カウンター割烹はディナーの憧れ
平昌オリンピック女子パシュートの日本メダルは素晴らしいことでした。小柄な日本人が、見事に整った隊列を保ち、個々人の技術レベルでは格上のオランダチームを追い抜くさまには日本女子のチームワーク力をあらためて感じたものです。
さて、「カウンター割烹の店で食事をする」ということには強烈な憧れがあります。あらゆるシチュエーションの最上のステージです。打合せ、お祝い、デート、等々の特別な日をさらに格別の日にしてくれます。
カウンター割烹の何が素晴らしいか。それは、出てくる料理のドラマです。季節感のストーリーがあります。その一つ一つに感動するたびに、店のセンスとプライドを感じます。
ある日私のfacebookに友達が投稿した画像が、銀座のカウンター割烹でした。興味をひいたのはカウンターの中にいる板前さんが全て女性であること。しかも、皆20代、30代ばかり。黙々と仕事をしている様子が脳裏に刻まれ、何かの重要な機会にそこで食事をしたいと思っていたのでした。
その日はっけなく早くやって来たのでした。お仕事の打ち合わせを、食事をしながらというものです。
店に入ると中高年のふくよかな和服の女性が出迎えます。マネージャーの風格があります。
店の中は白木で構成され、角の方が茶室のような設えです。一輪挿しがあって、何もかもがこれまでの記憶どおり特別な日に訪れるカウンター割烹です。
ただし、カウンターの中にいるのは、全て20代30代の小柄な女性の板前さんばかり、常時5人ほど。全員が髪の毛を後ろでまとめて、薄化粧です。
調理技術のレベルはかなりのものです。それ以上に、器の選び方と料理の盛付の仕方に、男性のカウンター割烹とは違った可愛らしさがあります。
料理は奥の厨房で仕込みがされていて、カウンターでは仕上げを行って目の前のお客さまに手渡します。それまでうつむいて黙々と仕事をしていたのが、調理を終えて顔を上げた瞬間ドヤ顔になっていて、それがまた可愛らしいです。
照れながら行う姿が記憶に刻まれる
この日最も驚いたのはバースディのパフォーマンスでした。
バースディは今、ファストフードやファミリーレストランでない限り、どんな店でも行われているパフォーマンスです。そんな経験を重ねていくと、バースディにその店の「らしさ」を感じるようになりました。
そして、この店でバースディが始まりました。20坪程度の小さな店内が暗くなった瞬間、カウンター割烹とバースディがどのようにマッチするのか、想像ができませんでした。
「本日お誕生日のお客さまがいらっしゃいます!」
このようにカウンターの中のリーダーが言うと、奥の厨房から2人がかりで大きなスイカを入れ物にしたフルーツポンチが、カウンター席の奥にある4人掛けテーブル席に運ばれたのでした。スイカに刺した花火がパチパチしています。
プレゼントされたのはアラカンの紳士。同世代の男女と一緒です。
すると、カウンターの中でコーラスが始まりました。厨房の中にいる女性の板前さんも加わって総勢7人。歌は「トゥモロウ」、合唱コンクールの時に歌う歌です。全員がお揃いのパフォーマンスをしています。意外な選曲に心が洗われました。
「トゥモロウ」のパフォーマンスはフルコーラスで3分間程度でした。この間女性の板前さんの表情は皆少し恥ずかしそうでした。堂々と歌っている姿より、この方が余程チャーミングです。お客さまは皆立ち上がって、この様子をスマホで撮っています。私は動画で取りました。パフォーマンスが終わると当然店内は大きな拍手で包まれました。
この一連のドラマが終わると、店内はまた以前と同じカウンター割烹の空間に戻りました。食事は〆のご飯から、デザートに入るあたりで、タイミングが素晴らしくマッチしていました。私のミッションもそろそろ終了です。打ち合わせの内容はよく覚えていませんが、素敵な記憶に満ちた時間を過ごしました。
これほどのチームワークのある職場は、働いている毎日が楽しいことでしょう。この職場を離れてから、ここでの日々を思い出した時に、たとえ辛い記憶がよぎっても、頑張っていこうと思うことでしょう。
この記事を書いた人
『夢列伝』編集長 千葉哲幸
外食記者歴35年。2017年4月エーアイ出版『夢列伝』編集長に就任し、夢を語り、それを実現するために行動し、日本を元気にする人に出会うべく東奔西走。
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