵のかかった玄関引き戸のガラスを拳で割り 足で戸を蹴り倒して入って来ました。

又、ある時は、何人か知らない人を連れて来て酒盛りが始まり、 その内喧嘩が始まって、大騒ぎです、庖丁を持ちだし、おおたちまわり、警察を呼んでも中々収まらなかつた事も有りました。

兄はとても優秀で学校でもトップの成績でしたが、そんな生活状態に少し嫌気がさしてきているのが解りました。

落ち着いて、静かに勉強をしたいのに、とても程遠い環境でした。 又今日も酔っ払いの父が帰ってきて暴れるのではないか、 いつもびくびくしていました。

そんな時学校の友達以外に、少し雰囲気の悪い人が兄の友達として混ざつてくるのが解りました。

私はその時の兄の微妙な表情から、何かしら普段と違う責任感のような物から逃避できる嬉しさが読みとれた気がしました。 

母は何度も父に頼んでいました。
好きな酒は辞めなくても、飲み方を考えて下さい。

この儘だと子供たちがお父ちゃんを見習って同じような事をする人になったら、どうするんですか、

子供が可愛いくないのですか?
りつぱになれとは言いません、少なくとも人様に迷惑をかける様な人にだけはなってほしくないからです。

親は子供の手本で教師なんですよ。

世の中には二親がいない、可哀想な子供たちも、いるのに私達は幸せです。可愛い子供たちを育てられるんですから、

その為には貧乏でも良い、二人が普通に幸せに暮らしてる姿を見せる事が、 子供たちにとつて一番大事な事だと思つています。

何せ、六畳一間の小さな我が家でしたので逃げ隠れも出来なく、話しが筒抜けになるのです。

流石の母も、本当は子供に聞かせたくない話しも、しなければならない、と感じたのでしよう。

母にとつては子供に心の中を見せるようなものでした。辛かつたと思います。

人様に平気で迷惑かけたり、犯罪をおこしたり、 恥を知らない子供に育つたら、どうするんですか。

結局は子供の育てかたを問われて、 この親にしてこの子あり、 と言われる事になり、取り返しがつかなくなりますよ。

ここには住めなくなるだけでなく、子供たちの将来の事も考えて下さい。

父が出ていつた後で私達は、母と相談しました。

お酒の入った一升瓶の中に水を混ぜて飲ませてみよう。
どうせ帰って来るときは酔っ払つてるよ。

普段から一気飲みするような人だから。……