クライアントからLINEのQRコードが届いたので、オフセット印刷用に調整しました。
「オフセット印刷用に調整」って何? と思う方もいらっしゃるでしょうか。
古めのグラフィックデザイナーは、気にする部分が多いんです。
たとえばこんな感じで。
- クライアントから届いたLINEのQRコードはRGB形式。
- オフセット印刷するため、CMYK形式に変換。
- さらにバーコード部分からCMYを排除。(LINEマークは触らない)
- Kチャンネルのみ、100%になるよう補正。
- LINEのマークは色は、CMYK化したあとに大きな変化がないか確認。
- 変わっていたら調整。(公式の色指定はC82、Y83だそうですネ)
- その後、イラストレーターに配置。
コレ、なんのためにやってるかというと、版ズレ対策です。
気にしない人は、そのまま貼っちゃうんでしょうけれど、我々はプロなので。
印刷時の公差を考えずに使える状態までもっていく作業をします。
最近は版ズレなんかないよ、というご意見はあちこちで見かけるようになってきたんですが。かといって、ぼくらがそこで手を抜くことはありえないんです。
だってRGBの黒は、CMYKだと4色に分解されてしまうんですもの。
Japan Color 2001 Coated(主にコート紙用)だと、
C93%
M88%
Y89%
K80%
に変換されました。
Japan Color 2001 Uncoated(主にマット紙、上質紙系用)だと
C76%
M72%
Y82%
K80%
に変換されました。
今回はマット系用紙を使う、数量少なめな名刺の案件だったので、4版とも大幅にズレることはないだろうけれども、確実とは言えないのでやっておくと吉、という感じでした。
(場合によってはハイエンドデジタルで印刷されるので、もともと狂いが少ない)
これが輪転機使うような案件だったら絶対やっとけ、という感じです。
紙が伸びやすい、版がズレやすい、色が転びやすい、とかいろいろあるので。
「リッチブラックとは4色ともに指定するものだ」とか思っている方は要注意ですヨ。
マット紙、上質紙の印刷ではそもそも弾かれる
念のためにもうちょっとだけ言及しておくと、Japan Color 2001 Uncoated(主にマット紙、上質紙系用)に変換したものであっても、インキ総量300%以下縛りのある場合、印刷会社からエラーが返されます。
マット系用紙の印刷では、インキ量が多いと印刷現場でトラブルが発生してしまうため、CMYKの4版で使用するインキ量の上限を決めてあることが多いんです。
とくにネット印刷通販だと、事前のチェックではねられたりします。
C76% + M72% + Y82% + K80% = 総量310%
上記のCMYK変換だと、10%多いですね。
(これの対策方法はいくつかあるんですが、今回の件ではCMYを消去してしまうのが一番手っ取り早いです)
営業さんが間に入る印刷出稿の場合は、製版部門で調整したものを色校正に回していると思います。
修正用データとして戻ってくるものは製版チームによって調整されていますので、帰校時にはそちらを使います。
ですからRGBで届いたQRコードは、CMYKに変換するときにはK100%に置き換えておく必要があることを、と覚えておくと良い......というお話でした。
あと、コレ↓はLINEのカラーガイドだそうです。
読んでおくと、学びが深いかもです。
https://creative.line.me/ja/guide/brand-guideline/color-ja
2024.6.28追記
Xで参考になるポストがありましたので引用します。
【印刷ご注意】PPTに貼ってあるQRコードをそのままコピペでイラレやフォトショに貼るのはキケン☠️
— 樋口泰行/イラレおじさん (@higuchidesign) June 27, 2024
グレーのボケたQRコードになり、4色分解されると右のように印刷されます。QRコードが貼ってあるPPTデータは、zip解凍してmediaフォルダーに格納されているQRコードを白黒2値に変換して使うのです… pic.twitter.com/YMSVcmqyxg