今日はインクルーシブな社会を実現するために「児童発達支援センター」を増やすこと、スペシャルニーズ(障がい)児の親の就労継続支援についてを報告いたします。
令和4年10月19日に、各会計決算特別委員会で東京都福祉保健局に対してい質疑をさせていただいた内容です!
動画アーカイブはこちら。00:37:10から。
インクルーシブな社会を目指してます
私は誰もが自分らしく輝きながらも、仲間の一員として参加していると実感することができるインクルーシブな社会の実現を目指して質疑を続けております。
私がそもそも都議会議員を目指したのは、アメリカ・カリフォルニア州でダウン症のある子の出産と育児を経験した後に、日本に帰国して、あまりにスペシャルニーズ(障がい)のある子への支援や教育とそれを取り巻く環境に大きなギャップがあったため、衝撃を受けたことが原体験としてあります。
(米国の自宅近くの海岸にて)
私が住んでいたのは、南カリフォルニアのオレンジカウンティで、米国でも治安が特に良く、経済的にも余裕がある地域でしたので、米国の中でも特に良い環境を経験させてもらったのだと思っています。そのため、私の経験だけを持って「アメリカは」と全米のこととして話すことはできないとは思っていますが、少なくともそれらがアメリカのIDEAという法律と、カリフォルニア州全体の政策として実施されていたものに基づいているもなので、参考にしています。
インクルーシブの考え方の日米の違い
アメリカ(私が住んでいた地域のアメリカはということですが)と、日本とで、もっとも違うと感じているのは、「インクルーシブ」という考え方が社会に根付いているか、根付いていないかという点がもっとも大きいと感じています。
「人はみんな違う」が前提のアメリカ
アメリカでは「人は一人一人違う」ということが根本的な前提になっていて、その違う一人一人を全て含むためにどうしたらいいのかと、福祉や教育の制度設計がされていると感じました。また、社会全体がその共通認識の元に回っていました。全員が違うということが前提になっていると、様々な制度が柔軟で許容が広く、そして「普通」という押し付けがありませんでした。
そのため日本人で、英語を母語としていなくて、事実婚で、スペシャルニーズのある子を育てているという「違い」をたくさん持っていた私が、不便に感じたことがありませんでした。アメリカで私が経験したインクルーシブは、人は一人一人違うことが前提になっていて、それらの違う人がみんな生きやすいよう工夫と配慮がある社会でした。
「人は基本的にみんな同じ」の日本
一方で、日本はというと「人は基本的にみな同じ」という考え方に基づいて社会が回っていると感じます。「普通」という巨大なカテゴリーがあって、そこからはみ出す人が「違う」とされている感じがします。したがって、違う人には、例外的に特別な対応をするという感覚がある社会だと感じています。
日本のインクルーシブは、大きな普通というカテゴリーに、「違う」人たちを「入れてあげる」というよな考え方がされていると思います。これだと「入れてもらった」人たちは、いつまでたっても本当の意味での仲間になれませんし、また「普通」にカテゴリーされている人たちの中にも、本当は無数に違いがあり、その違いを魅力として発揮していくのが簡単ではありません。
したがって、私としては東京都には、「人は皆同じ」から「人は皆違う」に前提を変えて、あらゆる違いに対応できる行政になっていただきたいという想いがあります。
インクルーシブにはセクターを超えた横連携の重要性
アメリカでは、スペシャルニーズ(障がい)のある子への施策ということでいうと、その子供のみならず、その子のいる家庭の環境やバックグラウンドや考えかたや価値観が違うことから、それに柔軟に対応するために、とても優れた体制が構築されていました。
IDEAという法律によって定めらているものですが、子ども、家族、行政サイドのケアマネージャー、教育、療育などの福祉、医療によるチームがそれぞれのお子さんに対して組まれていました。このチームがアセスメント、目標設定、それを実行するためのプランや支援体制を組んでいました。こういうチームですと、あらゆる違いに柔軟に対応できていました。
日本では「縦割り」と表現されることもありますが、なかなか、こういう横連携が簡単ではないという認識をしております。ただそういう中にあっても、縦割りの壁を乗り越えて、横連携による支援を広げようとしてくれているのが、福祉分野だと感じ期待しています。
「児童発達支援センター」を増やしたい
そういう意味で、スペシャルニーズのある子への支援として、私が期待をしているのが「児童発達支援センター」です。
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000791881.pdf
相談支援機能で子どもの成長に寄り添い、地域の学校や、他の療育や福祉、医療とも連携することが可能な機関です。
ただあまりセンターの数が多くなく、2017年11月の私の厚生委員会での質疑では、都内の設置状況は23区市34カ所にとどまっておりました。しかし、各区市町村に1カ所の設置を目標に取り組んでいくとの答弁をいただいておりました。
そこで東京都における「児童発達支援センター」の設置状況にお尋ねいたします。
Q.児童発達支援センターについて、都は「東京都障害者・障害児施策推進計画」において、令和5年度末までに各区市町村に1箇所ずつ設置を目標に掲げていますが、現在の設置区市町村数及び事業所数と、過去の計画の期末である平成29年度末、令和2年度末の設置数をそれぞれ伺います。
<福祉保健局答弁>
児童発達支援センターの設置区市町村数及び事業所数は、
第4期計画の平成29年度末では、23区市、34か所
第5期計画の令和2年度末では、34区市、47か所
令和4年4月では、36区市、52か所
2017年末は23自治体だったものが、今年4月には36に伸びており、事業所数は34カ所が52カ所まで増えたとのことでした。
以前の答弁では、整備費の事業者負担を軽減する特別助成や、定期借地権の一時金への補助や、借地料の補助を行うなどして、設置促進をするとのことでしたが、それらの取り組みもあって、徐々に増えてきていることが分かりました。
ただ令和5年度末までに各区市町村1カ所という目標には届かなさそうです
これまでお話ししましたように、児童発達支援センターは、個々の子どものニーズに柔軟に対応できるインクルーシブな社会を実現していく上で、将来的には重要な役割を担っていくことを期待しているため、まずはインフラとして広く整備されていくことがとても重要だと考えています。
児童発達支援センターの設置が、なかなか進まない背景には、どのようなことが課題だと考えているか伺います。
<福祉保健局答弁>
児童発達支援センターは医務室や調理室など施設に関する基準が規定されている、専門相談機能や人員体制などの検討が必要と区市町村からは聞いている。
調理室というのは、給食を提供できるような施設ということになると思いますが、家賃が高い東京都においてこの要件は非常にハードルをあげていると思います。もちろん国にも考えがあってのことだとは思いますが、私が期待している教育や医療などセクターを超えた横連携体制や、成長に寄り添う相談支援体制と、給食は特に関係がないので、そこが理由だというと歯がゆいです。今後もこの件について、どう進めていくべきなのか、質疑や議論を続けていきたいところではあります。
現状で、都は児童発達支援センター設置を促進する誘導策として、どのようなことに取り組んでいるのか伺います。
<福祉保健局>
未設置地域における整備費補助額の上乗せや、「障害児支援体制整備促進事業」を実施
都としては整備の促進に取り組んでいることが分かりました。ただなかなか進まない現状を受けて、次に何をしていくのかまた議論をしていければと考えております。
スペシャルニーズのある子親の就労継続が超困難!!
さて、私は2021年と2022年の一般質問で質問させていただいたことですが、スペシャルニーズのあるこの親にとって小学校への進学は「小一の壁」どころか「小一の断崖絶壁」のようであることについて、大きな課題意識を持っております。
未就学期の就労支援を担っている保育所では、スペシャルニーズのある子を受け入れる支援も充実し、待機児童も解消されつつあることから、親の就労継続はかなり可能となっています。
ただ小学校に上がると、急に安定的な就労の継続が困難になります。
スペシャルニーズのある子どもは療育や医療など、一般家庭よりも多くの支出があることや、子どもが成人した後も生活を支えていく可能性もあることから、両親ともに就労を継続できることは非常に重要です。
しかしながらそういう現実に反するように、スペシャルニーズのある子を育てている家庭の、特に母親は就労を継続できなかったり、パートタイム等に働き方を変えているケースが多い現状があります。
医療的ケア児と重症心身障害児の放課後支援
こういう状況を重く捉えて、東京都が昨年度から開始した「障害児の放課後等支援事業」は、大変重要だと認識しています。
ちなみに、「障害児の放課後等支援事業」は、医療的ケア児や重症心身障害児の放課後の居場所を確保する区市町村を、東京都が助成するという事業です。
2020年11月25日に、医療的ケア児の保護者の皆様と一緒に都知事に要望をしたことによって実現しました。
医療的ケア児や肢体不自由児の母親の就労継続についての要望書を、小池都知事にお渡ししました。
要望に訪れたママたちは、みんな働いていらっしゃいます。
保育園時代は就労できたものの、小学校に入学すると学校の付き添いや、放課後の居場所がないことなどから、就労を継続するのが難しくなってしまうことを大変心配されていました。
小池都知事は、一人一人のお話を真剣に聞いてくださいました。 そして、びっくりすることに、超特急で動いてくださったのです!
要望したのが2020年11月ですが、なんと2021年4月に「障害児の放課後等支援事業」と「学童クラブの医療的ケア児等受入支援事業」を立ち上げてくださったのです。
では、質問の内容に戻ります!
そこで、「障害児の放課後等支援事業」の令和3年度末の実施区市町村数を伺います。 |
7区ということで数は多くはありませんが、事業実施の初年度から活用されていることは評価いたします。この事業は、医療的ケア児や重症心身障害児が、学校後に安定的に過ごせる場所を確保する区市町村に対して支援を行うというものですが、「障害児の放課後等支援事業」が区市町村では実際にどのような事業内容に活用されているのか伺う。
放課後支援を行う事業所に専門人材を配置したり、そこの事業所への送迎などに介護タクシーを運行するために利用するなど、各区市町村の工夫やニーズにあった方法で活用が可能だというのは大変柔軟で良い取り組みだと思います。
今後、障害児の放課後等支援事業を進め、医療的ケア児の支援を充実させるために、都はどのような取り組みを行っていくのか伺う。
<福祉保健局>
昨年の第四回定例会補正予算において制度を拡充したのに加え、区市町村に対し取り組み事例を紹介。また、医療的ケア児等の支援に関わる職員に対して、医療的ケア児等の理解、支援の留意点等について、研修を実施。さらに、今年度から障害児通所支援事業所に対し、体制整備等に関する実践的な研修を実施。
「障害児の放課後等支援事業」は、区市町村への支援ではありますが、医療的ケア児や重症心身障害児を受け入れる放課後等デイサービスや日中一時支援事業所などがサービスの拡充や充実に利用できるものなので、制度の存在を知れば活用したい事業者があるはずです。ぜひより取り組み事例を周知するなどして、利用の拡大をはかっていただけますようお願いします。
学童クラブでのスペシャルニーズ児受け入れ
さて、「小一の断崖絶壁問題」は、医療的ケア児や重症心身障害児だけの問題ではありません。
放課後等デイサービスは都心部では特に数が足りていないことから、安定的に週5日利用できているご家庭は少ないです。仮に週5日利用できても、放課後等デイサービスが就労支援のための施設ではないことから終了時刻が早いことや夏休み期間中の対応が不十分などの課題もあります。
そんな中、都が、令和3年度から事業を開始した、「学童クラブにおける医療的ケア児等受入支援事業」は非常に重要だと考えています。
学童クラブにおいてもニーズが多いお子さんでも受け入れやすくなるだけではなく、都立特別支援学校など教育では地域から分離されてしまっているお子さんが、放課後は地域に戻って過ごせるというインクルーシブの環境を整備するためのも重要な事業です。この事業の意義と事業の内容について伺います。
学童クラブにおける東京都独自の支援は非常に画期的で、ありがたいことだと思っています。
これまでは学童クラブの利用を断られてしまっていたお子さん達も、放課後は地域の子達と混じり合って過ごせることには大きなことですし、保護者にとっても就労の継続ができることに大きな意義があります。
令和3年度において、障害児の受入れにかかる、国庫補助及び都の医療的ケア児等受入支援事業の活用状況について伺う。さらに、取組の推進にあたっては、区市町村への働き掛けが重要であると考えるが、都の見解を伺う。
国の補助でスペシャルニーズのある子を受け入れている自治体が多いものの、そこれでは対応しきれない場合は東京都の補助が活用されていることが分かりました。
ただこの事業が「医療的ケア時等受入支援事業」という名前がついていることから、医療的ケアがないお子さんも対象になっていることが、ぱっと見わからないのが少し課題だと感じています。
実際に車椅子を利用している医療的ケアのない特別支援学校の児童が、学童クラブを利用したい旨を伝えた時に、この事業を使えることが知られていなかったために断られてしまうケースがありました。
ぜひ区市町村への周知の際には、ニーズが高いお子さんが利用する時に活用できることも伝えてくださいますようお願いします。
また特別支援学校のお子さんの場合だと、通学バスの停留所から学童までの移動がネックになってきます。学童クラブの方でそこの移動支援を嫌煙してしまい、保護者がそこの移動のためだけに一時仕事を抜けたり、近所の人に手伝ってもらっているケースもあると伺っています。東京都の補助では移動支援も可能ですので、その周知もお願いいたします。
少1の断崖絶壁をなくすために、「障害児の放課後等支援事業」と「学童クラブでの障害児受け入れ」はとても重要です。
前者はこれまで放課後等デイサービスなども利用ができていなかった医療的ケア児や重症心身障害児が少しでも放課後に安定的な居場所を確保するものになりますし、後者は放課後等デイサービスが足りていない現状で、インクルーシブな形でのその解決策の一つになると思っています。
とはいえ、どちらもまだ十分ではない状況が続いています。ぜひ今年度から始まりました都型放課後等デイサービスなどをしっかりと運用することで、放課後の居場所作りと、親の就労支援に今後も尽力していただけますよう要望させていただきます。