暫くぶりに父がわが家に帰って来ました。
珍しく一人です、 当然の如く酔っ払つていました。
早速、家族で卓袱台や大事な物は片付けて、皆で相談していた通りの一升瓶を、押し入れから出して来ました。
家族で決めた事は、押し入れの酒瓶は縦に二本並べて、手前の一升瓶は、 父が酔っ払つて帰って来た時に出す物で、 奥は薄めない酒です。
素面で飲み始めても、時間が立つと途中で薄めた酒に、気が付かなくなるのです。
時々しか帰って来ない父の酒、薄めた酒を危険を承知で出しました。
然し、ここに至るまでには、在る事が有りました、 ある時、台所で母が奇妙な動きをしていたのを、私は見逃しませんでした。
最初は何をしていたのか解りませんでしたが、一升瓶を抱えた母が、やかんから、その口に水を注いでいる所を見てしまったのです。
まさか、母が日頃の辛さを忘れる為に隠れて飲み始めたのか、あれほど嫌つていて、私達にもお父ちゃん見たいな酒飲みにはならないでと、言いつづけていた母が、
でも、どうも様子が違っていました。私はそっとその場を離れました。
そのあと、入れ替えたお茶を持って、小さな仏壇の前に行き、何やらぶっぶっ言う母の声が聞こえて来ました。
聞き耳をたてました、聞こえずらい所が何か所もありましたが、母が御先祖様に言っていました。
お許しください、お酒に水を混ぜました。お父ちゃんは、お酒を飲んで無い時は、良い人なのですが、
今は、自分好みの仕事が出来無く、酒に逃げているだけなのです。
私は、どんな辛い事でも、耐えて行けますが、子供達には何の責任もありません。
せめて、子供たちの前だけでも、私のしたことを許して下さい。 これからお父ちゃんが立ち直る間でいいです、
私がする事を、その間、お昼寝していてくれませんか。 涙を浮かべた母の姿が痛た痛たしく感じられました。
子供ながらひ弱な自分の力を感じ、母の心を知った私は、自分自身が恥ずかしくなつて、心の中で涙を拭いました。
父に薄めた酒を出した時、 心なしか、母の指先が震えている様に見えました。
兄は小学三年生でしたが、学校で買う物や教科書代も、払えなくて学校でも、辛い想いをしたのではないでしょうか。
酒が入ると乱暴で人が変わる典型的な父でした。
5才の私と、8才の兄の二人で、万一父が気がついて暴れ、母に乱暴でもしたら、私達が用意した縄で後ろからしばり、動きを封じ込める、作戦です。
でも所詮子供の力です。大人に敵う筈がありません。 母に取っては気休めにしかなりません。
母は、そんな事はしないでいい、万一将来あるあなた達に怪我でもさせたら、私が御先祖様に会わす顔がない、
あなた達の気持ちは凄く嬉しいよ、有難う。おかあさん大丈夫だから心配しないでね。
それでも私達は父の後ろに陣取って万一の為にいつでも行動を起こせるよう、身構えていました。
然し、何もおこりません。すんなり一升瓶を口飲みして寝てしまつたのです。私達は拍子抜けしてしまいました。
色々な事がどんどん押し寄せて来るのでした………。
珍しく一人です、 当然の如く酔っ払つていました。
早速、家族で卓袱台や大事な物は片付けて、皆で相談していた通りの一升瓶を、押し入れから出して来ました。
家族で決めた事は、押し入れの酒瓶は縦に二本並べて、手前の一升瓶は、 父が酔っ払つて帰って来た時に出す物で、 奥は薄めない酒です。
素面で飲み始めても、時間が立つと途中で薄めた酒に、気が付かなくなるのです。
時々しか帰って来ない父の酒、薄めた酒を危険を承知で出しました。
然し、ここに至るまでには、在る事が有りました、 ある時、台所で母が奇妙な動きをしていたのを、私は見逃しませんでした。
最初は何をしていたのか解りませんでしたが、一升瓶を抱えた母が、やかんから、その口に水を注いでいる所を見てしまったのです。
まさか、母が日頃の辛さを忘れる為に隠れて飲み始めたのか、あれほど嫌つていて、私達にもお父ちゃん見たいな酒飲みにはならないでと、言いつづけていた母が、
でも、どうも様子が違っていました。私はそっとその場を離れました。
そのあと、入れ替えたお茶を持って、小さな仏壇の前に行き、何やらぶっぶっ言う母の声が聞こえて来ました。
聞き耳をたてました、聞こえずらい所が何か所もありましたが、母が御先祖様に言っていました。
お許しください、お酒に水を混ぜました。お父ちゃんは、お酒を飲んで無い時は、良い人なのですが、
今は、自分好みの仕事が出来無く、酒に逃げているだけなのです。
私は、どんな辛い事でも、耐えて行けますが、子供達には何の責任もありません。
せめて、子供たちの前だけでも、私のしたことを許して下さい。 これからお父ちゃんが立ち直る間でいいです、
私がする事を、その間、お昼寝していてくれませんか。 涙を浮かべた母の姿が痛た痛たしく感じられました。
子供ながらひ弱な自分の力を感じ、母の心を知った私は、自分自身が恥ずかしくなつて、心の中で涙を拭いました。
父に薄めた酒を出した時、 心なしか、母の指先が震えている様に見えました。
兄は小学三年生でしたが、学校で買う物や教科書代も、払えなくて学校でも、辛い想いをしたのではないでしょうか。
酒が入ると乱暴で人が変わる典型的な父でした。
5才の私と、8才の兄の二人で、万一父が気がついて暴れ、母に乱暴でもしたら、私達が用意した縄で後ろからしばり、動きを封じ込める、作戦です。
でも所詮子供の力です。大人に敵う筈がありません。 母に取っては気休めにしかなりません。
母は、そんな事はしないでいい、万一将来あるあなた達に怪我でもさせたら、私が御先祖様に会わす顔がない、
あなた達の気持ちは凄く嬉しいよ、有難う。おかあさん大丈夫だから心配しないでね。
それでも私達は父の後ろに陣取って万一の為にいつでも行動を起こせるよう、身構えていました。
然し、何もおこりません。すんなり一升瓶を口飲みして寝てしまつたのです。私達は拍子抜けしてしまいました。
色々な事がどんどん押し寄せて来るのでした………。