帰り道のニコは、行き道のニコと同じように愛おしかった
ダウン症があるという告知を受けた後、帰り道。
悲劇的な気持ちで車の中でカーシートを見るとそこには、ニコがさっきと変わらぬ様子ですやすやと眠っていました。
それだけなのですが、ハッとしました。
運命がすっかり変わってしまった 気がしていたのですが、 ニコは何も変わっていなくて、来た道と同じように愛しいままでした。
ダウン症があろうが、なかろうが、 私のニコへの愛情は何一つ変わりがないということに気がついて、 カチリと心のなかで何かが動きました。
母親の一言:「ニコちゃんは、ニコちゃん!Happyプロジェクト始動」
家について、 すぐに母親に国際電話をかけました。
そこに答えがありました。
ニコにダウン症があることを伝えると、 母は3秒くらい言葉を失っていましたが、意外な返事が戻ってきました。
だから、なに? 隣にニコちゃんいるんでしょ?みてごらんなさい。 昨日と同じように愛しいでしょ? 何も変わっていないのよ。 ニコちゃんはニコちゃんよ。 ニコちゃんがどんなことが好きなのか、 どんなことが得意なのか、可能性を探してあげないとね。 ニコちゃんがHAPPYに生きていくプロジェクト始動よ‼️
というようなことを言ってくれました。
そうか。何も失っていないのか。
母の「何も変わっていない」という言葉を聞いて、なるほど、そうだと思いました。
何かを失ったような気がしたのだけど、 なにも失ってなんかいなかったのです。
ニコはニコであり、 私が命にかえてでも守りたい愛しい存在であることに、なにひとつ変わりはない。 これから親として、ニコに愛情をたっぷりとかけて育てていくことにも、変わりがない。昨日まで続けてきたことを、今日も明日も続けていくだけなんですよね。
その日の私の日記には、 ダウン症については何も書いてないのですが(まだ書けなかったのだと思う)
「ニコにとって何がHAPPYなのか、それを考えていこうと思う。 HAPPYですごせるんだったら それでいいと思う。それだけが重要」と書き留めてあります。
あれから10カ月近くがたちましたが、 この気持ちはまったく変わりがありません。
ニコの幸せを感じる心を育てよう!
人に生きる意味や目的を問うと、いろいろな答えが返ってくるはずですが、つまるところはみんな幸せ(HAPPY)になりたいのだと思います。
幸せに生きることだったら、ぜったいにニコにだって出来ます。
幸せは心が決めることだからです。
ニコが幸せを感じる心を、豊かに育ててあげたいと思いました。
「幸せに生きる」が人生の目的だとしたら、なーんだ、ニコに"障害"はないじゃないか!とさえ思うことができました。
そう考えたらスッと気持ちが落ち着きました。
大好きなニコと一緒に、楽しく幸せに生きていく!!
という気持ちでいっぱいになりました。
また、告知を受けるまでは、ニコに何が起きているのか分からず不安と恐怖だらけでしたが、ダウン症があるとわかったので、これからはどう助けたらいいのかも分かるし、すごく安堵した気持ちにもなりました。
ダウン症を受け入れる
追記:
ニコが9歳になった今は、私の周囲にもダウン症のあるお子さんを育てている両親がたくさんおられます。お話を伺うと、「子どもにダウン症があることを受け入れる」というプロセスは大なり小なり、どの親も経験することなのかなと思います。
この受け入れていく過程は人それぞれで、比較的スルッと受容されている方もいれば、何年もかかってだんだんとという方もいるようです。
ただ私の身の回りの方を見ていると、多くの方は1歳の誕生日の頃には笑って「こんなにもダウン症のある子は可愛くて、育児も楽しくてしかないってことを、告知を受けて真っ暗な中に一人いるような暗黒時代の自分に教えてあげたい!!」というようなことをおっしゃっている気がします。
アメリカで暮らしていた頃も、生後3ヶ月の頃はいつお会いしても号泣していたママがいらっしゃったのですが、1歳になる頃には別人のようになって、今は啓発活動に力を入れておられます。エミー賞を受賞したダウン症のある若者たちのリアリティ番組「Born this way」に、唯一のちびっこキャストとして登場していたRocco君のママです。
私の場合は、このブログに書かせていただいたような感じで、母や家族が超ポジティブに応援してくれたことが支えになったような気がしています。
ブログのリニューアルに伴い、過去に別のブログに書いていた息子のニコに関するブログを、再編集と追記をして再掲載しています。興味を持ってくださった方は、テーマ「ダウン症候群のある子の暮らしや情報」でソートして読んでみてください。