このブログの2月16日号で、新潟の飲食店経営者たちが結束して、「新潟を食でお客さまを呼べるまちに!」ということをミッションとして動いていることを述べました。今回はこれらの中のある企業の取組みです。
それは新潟市内に飲食店を3店舗展開している株式会社Elevation(代表/山崎聡、以下エレベーション)です。同社創業の店であるSoiは2002年10月にオープン。現在は同店の他に「べジテジや」(2013年オープン)、「万代グリルガルベストン」(2017年2月オープン)と同店の上階にバーティルーム(2017年5月開設)を擁しています。
このブログでは居酒屋甲子園の第10回、第11回と2回連続で新潟の飲食業が「居酒屋日本一」を獲得したことを述べましたが、第9回(2014年)では「Soi」がファイナリストになりました。つまり、新潟のチームが居酒屋甲子園ファイナリストに3回続けてなったということです。エレベーション社長の山崎聡氏の行動が、新潟の同業者のみなさんに活力をもたらしたと言えるでしょう。
居酒屋甲子園で新潟の飲食店が躍進するようになったのは、山崎氏ともども新潟市内の同業の仲間たちと2008年の第3回居酒屋甲子園を見に行ったことが全てのきっかけとなりました。
山崎氏がここで最も触発されたことは、「どらえもん」(DREAM ON COMPANY、本部/愛知・一宮市、代表/赤塚元気)のプレゼンテーションでした。同チームの特徴はスタッフが皆満面の笑顔でポジティブな行動を一斉に行うことです。そのような行動がなぜできるのか。ここの発表が終わってから、ロビーに展示されていたどらえもんのスタッフ交換ノートなど、逐一じっくりと見ていったそうです。
ここでの最も大きな学びは「理念」の重要性でした。山崎氏はこう語ります。
「それまで理念とは大会社がつくるものだと思っていました。しかし、どらえもんの存在そのものが理念を体現していました。理念とは志です」
そして山崎氏は、名古屋市内、一宮市内にあるどらえもんの店に何度も通いました。その経験によって生み出した「経営理念」は次のようなものです。
人のエネルギーが店のエネルギーになり、やがて街のエネルギーになる。
私たちは明日の日本をさらに元気にする立役者であるお客様に活力を与えると共に、魅力的な店創り、そして魅力的な人創りにより、新潟の街の未来を創造します。
これらに、今までの経営理念を「営業理念」に加えました。
『私たちの志事はお客様を喜ばせる事です。』
従業員第一主義、お客様中心主義を貫く為の約束
1スタッフとその家族の物心両面の幸福(内容省略、以下同)
2取引業者様とその家族の幸せ
3顧客の幸せ
4地域社会を幸せにし、活性化させる
これらを基にして山崎氏はスタッフにこのように問うています。
「あなたの仕事は何ですか?」
そしてスタッフはこう答えます。
「お客様に喜んでいただくことです」
このようにして、同社の企業文化は整っていきました。
突然訪れた苦難を、スタッフたちで乗り越える
山崎氏は1977年生まれで、25歳で独立しようと夢を描いていました。バー勤務の後、居酒屋に務めて、飲食業の仕事の全般を覚え、そしてお客様も育ちました。
そして、想定通りの25歳で独立、兄、弟など計4人でSoi(35坪45席)を立ち上げました。Soiとはタイ語で通りのStreetを示す言葉です。同店のある万代シティは駅から徒歩8分程度で、バスセンターを中心に集合住宅や商業施設が整っています。
前述の通り、2008年に居酒屋甲子園を見たことから理念経営に目覚めた山崎氏は、自分の店にその浸透を図るようになりました。それをすぐに理解してくれるスタッフもいましたが、一方では離れていくスタッフもいました。そのような状態のときに山崎氏は離れていく人をあえて引き入れようとせずに理念経営を進めていきました。結果、賛同者のほうが多かったので、離れていってもすぐに山崎氏の方針に合流することができたそうです。
2号店の「べジテジや」を出店する際に、現在出店している物件が紹介されました。1フロア30坪の3フロアで、大手のチェーン居酒屋が全棟借りで営業していたものです。絶好の間取りですが、スケルトンの状態で全フロアの造作を行うと1億円はかかるといわれていて、誰もが二の足を踏んでいました。ここに山崎氏は家賃交渉を詰めていき3フロア全棟借りを行いました。
べジテジやは京都に本拠を置く株式会社ゴリップが展開するサムギョプサルのブランドで加盟店となって出店しました。同社とは居酒屋甲子園の活動で知り合い、べジテジやの出店に至っています。オープンして月商800万円を売り上げることもあり、ベジテジや全店の売上トップの座を維持しています。
山崎氏としては、ベジテジやが好調にスタートしたことから、このビルの上のスペースに順次店舗を展開して、全フロアから活気があふれようにしたいと想定していました。しかしながら、ベジテジやの店長が事故で突然亡くなるという不運が訪れました。26歳で、スタッフの採用から育成を担当していてスタッフからの人望が厚かった人です。それだけに、彼の下で育ったスタッフにとっては虚無感が募ったのか、一人二人と店を止めていったそうです。山崎氏はこう語ります。
「この時期が組織的にも財務的にも最もつらい時期でした。2店舗の店ではスタッフの人員がぎりぎりの状態で運営していて、売上を維持することに奮闘しました。この間頑張ってくれたスタッフはわが社の宝であり、そして新しい企業文化をつくってくれました」
その素地を築いたのは「カンテラ会議」です。カンテラとは「下部組織」を意味する言葉ですが、同社では店舗責任者の手前のベテランのことです。
働きたい人が現れたらスタッフ全員で対応
同社は、現在新潟市内で「働きたい店」としての定評を得ていて、アルバイトの採用コストは新店オープン以外では発生していません。同社の店で働きたいという人は、同店のお客さまであった人ばかりです。そこで同社が行っている採用活動はこのようなことです。
「当社では『全員人事部』と呼んでいますが、『働きたい』と店を訪ねてきたり電話がかかってきたら、スタッフ全員が電話番号を聞き出して、面接の日にちを決めて、アルバイトの面接担当者が面接をするという流れをつくります。面接には1時間から2時間とたっぷりと時間をかけますが、採用する人の条件は『成長意欲がある』『変わりたいと思っている』の2つです」
アルバイトの作業の習熟度を見える化したものに「レベルピラミッド」があります。レベル1は「知らない」、レベル2は「知っている」、レベル3は「意識してできる」、レベル4は「無意識でできる」、レベル5は「使いこなせる」ということを意味しています。これらをアルバイトがオペレーションの項目ごとにレベルの数字を自己申告で書き込んでいきます。そのシートは各人のノートに張り込んで、カンテラのメンバーがそれを見ることでアルバイトのレベルがすぐに理解できて、レベルアップのためにアドバイスがスムーズにできるのだそうです。
このように自発的なアルバイト組織によって、各店舗は「働きたい店」として日々磨き込まれていき、来店客との和やかで活気あふれる雰囲気が醸成されています。それぞれのスタッフの表情に自信が感じられて、主体的な行動ができるようになっています。このような文化が定着することによって、地元の人に限らず全国から「あの店に行ってみたい」という想いを抱かれていくことでしょう。
この記事を書いた人
『夢列伝』編集長 千葉哲幸
外食記者歴35年。2017年4月エーアイ出版『夢列伝』編集長に就任し、夢を語り、それを実現するために行動し、日本を元気にする人に出会うべく東奔西走。
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