20年近く、海外で、ドラマーとして演奏することを仕事としてきた。

ローカルのクラブで演奏したり、アメリカを一周したり、ヨーロッパやトルコ、ロシアで大きなフェスティバルに参加したり、有名なバンドのオープニングを務めたり。

 

バンドの一員として。

 

フロントを支えることを仕事として。

 

 

 

あたしのことを知っている人、演奏を聴きに来てくれた人は主におっさんに紛れてブルースを叩く人という印象を持っていると思う。

 

 

 

 

実を言うと、

 

ブルースなんて聴いて育ってない。

 

普段から聴いたりしない。

 

仕事でやる以上の曲を知っているわけでもない。

 

 

 

ただ単に偶然出会ったドラマーにハートを鷲掴みにされてしまい、彼らを見るため、仲良くなるために彼らのホストしているセッションに通い詰め、演奏しているうちにそこに通う他のミュージシャンに声をかけられて仕事を頂いただけの話である。

 

そして海外で仕事を得るには、まずローカルな人達と出会って演奏を聴いてもらうことが重要だと考えて、自分のジャズのへちょさを自覚しているあたしは、ベルリンでもブルースのジャムセッションに行き始め、そこでニューヨーク仕込みのブルースドラミングを見初められただけの話である。

 

 

 

そこにあたしのプライドは、全く、無い。

 

 

 

これこそライスワークというものなんだろうと思う。

 

 

 

あたしのブルースドラミングを評価して貰えるとすれば、それは単に今まであたしを雇ってくれた歴代のバンドリーダー達が素晴らしかっただけであり、彼等が何も分かっていないヒヨッコをステージに上げてその場でリードして鍛え上げる器と技術を持っていたからである。

 

あたしが持っていたのは無知と若さ故の無茶と度胸だけであろう。

 

 

 

 

自分の作品を作っていると言う時、人は口々にブルースのアルバム?とか、ドラムソロだけなの?とか聞いてくる。

 

んな訳がないのだ。

 

 

 

ブルースミュージシャンを支えるのは大好きな仕事だけれど、あたしの中からブルースは1ミクロンだって出て来やしない。

 

 

ドラムだけの曲もいつかはありかも知れないけれど、今のところ、それを曲と呼ぶ観念すらあたしにはない。

 

 

 

 

じゃあ現在あたしは何を作っているのかと言われると、皆さんの予想とか全て裏切ってメチャクチャカッコいいJ-popなのである。

 

そんなことを言えちゃうのはまぁ、自分の曲が好きというのと、素晴らしいプロデューサーさんにありえないお仕事をして頂いたからです。

 

始めは友達とか周りの人に記念的に聴いてもらえたらいいかなみたいな意識でいたけれど、人に関わってもらうほどに、こんなすごい人がここまでしてくれるならっていう気持ちも出てきた。

 

それは気負いではなく、周りへの責任。

 

自分が始めたことへの覚悟。

 

 

 

 

 

それは、自分の作品とか、自分の存在そのものがそこまでエネルギーをかけられて然るべきだと気付かされたということでもある。

 

 

 

仕事って、こんなにも愛に溢れているものなのかと。

 

 

 

あたしのやることに、こんなにも何かを注いでくれる存在がいるとは。

 

 

 

あたしの仕事ぶりや、存在に対する評価は素直に受け取っていいのだと。

 

 

 

 

 

 

それはステージ上で感じてきたはずなのに、それが自分発信だったり、自分に向けられる可能性があることに思いもよらなかった。

 

 

それを誰かから受け取って良いのだと。

 

 

それを自分自身に注いで良いのだと。

 

 

 

 

 

 

 

全身全霊でやり切って全身で受け取れ。

 

 

 

 

 

 

 

 

人と何かを一緒にやり続けるというのは本当に大変だったりするけれど、だからこそ、今回これを始めて良かったなと思う。人を巻き込んで良かったなと思う。

 

 

 

 

 

これで漸く、自分が一人前に生きるスタート地点に立てたんじゃないかと。

 

 

 

 

 

今は、そう感じるのだ。