6月7日の厚生委員会で
「ひとり親家庭支援」について
「子どもの権利」の観点から質問をしました。
目黒で虐待によりお亡くなりになった5歳女児の言葉を
私たちは永遠に忘れてはならないという想いから
都議会の議事録に残させていただきました。
よかったら読んでください。
陳情30第8号「別居・離婚後の子どもの共同養育に対する公的支援に関する陳情」についてお伺いします。陳情者の田中とみ子さんは、「共同養育支援、面会交流支援、及び養育費確保の支援や相談体制の充実」を訴えておられます。
1989年国連で「子どもの権利条約」が採択され、日本もこれに批准しました。子供には「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」権利があり、「子どもの最善の利益」が社会や親の利益よりも第一義的に考えられるべきだということが示されました。
参考:国連「子どもの権利条約」
https://www.unicef.or.jp/crc/
私が生まれ育ったスウェーデンでは離婚や別居後の、子どもの住居、面会、養育など全てにおいてこの条約に基づき「子どもの最善の利益」が最優先されており、「共同養育」が基本となっておりました。そのような国で育った者としては、日本の現状は、「親の権利」ばかりが優先され「子どもの権利」が侵害されているのではないかと、首をかしげることが多々あります。
日本で私が最も理解できないのは、離婚の際、「親である権利」を奪い合って、親権がない方がまるで「親でなくなる」かのような扱いを受けることです。私の考えでは、親であることは権利とかではなくて、責任です。離婚してようが別居してようが、子どもは二人の親から保護され健やかに育つことが保証されるべきで、子供が不利益を被ってはいけないと思います。離婚するなら、その後、親として責任をどう果たしていくかを話し合うべきです。
日本では、母親が子供を「父親にあわせない」という話を耳にしますが、これも「子どもの最善の利益」の観点から見れば、子どもは両方の親を知り、親密な良い関係を築くことを保証されるべきです。条約第7条には「子どもはできる限りその父母を知り、かつその父母によって養育される権利を有する」とあり、第9条には「父母の一方または双方から分離されている児童が、定期的に父母のいずれとも人的な関係および直接の接触を維持する権利を尊重する」とあります。面会は親のためにあるものではなく、子供のためにあるべきものです。DVなどの福利に反するような事情がない限り、同居していない親との面会は必要なことです。
東京では面会交流を行なっていない家庭は母子世帯の59%にのぼるそうです。
もう一つよく耳にするのは、「養育費を払わらない」という話です。スウェーデンでは、養育費は子供が18歳になるまでの義務であり、支払いを怠った場合は、社会保険事務所が養育費を立て替えて支給し、払ってない親からは強制的に取り立てます。
日本では母子家庭で養育費を受けたことがない世帯が56.8%で、
養育費を受けている世帯でも一番多い金額が2-4万円
となっており、困窮するケースが多いです。
繰り返しになりますが、親の離婚や別居によって、子供が不利益を被ってはなりません。
私は息子にダウン症があることから「苦労しているのだろう」と同情していただくことが多いのですが、息子の存在自体は喜びと幸せでしかありません。私にとって重くのしかかってくるのは、シングルマザーである現実です。
しかし世間ではシングルマザーの困窮ぶりはあまり知られていません。
というのも、シングルマザーは、悠著に平日の昼間に行政窓口や政治家に会いに行って「大変なのです」と訴えている暇がないからです。ダウン症児の親は、集まって情報交換をしたり、支えあったりします。しかしシングルマザーは集まって励まし合っている場合ではありません。どうやって今日明日を生き抜いていくかで必死なのです。
シングルマザーの年間平均収入は200万円未満が全体の41.9%
だということからも分かるように生活に困窮し、そして孤独なことが多いことを世間ではあまり知られていないように思います。
これらのことから私は、離婚や別居の際に「子どもの権利」「子どもの最善の利益」が脇に置かれてしまっていることを問題視しております。その視点を持って「ひとり親家庭」への支援が充実されるべきだと考えています。
Q.まずは東京都における「ひとり親家庭」に対して、どのような相談や支援を行なっているのか伺います。
ー東京都福祉保健局答弁ー
○都は、ひとり親家庭が安定した就労や生活の下、子供を健全に育むことができるよう、東京都ひとり親家庭自立支援計画を策定し、4つの施策分野を柱に、総合的な支援を実施
参考:「第3期東京都ひとり親家庭自立支援計画」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/hitorioya_shien/hitorioyakeikaku/daisanki/3kikeikaku.html
○この計画を踏まえ、東京都ひとり親家庭支援センターにおいて、生活に関する様々な悩みごとに対する生活相談、養育費相談のほか、離婚前後の法律相談や面会交流支援などの専門的な相談支援を実施
参考:東京都ひとり親家庭支援センター
http://www.haat.or.jp
○それぞれの家庭の状況に合わせた就業相談のほか、就業支援や職業紹介を実施しており、ひとり親の様々な課題に早期に対応できるよう支援
「東京都ひとり親家庭自立支援計画」に基づいた支援や、「ひとり親家庭支援センター」で、相談や支援を行なっているということですね。支援計画の中に「子どもの健やかな育ちを支援する」という子どもの目線があることは評価しますが、計画を読み進めていくと「ひとり親家庭」を一括りにして捉えていて、「子どもの最善の利益」にフォーカスは当たっていないのは残念です。どうか親と子供を別の権利主体として捉えて、支援を進めていただけるよう要望させていただきます。
次に離婚や別居の前の支援についてお聞きします。
母親が離婚をしようと思うと、経済的に自立できる職業、住む場所の確保、そして養育費等をきちんと払ってもらえるための知識が必要ですが、この3つを同時に全て確保するのは簡単なことではなく、離婚してリスタートするまでに、何年もかかり、その間に疲弊し、さらには精神的にも病んでしまうほど苦労する母親が多くおられます。ここの段階を少しでもスムーズに移行できるようにすることが、その後の大きな助けになります。
Q2. 東京都では、離婚する前からの相談や支援は、どのような取り組みをしているのでしょうか?
ー東京都福祉保健局答弁ー
○ひとり親家庭支援センターでは、離婚前からひとり親家庭になるにあたっての様々な悩みや不安について、年末年始を除き、毎日9時から16時半まで、電話相談を受け付け
○このほか、法律相談として、家事事件に精通している弁護士が、家庭の状況を十分把握したうえで、親権や慰謝料、財産分与等について、専門的な助言を無料で実施
○養育費の専門相談では、家庭裁判所の元調査官などの専門相談員が、別居中の生活費、養育費の取決めや算定に関する相談に応じる
○子供がいて離婚を考えている方が、養育費や面会交流などについて講師から必要な助言を受けられるセミナーを開催
ひとり親家庭支援センターにおいて、離婚前から支援の取り組みをしていることがわかりました。しかしながら「東京都福祉保健基礎調査」によると、「ひとり親家庭支援センター」を利用したことがある親は、わずか3.3%で、制度を知らない方は46.4%だということです。せっかく支援があっても、その支援を必要としている人に、そのことが伝わらないのであれば、全く意味がありません。
Q3. 「東京都ひとり親家庭支援センター」のさらなる周知が絶対に必要です。東京都の具体的な取り組みを教えてください。
ー東京都福祉保健局答弁ー
○ひとり親家庭支援センターの事業については、パンフレットやホームページ等により周知
○区市町村の相談窓口である母子・父子自立支援員が支援を必要とする家庭をセンターにつなげられるよう、研修の場でセンター事業の詳細な内容について説明
○昨年度、都や区市町村が地域で実施している様々な子育て支援サービスを掲載した冊子「とうきょう子育て応援ブック」を作成し、センターについても分かりやすく紹介
○ 都内公立小学校に通う1年生の保護者全員に学校を通して配布しているほか、区市町村を通じて様々な機会を捉えて配布
参考:「とうきょう子育て応援ブック」
オンラインから見られます
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/kodomo/koho/ouenbook.html
ひとり親家庭は、経済的にひっ迫していて、スマートフォンやインターネットにさえアクセスできない方もいらっしゃいます。また行政の窓口に来ることさえ困難な場合があります。広くいろんな手段で、支援に結びつくよう、今後も取り組んでください。
繰り返しになりますが、日本では「子どもの権利」という観点が抜け落ちていたり、足りていない場面が数多くあります。人工呼吸器をつけている医療的ケア児は、親が学校に付き添うことが要求されていますが、親が仕事をしている場合は学校に通うことができず、週3日2時間の訪問学習の機会しか与えられません。これは子どもの「育つ権利」と「参加する権利」が奪われています。
社会的養護においても「子供を第一に考える」と言いながらも、親の声が大きく、親の権利が、子どもの権利に優ってしまっているケースが多くあります。昨日から報道されている目黒の5歳の女の子の虐待死事件では、品川児童相談所が訪問しておきながら親から面会を拒否されたということで、面会せずに帰ってきてしまったということです。親を尊重するあまり、女の子は「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」権利全てを奪われ、お亡くなりになりました。5歳の女の子が遺した言葉は、絶対に無駄にしてはいけません。都議会の議事録に永遠にこの女の子の言葉が残るよう、音読させていだきます。
ママとパパにいわれなくっても しっかりとじぶんから
もっともっと きょうよりかあしたは できるようにするから
もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします
ほんとうにおなじことはしません ゆるして
きのうぜんぜん できてなかったこと
これまで まいにちやってきたことをなおす
これまで どんだけあほみたいに あそんだか
あそぶって あほみたいだから やめるから
もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいやくそくします
都の政策の中に、「子どもの権利条約」に定めららえている「生きる」「育つ」「守られる」「参加する」権利が守られ、「子どもの最善の利益」が、親の利益や、社会の利益よりも第一義的に考えられる視点をしっかりと取り入れて行ってください。