国連・障害者権利委員会による日本の審査1日目については、こちらのブログに書かせていただいたところです。

 

2日目の委員会での話に触れる前に、そもそも障害者権利条約について少し今日は触れたいなと思います!

 

 

 

  障害者権利条約-第24条「教育」

 

障害者権利委員会では、「障害者権利条約」に批准した国に対して審査をしています。それぞれの取り組みをヒアリングや質疑(建設的対話)をし、さらにどのように取り組みを進めていくべきか提言や勧告をしています。

 

障害者権利条約は2006年に国連で採択され、日本が批准したの2014年で、今回が初めての審査となりました。

 

私が特に注目していたのは24条「教育」です。

 

 

 

中でも2番は、各国がしなければならないことが示されています。

堅苦しい英語訳だと意味がわかりにくいので、私なりに訳しました↓

 

(a)障がいがある人らは、障害を理由に普通の教育制度から排除されないこと。障害のある子どもらが、障害を理由に、無償かつ義務的な初等・中等教育から排除されないこと。

 

(b)障がいがある人らは、自身が生活する地域コミュニティーの他の人らと等しくインクルーシブで、質が高く、無償の初等・中等教育にアクセスできること。

 

(c)個々に必要とされる合理的配慮が、提供されること。 

 

(d)障がいのある人らは、普通の教育制度の中で効果的な学びを得られやすくなるよう必要としているサポートを得ること。

 

(e)効果的な個別のサポートが、学業と社会性の発達を最大限に伸ばす環境において、「フルインクルージョン」という最終的なゴールと矛盾することなく提供される

 

 

  条約が求めている「教育」のあり方

 

この条文から読み取れるのは、スペシャルニーズ(障がい)のある子たちが、地域の子どもたちと同じ学校・教室の中において(つまりインクルーシブな環境の中で)、個々に必要とされる合理的配慮やサポートが提供され、個々の学業と社会性が最大限に伸ばされるべきだということ。そしてゴールは「フルインクルージョン」だということです。

 

 

 

  障害者権利条約ハンドブック「インクルーシブ教育が最良の教育環境」

 

 

抜粋して訳しますと↓

 

重い障がいも含め障がいがある子どもらが、普通の教育にインクルードされることで、より学校を卒業し、高等教育やトレーニングを受け、良い収入を得るようになり、コミュニティーのアクティブなメンバーになることが、研究で分かっています。

条約でこの教育的アプローチをしているのは、インクルーシブ教育が、知的障害児も含めて「最良の教育環境」であるということに加えて、社会的なバリアを無くし、ステレオタイプを打ち砕いていくという、確実性なエビデンスに基づいています。

 

このアプローチは、障がいに対して「怖がる」のではなくて、逆に障がいを積極的に抱きとめるかのように社会を築く助けになります

 

障がいのある子とない子が、隣り合わせで並んで同じ学校で一緒に育ち学ぶと、より深い相互への理解とリスペクトが育つのです。

 

 

つまり、インクルーシブ教育が、スペシャルニーズのある本人や同級生にとって良いだけではなく、ひいては「インクルーシブな社会を築く助けになる」ということで、その社会全体にとって良いことのだと書かれています。つまり教育を通して、社会そのものをインクルーシブに変えていくためにも必要なのだということですね。

 

 

 

  日本は分離された特別支援教育

 

日本の現状はというと、こんなイメージです。

 

分離された場(特別支援学校や特別支援学級)を選べば、合理的配慮や個々に合った支援や教育を受けられます。そしてそれらはかなり充実をしてきています。しかし「インクルーシブな環境」は諦める必要があります。

 

インクルーシブな環境(通常の学級)を選ぶと、インクルーシブな環境は得られるけれども、合理的配慮や個々に合った支援や教育が提供されない・提供されにくい状況で、それらを諦める必要があります。

 

 

 

文部科学省では、学ぶ場を選ぶときに「本人と保護者の意向を最大限に尊重する」としていますが、合理的配慮や個々に合った教育や学びのサポートを得られないなら、インクルーシブな環境を選びたいと思っている人がいたとしても、選べない状況にあります。

 

また合理的配慮を提供したくても、通常の学級にはそれらを十分に提供できるような体制にはなっていないため、教育の現場からも「受け入れるのは難しい」という押し出す力が働いている状況にあります。

 

一方で、特別支援学校は潤沢な予算と人員配置で、安心して子どもを通わせることができる環境が整備されております。

 

現状の日本では親やスペシャルニーズのある子にとって、「インクルーシブは茨の道」であります。

 

 

  東京都の現状も「分離された特別支援教育」

東京都教育委員会は、インクルーシブな教育を進めるにあたり、まずは現状を把握するために行った調査と研究を行ってくれました。

 

その報告書(インクルーシブ教育調査・研究事業)を見ると、このような数値が出ています。

 

 

 

これは視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱の五つの障害区分にある都内の児童生徒が、どこで学んでいるかを調べたものです。

 

小学生の91%が、中学生の95.1%が

「分離した場所」で学んでいます。

 

この数字からも、東京においての特別支援教育は「分離した場所」で基本的には実施されていることが分かります

 

東京都の都立特別支援学校では、とても充実した良い教育が実施していますし、合理的配慮もとても丁寧に尽くされていると認識しています。

 

しかしながら障害者権利条約が求めている「インクルーシブな社会」には「つながっていかない」現状になるという課題意識を持ってこれまで質疑を続けてきました。

 

そんな現状を踏まえて、次に障害者権利委員会でどのようなやり取りがあったのか書きたいなと思います!