個人的なことですが、近年、東京の浅草橋、馬喰町、日本橋横山町、東日本橋、小伝馬町の一帯を訪れることが多くなりました。このエリアはこれまで夜になると人通りがなくなり、真っ暗になっていましたが、近年、飲食店や宿泊施設が増えてきていることから、これらを営んでいる人や店を訪ねることがその目的です。
冒頭に5つの町名を書きましたが、これだけだと広域に感じられます。しかしながら、これらの町は徒歩10分程度でつながっています。東京の東地区にあり、かつてはアパレル関連の問屋街として隆盛しました。今では、オフィスと住宅が混在した下町の風情があります。また、地下鉄で1~2駅程度離れたところに、東京駅の他、三越前、秋葉原、人形町があり、このエリアはまさに「穴場」を感じさせます。
このエリアでは、古いビルや古民家等を作り変えて、新しい需要を掘り起こしている事例が数多く見られます。飲食業はホルモンや焼き肉、韓国料理などの大衆料理店に変わり、宿泊施設はホステル(簡易宿泊施設)であることが多くなっています。
東京のインバウンド(訪日外国人旅行客)の宿泊施設は、近年大きく様変わりをして、ホステルや民泊が顕著に増えています。特にホステルはエントランスからオープンになっているところが多いことから、ぶらりと立ち寄るとフリーな雰囲気が伝わってきます。
1階はフロントとカフェスペースとなっていて、カフェスペースは宿泊客のコミュニケーションの場となっています。宿泊客だけでなく働いている人も国籍はさまざま、好きな仕事をしていることを感じさせて爽やかな雰囲気が漂っています。
古いビルを活用したユニークなホステルが誕生
このエリアに誕生した宿泊施設の中で大いに興味を抱いたのは「Train Hostel北斗星」(以下、北斗星)です。オープンしたのは2016年12月、かつての寝台列車「北斗星」の寝台部分や食堂車のテーブルなどをビル内に移築し、ホステルとして営業を開始したものです。
1階から6階までの構成で、全体約200坪。1階がフロント、2階はラウンジとシェアキッチンに客席、3階から5階が客室、6階がシャワールームとランドリーとなっています。施設の中を見学しましたが、宿泊のフロアはまさしく昔懐かしい寝台車です。客室は2段ベッドがメインで78床。これは北斗星の3~4車両に相当するといいます。
北斗星を運営するのは株式会社R.project(本社/千葉・鋸南町、代表取締役/丹埜倫)で、2006年11月に設立されました。同社の事業内容は「宿泊施設の運営事業・イベントの運営事業」で、全て遊休施設を活用しています。
最初に手掛けたのは、千葉・鋸南町の「サンセットブリーズ保田」。ここは東京都千代田区が所有していた臨海学校跡地で2007年11月にオープンしました。42年間にわたり大都会の子供たちに千葉・房総の自然を通じた体験を提供していましたが、少子化の影響で閉鎖したそうです。そこで、同社は同施設を千代田区から譲り受け、リノベーションと一部新設工事を行ってスポーツ合宿がしやすい環境を整えました。こうしてスポーツ合宿やゼミ合宿、スポーツ大会、海外を含む学校単位での教育旅行、企業研修、ビジネス利用、家族旅行など幅広い需要に応えるようになりました。
同社が次に獲得した施設は2014年7月にオープンした「アカデミーハウス館山」(千葉・館山市)。ここは大学関係者専用の宿泊施設を譲り受けたものです。さらに、「昭和の森フォレストビレッジ」(千葉市)、「アルビンスポーツパーク」(千葉・長柄町)と続きました。
そして、2015年10月に同社初の「外国人バジェットトラベラー(低予算旅行客)向けホステル」である「IRORI Nihonbashi Hostel and Kitchen」(イロリ)をオープンしました。場所は、日本橋横山町。ここは北斗星のある馬喰町の隣町で、かつての問屋ビルを同社が譲受しリノベーションしたものです。
北斗星は同社の東京ホステル事業の2つ目のプロジェクトとなります。ホステルの利用客は一般的に予約サイトによるものが多いものですが、北斗星はオープン当初9割が直で、その後4割程度になってきているそうです。利用客はインバウンドだけでなく日本人も多く半分近くを占めているそうです。鉄道ファンにとっては魅力的な施設なのでしょう。宿泊料金は2段ベッドで2500円からとなっていますが曜日や利用状況によって若干の変動があるそうです。
さて、東京ホステル事業の3つ目の施設は「Shibamata FU-TEN」(東京・葛飾区)で、2017年3月にオープンしました。ここは葛飾区の旧職員寮で、総務省が各自治体の公共施設を民間事業者とつなげる「公共施設オープンリノベーション」というマッチングコンペに参加して獲得したものです。施設名の「シバマタ フーテン」とは「寅さん」を連想させて、施設そのものにストーリーが感じられます。
歴史がある町だからこそ、町の個性を発信する
さて、東京の東のエリアでホステルと同時に注目される飲食店は株式会社バイタリティ(本社/東京・中央区、代表取締役/岩田浩)が展開している店です。
同社の1号店は2009年2月に上野にオープンした「鳥番長」ですが、浅草橋駅東口に2店目となる「日本焼肉党」を2011年8月にオープンしてから、このエリアに集中出店するようになりました。現在、同社のこのエリアの店は、「豚大門市場」(馬喰町)、「揚げ三兄弟」(小伝馬町・東日本橋)、「新日本焼肉党」(東日本橋)、「魚釜」(日本橋横山町)、「手打ち蕎麦 たむら」(東日本橋)、そして3月7日に「新日本焼肉党」の浅草橋西口店がオープンしました。
浅草橋駅近くの賑わいは東口より始まり、次第に西口方面に飲食店がつながるような形で出店していき、賑わいも奥深くなってきています。
ここから馬喰町、日本橋横山町方面は問屋街となります。このエリアの特徴は、日中に多くの人通りがありますが、夕方17時ごろ以降から陽が落ちていくにしたがって町が暗くなり、人通りもほとんどなくなるということです。昼と夜の顔が全く異なります。
しかしながら、先のイロリや北斗星のようなホステルが増えることによってインバウンドのバックパッカーが増えて、これらの旅行者がこのエリアの飲食店で食事をしている光景が増えるようになりました。ホステルや大衆飲食店が並んでいる中に、地元客や勤め帰り、そしてインバウンドが同居している情景が当たり前のようになっています。このような光景を見るとこのエリアが国際化していることをしみじみと感じます。
飲食店が町を活性化する事例は数多く存在しますが、このエリアは古い町の資産を再利用して活性化しているという好例です。町としての歴史が存在することから、人々が集まることによって生み出される雰囲気にはより人間性を感じます。これがまたインバウンドにも愛される要因なのでしょう。
この記事を書いた人
『夢列伝』編集長 千葉哲幸
外食記者歴35年。2017年4月エーアイ出版『夢列伝』編集長に就任し、夢を語り、それを実現するために行動し、日本を元気にする人に出会うべく東奔西走。
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