「決算特別委員会」の委員に選出されまして平成29年度の東京都の決算に関する質問をしました。これは「今現在の取り組み」を聞くというよりは、平成29年度に、どんな事業に、どれだけ予算を使って、どんな実績や効果をあげたのか伺うという内容のものです。

福祉保健局関係の質疑は、渾身の70分でした!!

聞いた内容は、大きく分けると7項目でした。

1・スペシャルニーズのある子と大人の支援

2・子育て支援

3・ひとり親支援

4・社会的養護(親が育てられない子たち支援)

5・自殺相談

6・ホームレス支援

7・エイズ対策



ものすごい長いので興味のあるところだけでも、読んでいただけたら幸いです。

あと、長すぎるので何回かに分けて投稿したいと思います。


1・スペシャルニーズのある子と大人の支援

 まずはスペシャルニーズ児への支援について伺います。アメリカで私自身がダウン症のある息子を産み育てる中で経験したあらゆる支援機関が手を組んで多面的で包括的なサポートをする体制、人は一人一人違うということが前提にされていて、スペシャルニーズ児は可能な限り最大限インクルーシブな環境で育つべきだという社会に、心から驚くとともに、そして本当に救われました。友人や頼れる家族がいない海外で、初めての子育てで、スペシャルニーズのある子を育てるのは、一般的に考えれば、なかなか大変そうなことのように感じられるかもしれません。しかし実際は、私は日本に戻ってきてからの方が、不安を感じながら子育てしています。理由は挙げるとたくさんあるものの、もっとも足りていないのは、「包括的な支援」「情報」「インクルーシブな環境」だと感じています。

・児童発達支援センター・保育所等訪問支援について

 今年三月の一般質問での質疑でも触れましたが、色々な方と話し、視察を通じて、いかにクオリティの高い「児童発達支援センター」を各地に作れるかが、最大の鍵だという結論にたどり着きました。児童発達支援センターは、一般的な児童発達支援事業所と同じように直接発達支援をするだけではなく、相談と情報提供、子どもに関わる他の関係者との連携、地域へのアウトリーチ機能を兼ね備えられるからです。

 そして、スペシャルニーズ児が普段生活している保育所・小学校・乳児院などに、人を派遣して、療育をするだけではなく、先生らにどうすることでその子がよりインクルードすることができるかアドバイスできる「保育所等訪問支援」も、センターに期待される大きな機能であります。インクルーシブな環境を作るためには、重要な事業にもかかわらず、こちらもまだまだ整備が進んでいません。

Q.平成29年度の児童発達支援センターの設置区市町村の数と事業所数。29年度中の増加した数を伺います。また同様に「保育所等訪問支援」を行う事業所についても整備状況を伺います。

(この質問は、いかに児童発達支援センターと保育所等訪問支援事業が少なく、増えていないという実情を確認するためにしました)

A.
「児童発達支援センター」は平成29年度末において23区市34箇所が設置されており、そのうち29年度に設置したのは1区2事業所。

「保育所等訪問支援」を行う事業所は、29年度末において、21区市32箇所、そのうち29年度に設置したのは3区3市で7事業所。



 児童発達支援センターは29年度中に2事業所、保育所訪問支援は7事業所増えたということで、増加数はやや少ないようです。


しかしながら、本年度からは、児童福祉法に基づく「第一次障害児福祉計画」がスタートします。

都の計画では、「平成32年度末までに、全ての区市町村で児童発達支援センターを1箇所以上整備することと、全ての区市町村に保育所等訪問支援を実施できる体制を構築することを目標として、整備促進に努めていく」と(一般質問の時に答弁をいただいて)伺いました。

Q. 実際に事業を行う区市町村の計画には、(都の目標を受けて、児童発達支援センターと保育所等訪問支援事業の設置目標などが)どのようにそれが盛り込まれたのか伺います。

A.区市町村の障害児福祉計画では、
「児童発達支援センター」の32年度末までの整備目標について、
18区市町村が新規の施設整備や機能の確保、
区市が追加設置の目標を設置している。

32年度末までの整備目標に掲げていない区市町村においても、32年度以降の施設整備や複数事業所の役割分担による機能の確保などの方向性を記載している。

「保育所等訪問支援の体制」についても、
24区市町村で32年度までの体制整備にかかる目標を掲げているほか、
32年度末の目標を掲げていない区市町村については、児童発達支援センターの整備と合わせて確保するなどとしている。



実際に区市町村の計画にも、しっかりとセンターや保育所等訪問支援の設置目標が盛り込まれたことが確認できました。

都はこれらの計画が実現できるよう、しっかりと支援をしていただきますようお願いいたします。先ほども触れましたがセンターとはいっても、ビジョンを持って高いクオリティを確保していくことがとても重要です。理学療法士や作業療法士などの専門職の配置がもっと増えていくべきですし、地域支援機能も積極的に行える体制が整えられるよう、後押しをしていっていただけるようお願いします。

・児童発達支援事業所

Q・次に(スペシャルニーズのある未就学児の療育施設である)「児童発達支援」についてですが、29年度末の事業所の数、利用定員数。29年度中の増加数。このうち「主に重症心身障害児を支援する事業所」の29年度末の事業所数、利用定員数、29年度中の増加数を伺います。

(都内にどれくらい施設があって、どのくらい増えているのか聞きました)

 
A.児童発達支援29年度末の事業所数は409事業所で、利用定員は5632人、29年度中の増加は54事業所、518人分

このうち主に「重症心身障害児を支援する事業所」は、29年度末で43事業所、利用定員は344人、29年度中の増加数は12事業所、63人分



事業所は29年度中に、54事業所増えているものの、「主に重症心身障害児を受け入れる事業所」はまだまだ少ないことがわかりました。


そして「医療的ケア児」の受け入れについては、看護師の配備が必要なこともあり、本当に受け入れがごくわずかにとどまっていると聞いています。

都は、昨年度から、医療的ケア児を受け入れるために、「看護師を配置するモデル事業」を実施しています。また国の平成30年度の報酬改定では、重症心身障害児や医療的ケア児受け入れを促進するための加算も設定されましたが、こちらについても十分ではないという声を事業所等からもいただいております。

都は、モデル事業や、報酬改定における課題を検証し、引き続き、医療的ケア児の受け入れが進むように、国への要望なども含めて、必要な対応をしていただきますよう要望させていただきます。


・放課後等デイサービス

Q. 次に、(就学児向けの療育施設である)「放課後等デイサービス」についてですが、平成29年度末の事業所数、そして29年度中に新設された数を伺います。

A. 29年度末の事業所は806事業所で、利用定員は8475人。29年度中の増加は、68事業所、660人分。

放課後等デイサービスが29年度中に、68事業所増え、660人の定員が増えたということで、かなりのハイスピードで増加していることがわかりました。ただ放課後等デイサービスについては、「質」が問題ともなっています。Q. 質の向上に向けて、どのような対応をしてきたのか、伺います

A.都では放課後等デイサービスを運営する全事業所を対象とした説明会や、新規開設予定の事業者への説明会を通じて、運営基準や虐待防止など障害児の支援にあたり遵守すべき事項について周知を図っている。

また国のガイドラインに剃って、支援の質の向上と運営の適正化を図るように指導する他、自己評価を実施し、その結果を保護者等に公表するとともに、都及び所在区市町村にも報告するように求めている。

さらに虐待の疑いなど、不適切な対応が疑われる事業所には、速やかに運営指導や実施検査を行っている。今後とも放課後等デイサービスの質の確保に向けて取り組んでいく。



(したの質問は、事業所の方以外はあまり関係ない内容ですが、大切なことなので質問しました。事業所のかた以外の方は「ペアレントメンター」までスキップしてね)

 国の平成30年報酬改定の検討過程でも、「サービスの質」という観点から、重度のスペシャルニーズ児の受け入れ、専門職の配備を評価する方向が示されていて、期待しておりました。しかしながら、今回の報酬改定は、実際に具体的な基準が示された時期が、改定の直前でありました。その上、市区町村が利用者の障害の状態を「判定」するという新たな業務を、短期間で実施せねばなりませんでした。

この「判定」をめぐっては、混乱が起きています

4月当初の「判定」ではほとんどの区市町村が「5領域11項目」という古い判定方法を使い、事業者や保護者から聞き取り調査をせずに判定をしてしまい、「実態に合っていない」という声が多数聞かれました。

これらを受けて、国は今年7月26日に「新指標」を使って再判定の実施を9月末までに積極的に実施するよう業務連絡を出しました。

これによって、再判定を受けられた事業所は良かったのですが、とにかく時間がなく、再判定を受けられずに9月末を迎えてしまった事業所も数多くあります。


「障害児放課後グループ連絡会」が、再判定についての現状把握をするためのアンケート調査を現在行なっております。まだ回答を回収中ではあるものの、現在21の事業所から回答があり、その結果を教えていただきました。21事業所のうち、14事業所で再判定を受けられ、7事業所が再判定を受けていないということです。再判定を受けた14事業所は全て4月当初の判定では区分2だったのですが、再判定後、そのうち11事業所が区分2から区分1に変更になったそうです。つまり4月の時点での、古い指標による、面談等がない状態での判定は「妥当ではない」可能性が高いということがわかります。再判定を受けられなかった事業所は、実態に見合わない判定の元、厳しい運営を強いられる所も出てきます。

都としても、区市町村に対して、次回の判定からは、新指標を使って、保護者や事業所と面談をして、実態に見合った判定をするよう徹底していただけるよう、区市町村に働きかけをお願いいたします。また、今からでも積極的に再判定していただくなどの救済措置の検討をお願いさせていただきます。


 またこの報酬改定で、「専門職や児童指導員等を基準より多く配置した場合の加算」について、「児童指導員等を配置した場合」の要件が、東京都だけ独自に厳しいルールが敷かれているとの声が寄せられています。児童指導員等の「等」に含まれるものとして「強度行動障害の基礎研修を終了した障害経験指導員」とされています。ところが、他の自治体では「経験者」であることが要件になっていないということなのです。Q. 都はこの点について、どのように対応しているのか伺います。

A.介護報酬については、国の定める基準によって算定することとされている。このため解釈に疑義がある場合は、国に確認して事務を進めることになる。お話の加算の要件は、強度行動障害の研修修了者に関する要件のもので、国に確認しながら進めたものであるが、正式な文書での確認はなかったため、現在、再度、国に問い合わせを行い、文書で回答いただけるよう依頼中である。今後、国の回答によって、対応を検討していく。

 都が独自で厳しいルールを敷こうとしたのではなく、解釈による違いであり、現在、国に再度確認をしているということでした。国の基準に従い、他の道府県と足並みを揃え、不公平のないようにしていっていただけるようお願いします。

(国の回答が来たら、ルールを見直すこともありうるようです。この点については、引き続き、ウォッチして行きます)

 このように、この報酬改定によって、色々と混乱が起きておりますが、都は区市町村や事業所に丁寧にわかりやすい説明をし、国には引き続き要望を行なっていただきますようお願いします。
 いずれにしましても、専門性のある職員の加配を評価する区分ができたのは良いことです。質の向上のため、事業所にはこうした加算を活用していただきたいと思います。



・「ペアレントメンター」

 東京都は平成29年度から「ペアレントメンター」事業を始められました。

メンターとは「よき指導者」という意味ですが、私がアメリカで息子にダウン症があると診断を受けた時に、地元のDown Syndrome Association から、5歳のダウン症のある男の子を育てるアジア系の両親を、メンターとして紹介されました。

診断を受けたばかりの親の心情は、言葉には説明しにくいのですが、不安・失望・葛藤・価値観の崩壊・未来の展望を失う・人間不信・愛情・嫌悪などなど、とても複雑であることが多く、家族や親友の言葉でさえ届かないことが多くあります。

一方で、全くの他人であっても、同じスペシャルニーズのある子を育てている親の言葉は、誰よりも胸に響き、支えとなることが少なくありません。

私自身、一番の大きな救いとなり、希望を与えてくれたのが、メンターを始めとする、同じダウン症のある子を育てる両親たちの言葉や情報と笑顔でした。

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Down Syndrome Association
https://www.dsaoc.org
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Q. そこで東京都の「ペアレントメンター事業」について伺います。この事業は発達障害のあるお子さんを育てる親への支援策として、ペアレントメンターの養成と派遣事業を開始したということですが、事業の目的と実績について伺います。

A. 都は昨年度、子供が発達障害の診断を受けて間もない親などへの支援を充実するために、発達障害のある子供を持つ親が、子育て経験を生かして、悩みに共感し、助言などを行うペアレントメンター養成・登録し、派遣する事業を開始。平成29年度は、養成研修を12月に開催し、26名が受講・登録するとともに、15回、のべ33名を派遣。引き続き、ペアレントメンター養成・派遣事業を通じて、家族を支援する体制づくりを支援。

ありがとうございます。このメンター制度は、実はとても大きな支援となる素晴らしい制度だと思います。
ぜひこの取り組みを進めてノウハウを積み上げていただいた上で、将来は、発達障害以外のスペシャルニーズのあるお子さんもメンター制度を利用できるような体制整備の要望をさせていただきます。


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ペアレントメンターについて興味がある方は:
http://www.tosca-net.com/mentor/
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・「東京チャレンジオフィス」

 続いて、「東京チャレンジオフィス」について伺います。知的障害や精神障害などのスペシャルニーズがあり、「一般就労」を目指す方々が、都庁内で実践的な業務経験と訓練をすることができる「東京チャレンジオフィス」が平成28年度に開設されました。
Q. あらためて東京チャレンジオフィスの事業の目的と、具体的な業務内容、そして各年度の実績を伺います。

A. 都は平成28年度に「東京チャレンジオフィス」と都庁内に設置。知的障害及び精神障害のある方をチャレンジ雇用就労員として3年を限度に雇用するなかで、それぞれのニーズや適性に応じた就労経験を積む機会を提供し、一般企業への就労を支援。これまで庁内各局から、印刷物の封入や発送、データの入力や集計等、多様な業務を受注。

現在までのチャレンジ雇用就労員の採用者数は、平成28年が15名、29年度14名、30年度8名

一般企業への就職実績は、平成28年度が4名、29年度が7名、30年度が3名


 知的に発達が遅れるかたなどにとって、一般就労は、本当に高い壁です。そんな中、都庁という多岐にわたるオフィス業務がある場所で、経験を積むことができるのは、非常に大きな機会と成長と自信になると思います。

 この取り組みは、スペシャルニーズのある方々にとってだけ良いのではなく、都庁で働く皆様にとっても重要だと思います。特に福祉保健局のみなさまは、日々スペシャルニーズのある方達の支援をしておられます。チャレンジオフィスのみなさまと、一緒に働き、ふれあい、どんどん会話をすることで、「人として」「身近に」スペシャルニーズのある方達を知っていただけるようお願い申し上げます。本当のダイバーシティ&インクルージョンの社会を実現していくためには、まずは都庁の皆様が、スペシャルニーズのある方達と、普通に関わり合うところから始めていただきたいと思います。


今日はスペシャルニーズのある方々の支援についてでした。次回に続くー