2月の頭は、最近紹介されたCharlotte Brandiというアーティストのレコーディングに参加していました。ベルリンであたしが初めて参加したインディバンド、TellavisionのFeeに紹介されてのご縁。Women In Music JapanのインタビューシリーズにFeeも出てもらいましたが、100回目を記念する12月最後のインタビューを、Charlotteにお願いしました。

 

そこでのトーク内容もとても面白かったので、是非また日本語訳を出したいなと思っていますが。

 

今回のプロジェクトは、今までMe and My Drummerという名前のデュオで活動していた彼女がソロで活動し始めて、バンドを迎えて初めてレコーディングするというもので。ずっと英語で歌詞を書いていた彼女がドイツ語で全ての歌詞を書き。そして参加する全てのメンバーが女性という企画です。

 

バンドメンバーも、エンジニアも、プロデューサーも、全て女性

 

 

 

その意図とそこから起きた話が興味を引いたので、レコーディングの合間にその話を聞いたりしていました。

 

 

 

 

そもそも、彼女が今回の企画を思い立ったのは、今までずっと男性ばかりに囲まれて仕事をしてきて、常にその場で感じていた

 

 

「男性にイニシアティブを取られたくない」

 

 

というプレッシャーと

 

 

「男性と女性がいることで起こる、恋愛感情的なもの」

 

 

を、女性だけの現場にした時に自分は感じるんだろうか?という実験の様な意図に依るらしく。

 

 

 

面白かったのは、今までバンドはドラマー以外はみんな女性だったので、今回のプロジェクトに当たり、メンバー変更はドラマーだけ。そこで当のドラマーではなく、彼の友達が「その企画は間違っている。何で男性を排除する必要があるんだ???」と、物凄い裏切りをしたかのようにCharlotteを責めたという話でした。

 

 

当人ではなく、その周りが何故。笑

 

 

 

 

そして実際にレコーディングに入ってからCharlotteにどう感じる?何か違いがある?と聞いたところ、

 

 

「今までと比べて自分が圧倒的にリラックスしていると思う」

 

 

「男性に負けたくないみたいなプレッシャーがない」

 

 

と話してくれました。

 

 

 

 

それを聞いて、あたしが思ったのは、自分も今回とても楽しくレコーディングをさせてもらったけれども、それはあたし自身が自分を掘って、素直に、そして感情的にならずにプロフェッショナルとしてそこにいられるようになっただけの事で、性別というのはあまり関係ないなぁという事でした。

 

 

きっと20年前のあたしはこの環境に逆にライバル意識を燃やしたりしていたし、そんなあたしの周りにはドラマドラマな女性が集まって、大変なことになっていたんではなかろうか。周りの女性はみんな敵だと思っていたようなところがあったから。爆笑

 

 

色々を経て漸く丸くなったあたしは、今回のメンバーが本当に素晴らしいなぁと思ったし、それは女性だから、男性だからではなく、ただただ全員が自分のやるべき事を知り、それを全力でやる事だけに集中しているプロフェッショナルだというだけのこと。驚くことにあたしが最年長という中で、20代の若いミュージシャンが同じように考えて、技術も人間性も素晴らしいグループを作っていることをとても嬉しく感じました。音楽を仕事にするというのはやっぱり生半可な事ではないし、しっかりと稼ぐ事をしている人ほど、人間性も素晴らしいし、ビジネスについてもちゃんと考えている。ベルリンの音楽シーンがこういう若い人達で構成されていくのは未来が明るいなぁと思います。

 

 

 

今回Charlotteと話しながら自分の経験はどうかな?と思い返し。

大変なこともあったけれど、逆の意味で恵まれていたとも思います。

 

周りがおっさんばっかりだったので、そもそも恋愛がどーのという話にならず、みんなに娘の様に可愛がってもらえたのもすごくありがたかったこと。本当にみんな過保護でねぇ。。。笑 黒人のおっちゃんと一緒に大酒を飲んで帰ったり、夜中3時に終わったギグの後にご飯を食べに行った様な話も一度や二度の話ではありません。疲れて酔っ払っているあたしに訛りの強い英語は最早右から左に矢の如く抜けていってたというのはここだけの話にしておいて下さい。

 

繰り返すけれど仕事の場では周りがおっさんばっかりだったので、尊敬する人しかいないし、リーダーの言うことは絶対。だから自分がリードするというよりは、絶対的に、必死について行きます!!!という姿勢だったので、そういう意味でもライバル意識の様なものが生まれるはずもなく。それはそれで違う問題を生み出したのはまたいつかの話にしておきます。

 

 

 

 

反対にベルリンに来てから、これはドイツ人の性質なのか何なのか、やたらマッチョな考え方の人に何人かお会いして、アメリカでは必要もなかった「男相手に意見をする」ということを何度か体験しました。

 

 

何というか、、、しんどかったな。

 

 

 

「女だから黙ってろ」って言われた訳じゃない。

 

 

 

だけど、あんたは相手が男でも同じ発言をした???

 

 

 

ていう思いはどうしたって消えない。

 

 

 

流してしまえば楽だけれど、絶対に自分は間違っていないし、あたしのプロとしてやってきたドラマーとしてのプライドと、そんなあたしを可愛がってくれたあたしの尊敬して止まないブルースマン達へ顔向け出来る様にいる為にも、絶対引き下がれない。

 

 

 

 

ニューヨークの本気のブルースマンに揉まれて来たんだよ。

 

 

 

「アジア人のほっそい女の子」ていう先入観だけで意見して来ようとすんなよ。

 

 

 

 

 

そうやって何度か自分の為に意見を言うことをして以降、そういう体験をする事は無くなりましたが。

 

今は新しいオファーをもらう時にはメンバーがどういう人なのかもちゃんと聞いて、同じものに対してリスペクトを持てない人との仕事は断るようにしています。

 

 

 

そうやって自分の中の、そして周りのゴタゴタを消化してから自分のプロジェクトを始めたので、レコーディングではありきたりに全員男性の中にあたしが1人という状態ではありましたが、心から尊敬して安心出来るメンバーなので、「あたしが引っ張らなきゃ!」とプレッシャーを感じることも無く。自分よりも数段に経験が上で、色んなことを考えながら意見をくれる人達ばかりで、彼らに委ねた方が絶対に良くなると思っているので、何かを奪われる!とか押し付けられる!とかいう危機感も皆無。そういうメンバーって女性性が多目の人達でもあるのかも知れない。ちゃんとリーダーシップも取れるけど、人の意見も素直に聞くし、周りをちゃんと見ているし、プロジェクトの成功の為に動いている。

 

 

 

 

何と幸せな体験だろう。

 

 

 

 

最初のポッと出たアイディアだけを頼りにプロジェクトを始め、その後は流されるままに、周りの意見を取り入れてどんどん変化する自分のアイディアのまま、最初とは全然違う方向に変わっていく音やビジュアルのイメージ。そんな、固まりきっていない、どこにでもいける可能性を沢山秘めている自分のプロジェクトと流されていく自分の様子をもっともっと楽しんで、内容はどんどん変わっても、目指す方向にグングン向かって行きたい。

 

 

 

 

それももしかすると自分の柔軟な女性性的アプローチであったりするかも知れない。

 

 

 

 

 

 

何にせよ、Charlotteとのプロジェクトで新しく扉が開かれた様なので、今年はベルリンの新しいシーンに首を突っ込みつつ、更に色々な人達と演奏する機会が増えていくのではと思います。

 

 

 

 

もっともっと女性のミュージシャンとの演奏の機会が増えて、それが特別でなくなるといいなぁ。

 

 

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