日本・アメリカ・ドイツを拠点に演奏するドラマー・アーティスト aine

 

aine wie keine名義で2023年にリリースした1st ミニアルバム "aine wie keine"
ウェブサイトからご購入頂けます⭐️

https://www.ainewiekeine.com/product-page/wie-keine

 

Spotifyはこちら🌟

 

 

 

 

 

1月、何の予定も無いなら里帰りするか、という気持ちで決めたアメリカ行き。

 

 

ニューヨークで2回、ボストンで1回演奏させてもらえることになりました。

 

初めてのベニュー、ブルックリンのPete’s Candy Storeと、ニューヨークに住んでいた頃によく通って何回か演奏もした大好きなベニュー、Rockwood Music Hall.

色々なベニューにメールを送っても、既に知り合いだったりしない限りは返事ももらえないようなベルリンの過酷なブッキング状況に慣れていたあたしにとって、小さくて、1時間ごとに違うアーティストが演奏するような場所とは言え、ちゃんと返事をもらえてブックしてもらえることにまず感動。笑 友達も知り合いもどんどん離れていく中でどれだけの集客があるかも分からないし、まずはニューヨークで、古い友達と一緒に演奏して古い友人にお披露目する、というのが目的。勿論、自分のプロジェクトを知らない人に聞いてもらいたいというのもありますが、アメリカでの演奏は色々と大人の事情が絡んで来るので、まぁ、またきちんとした形で戻って来ることを次の目標に。

 

ニューヨークでのバンドはボストン時代からの友達であるJordan Scannellaにベースをお願いし、彼に他のミュージシャンも探してもらうことに。

信頼できる大好きな人に丸投げしたら、Adam AhujaSimon Kafkaというやっぱり音楽的にも人間的にもとってもやりやすくて素敵な人達を集めてくれて本当にありがたい限り。

 

初日のPete’s Candy Store。

当日数時間のちゃちゃっとしたリハーサルも、それぞれが事前にちゃんと予習してきてくれ&彼らの素晴らしいスキルのお陰でサクサクと進み、楽しみでしかない状態で現場に到着。来てくれた古い友達と挨拶をしている間に、漸く前のイベントが終わって、時間ない!時間ない!と言いながらドラムセットをセッティングするところからスタート。笑 今回何が大変だったって、用意する場所や楽屋もない状況で、普段はサクッとドラムをセッティングするだけのあたしが、ドラム、ドラムマシン、ループステーション、マイクのセッティングをして、サウンドチェックをして、、、とやることが多く、それだけでバタバタしていたこと。やっぱりちゃんと時間かけてセッティングしたいな、、、というのはまぁ、今後のために覚えておこう。

 

 

 

セットリストもその場で決めていき、とてもリラックスしてウェルカムな雰囲気で。図らずも2曲目の”wie keine”で既に泣く人が続出していたらしい。

ニューヨーカー、感度が高い。笑

 

 

 

それにしても。

 

 

来てくれた人達はニューヨークの時に知り合った大好きな人達ばかり、更にサプライズで意外な顔を見つけたりして、到着したばかりの最初のパフォーマンスはとっても暖かく、優しい空間でした。3人の素晴らしいミュージシャンに守られてるので、好き勝手やり放題。色々ハプニングはありつつも、終わった後はそれぞれと久しぶりに会えたことを喜び合って、来てくれた人達同士も出会ったりして、あーやっぱり自分が作りたいのはこういう空間だなぁとその心地よさをすごく嬉しく思いました。

 

 

 

終わった後、10数年来の友達が、「新しいことに挑戦する姿に感動した」とか、「歌の内容が伝わって来て泣けた」とか、「やっぱりドラム格好いいね」とか沢山嬉しいことを言ってくれて、漸く自分の中のミュージシャンの部分が完結した気がしました。

 

 

 

仕事として、他の人の音楽を演奏するということを何十年も続けてきて、演奏後に言われる「良かったよ!」という言葉は文字通り”いい仕事をした”ということとして受け止めてきたけれど、こうして未熟ながらも自分の音楽を演奏するというのは本当に自分にとって意味のあることだなと感じました。やっぱり自分のためだけにしか演奏していない自分だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後のRockwood Music Hall。前回と日にちも近いし、時間が遅いこともあり、もはや誰か聴きに来てくれるだろうか、、、という心配がまぁ的中した感じではあったけれど、リピートしてくれた人もいたし、メンバーが友達を呼んでくれたり、友達が友達を呼んでくれたりしたお陰で知らない人達の前で演奏するというミッションをクリア。またしても時間のかかりまくるセッティング、これはどうにかしないといけないな、、、と思いつつ、それでも2回目ということでもう少しリラックス、、、はしていたのかどうか。今までドラマーとして培ってきた、どう自分の心地いい状態を作るか、気持ちがブレないように、身体が硬くならないように、どうしたらいいのかということは、フロントとして自分のプロジェクトをするとなると結構簡単に吹っ飛んでいったりする。まぁ、慣れの問題だから、場数を踏むしかない。そのためにこうやって割と無謀な企画をしたりしているわけだから。

 

今回、Jordanがとっても助けてくれたけれど、基本的には全部自分で決めていかなければいけないわけで、やっぱり一緒にやってくれるパートナーが欲しいなと思いながらも、自分のやりたいことをどう言葉にしたら明確に伝わるのか、そしてその時に集まってくれたメンバーだからこそ起きる化学反応をどうやって最大限に引き出すか、そんなことを考えながら1人で新しい場所に出向いて新しいメンバーと出会って演奏することもとても楽しいなと思う。そう。だからあたしはこういうスタイルで音楽を演奏したい。

 

 

ポップミュージックのシーンは、完璧にレコーディングを再現することにばかり意識が向けられがちで、ジャムやブルース、ジャズなどの即興性やその場での瞬発力を求められる演奏ばかりしてきたあたしとしては、それだったらカラオケでいいじゃないかと思うことが多くなっていた。仕事ですからね。求められたらやりますけれども。でも、自分のプロジェクトをする時に、他のミュージシャンに完璧を求めて縛り付けるようなことはしたくない。それよりも明確な方向性は示しつつ、違うことは違うと言えるスキルも持ち合わせつつ、基本的にはその場でしか聴くことができない音楽を観客も一緒になって作り上げる様な空間を作っていきたいのだ。

 

 

 

だから、まずは場所作り。

 

 

 

 

 

 

自分が心地いいと感じる場所。

 

それを一緒に作り上げてくれる人。

 

自分の大好きな音楽。

 

 

 

 

 

次のプロジェクトは、もはやそういう空間を作ることだ。

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えていたら、次のストップであるNorth Carolinaでお気に入りドラマー、Nate Smithのコンサートをたまたま見に行く機会に巡り合い、オープンしてまだ2回目の新しいベニューでその楽しそうなスタッフのホスピタリティを感じる機会をもらい。

 

翌日はハウスコンサートを見に行くことに。

 

そこでの経験もとても感動的でした。

 

 

 

 

 

 

アメリカの片田舎の住宅街で、大きな居間を開放して50人ほども集まったコンサート。

そしてその日の演奏のほとんどがダンスと音楽の即興。

 

 

 

基本的に完全なフリーの即興音楽は理解できない根っからのポップ志向のあたしなので、よっぽどでないと「何やってんのこの人達」で終わるのですが、その日のパフォーマンスはダンスもとても面白くて楽しめました。

 

 

それぞれのパフォーマンスの後に感想をシェアしたり、質問が飛び出したり。

 

今日のパフォーマンスはどうやって作られたの?と聞かれて、実は今日初めて一緒にやったの、、、と言ったギターとダンサーのデュオ。

最初の完全なる無音・不動状態から後ろに倒れ込むところから始まったそのパフォーマンスは、ダンサーがずっと観客に聞こえるほどに呼吸をしているのがすごく印象的でした。彼女が、「意識して呼吸をして、それを今この瞬間に自分を引き止める碇、グラウンディングのようなものとして使っている。」と言ったことに対して、その日度々「コミットメント」という言葉を使っていた主催者も、「あなたの呼吸に意識を寄せることで、この場のみんなが同じ様に今この瞬間に集中できていたよね」と言っていて。

 

 

何が起こるのか分からない、自分が好きなものか分からない、それに対して自分の時間とお金をかけてその場にいるということにコミットする人達がこんなに集まっているハウスコンサートってとても純粋な空間だなぁと感動しました。

 

 

酔っ払った観客が大声で話し続けたり、バーで飲み物を注文する人がいて、シェイカーが振られ、冷蔵庫がバタバタして、氷がジャカジャカと音を立てる。

そんな環境も楽しいけれど、自分が本当は観客も一緒になって瞬間を創り上げるような場を作りたいんだと再確認しました。

 

 

 

 

 

 

そんな風に考えていたら、ボストンで試してに行ってみた新しくオープンしたRockwood Music Hall Bostonでのまだバンドとは呼べないような進化途中のアーティストの演奏も純粋に応援してあげる気持ちになってきた。みんな一度は通る道。この段階を経てあたしも人前でしっかりした演奏が出来るようになったわけだし、それもこれもまだ素人くさい演奏しか出来ないあたしに「それでもやらせてみよう」と機会をくれたバンドリーダー達がいてくれたからだし。まぁ、「あたしを呼ばないと今晩のギグのドラマーがいない!」という切羽詰まった状況だったことも多分にあるでしょうけれど。

 

 

完璧主義を否定するわけではない。だけれども、音楽を始めたのは、純粋に楽しかったから。続けていくうちに出て来た「上手くなければ人前で演奏してはいけない」みたいな思い込みから外れたところで、最大限にその瞬間を楽しみながら、その場でしか出せない、メチャクチャ格好良くて幸せになる音楽を作っていきたいなと思う。

 

 

 

 

そんな経験とそこから来る想いを総括してボストン最終日。

 

 

 

 

全米ツアーをしたりしながら、ボストンをベースにずっと演奏し続けてきたバンド、the Grownup Noiseとハウスコンサートをさせてもらうことになりました。

 

何年も演奏もしてないけれど、曲が始まってしまえばスルスルと思い出して演奏できてしまう。それくらいずっと一緒に演奏した。

去年10年ぶりくらいにストリートで軽く一緒に演奏した時には、歌い始めた途端に号泣してしまったくらい、想い出が詰まっているバンド。

オリジナルのメンバーが10年振りに戻って来て、密かに活動を再開したのを知り、それなら自分も参加したい!とお願いした。そんなワガママを叶えてくれるバンド。

 

 

 

ドラムのないデモ状態で渡された新曲をリハーサルで演奏しながら、きっとこんな感じ、とスルスルとドラムを叩く。ドラムパートに於けるPaulの趣味は知り尽くしているのだ。

 

 

 

新しい曲を覚えるのはあまり得意ではないけれど、曲をしっかり聴いていれば、どこに向かうのかちゃんと教えてくれる、わかりやすい音楽。

ファンシーなことをするわけではなくて、音楽が引き立つ様に、歌が聞こえるように叩く。そんなことを覚えたのも、このバンドで演奏する曲がすごく好きだったからだなぁと思い出す。

 

 

また一緒に演奏できることの喜び。お互いに成長した部分と、変わっていない部分とを楽しみながら、それを口に出して伝えることを教えてくれたのもこの人達だ。

 

 

コンサート当日。

the Grownup Noiseの新曲をちゃんと覚えたかな?という少しの不安と、自分のプロジェクトを初めてピアノ弾き語り、完全なるソロ形態で演奏するというまたしても無謀な挑戦を控えて直前にもはやキャパオーバーになりながら。自分を心地良くいさせるために一人時間を作る。

 

 

the Grownup Noiseの演奏はもはや10年のギャップを全く感じさせないとっても伸びやかなもので、それは自分がこの10年で習得した”気負いのなさ”の成果かなと思った。誰かに「すごい」と言わせるためではなく、自分たちがまず最大限に楽しんでいること。その瞬間、今の自分が出来る最大限を引き出す。無理強いではなく、自然な形で。

 

 

古くからのファンと、昔からの友達が集まったその場はまたしてもとっても暖かい場で、新しい曲を喜んでくれて、古い曲を懐かしく楽しんでくれて。

昔は楽しめなかった部分も楽しめている自分を発見したり。さりげない彼らのすごさを改めて尊敬したり。

 

 

終わった後に「思い出したよー。リハーサルでも楽しいんだけど、アイネは本番にものすごい力を発揮するよね」というAdamの言葉をとても嬉しく受け取った。

 

 

 

 

 

 

そしてこの滞在の最後に。

aine wie keineで初めて、鍵盤を弾きながら、ドラムループを作り、歌のループも重ねて演奏するというソロのパフォーマンスのお披露目。

この段階では怖くてまだ演奏を見返すことは出来ていない。笑

 

 

同じ鍵盤とは言えピアノとキーボードという別の楽器を使うことで生じる違い、人前で演奏するとなるとやっぱり練習の時のマインドセットをキープするのはやはり経験値がいりますよね、ということはまぁ想定はしていたけれど、まぁ思いつく限りの失敗をして、いやー本当、聴いてくれてるけどこれ人前に出して大丈夫?と半分思いながら。もはやそれすらも笑い飛ばす。というか、家族のようなこのメンバーの前だからこれに挑戦しようと思えたのだ。強者が集うニューヨークの一発目のギグでこれは流石に出来ない。笑 

 

普段ザワザワしたところで演奏する機会が多いので、じっと耳を澄ませて聴いてくれる観客がすぐ目の前に座ってくれているというのはありがたくもあり、でもその反応が露骨に伝わって心許ない感じもしたのだけれど。

 

終わった後に、「Philipp Glassを思い起こしたよ」とか「坂本龍一のあの曲を思い出した」とか自分の方向性を指す様な感想を言ってくれたり。ミュージシャンの友達が「今度ボストン来たら一緒に演奏しよう。」と言ってくれたり。そしてthe Grownup Noiseのメンバーは口々に「EPを聴きまくってたから、大好きなバンドをこんな近くで違う形で聴けてすごく感動したよ!」とか「ほんとメチャクチャよかった。すごい挑戦だったね。カッコよかったよ」とひたすら褒めてくれて、いや、きっと録音を聴き直したらメッチャへこむんだけれど、それでも今回あたしがやりたかったのは挑戦することそのもの、それ自体をシェアすること、自分の失敗をひっくるめて引き受けることだったので、終わった瞬間は色んな感情が混じって、じわっと湧き上がってくるものがあった。このとっても安全な空間を作ってくれたthe Grownup Noiseのメンバーには本当に一生かけても感謝を伝えきれないんじゃないだろうか。

 

 

 

 

 

さて、そんなわけでもう守るものないくらいにすっぽんぽんになってしまったので、怖いもの知らずにソロでも色んなところで演奏していこうと思います。

毎回が挑戦で、新しい発見で、それをみんなで楽しんでいけるといいなと思う。