ベルリンのローカルシーンでは、コンサートで入場料を払う代わりに、アーティスト本人達もしくは主催者が客席に行って帽子の中にお金を入れてもらうということがよくあります。最初の頃、クナイぺと呼ばれる小さなバーや、ジャムセッションなどでよく演奏していたあたしも、例に漏れずそれを経験し、毎回居心地の悪い思いをしていました。

 

 

 

 

アメリカでこういうこと、した事ない。

 

 

あたしは、、、お金を恵んでもらってるの?

 

 

ものすごい時間をかけて準備した音楽の対価は、ポケットに余っている小銭程の価値しかないの?

 

 

 

 

(一応言っておくと、10ユーロとか20ユーロとか、多い時には50ユーロなんかを入れて下さる方もいて、多くの場合はちゃんとした収入になります。だからこそ続いているシステム。)

 

 

自分をどういう風に納得させたら良いのか分からなくて、周りのミュージシャンがそれを当然の事としてやっているのをどう受け止めて良いのか分からなくて、本人達に聞いてみてもやっぱり分からなくて。

 

 

モヤっているあたしとは全然違うエネルギーで、堂々と感謝のエネルギーを振りまきながらニコニコして客席を周っている彼らを見ながら「理解できない、、、」と思い、次第にそういうギグをするのを止めました。

 

 

 

 

 

そんな中、あたしのコーチが勧めてくれたこちらの動画

 

 

 

 

全身を真っ白に塗ってストリートで銅像のパフォーマンスをしていたミュージシャンのAmanda PalmerさんのTED Talk。

 

 

 

 

ダーダー涙を流しながら観て、自分の中で今までのミュージシャン生活の色々が思い出されました。

 

 

 

 

 

 

私は、音楽を仕事として演奏しています。

 

 

 

 

だけどそれは他の誰かにとっては仕事じゃなかったりもして。

 

自分のエネルギーとお金と時間の全てを大量に注ぎ込んで、ただ演奏して音楽を聴いてもらうことが目的の人もいる。

 

お金は他で稼ぐから。

 

 

 

そこの境界線を引くのがいつもすごく難しくて。自分が好きなバンドであるほど、お金がついてこなかったりもする。でもそこに納得して、じゃあ他のプロジェクトでお金を稼ぐから、ここでは稼がなくても良いよって言える程のバンドに出会えることは物凄く幸せなことで、懐では無くて、身体全体が潤う様な、満たされるような感覚です。人としても尊敬出来て、色々と勉強をさせて貰えるような人達。そういう人がビジネスマインドも併せ持っていると本当にありがたい。

 

 

 

 

音楽性と人間性。

 

 

そして自分の音楽を広め、それを経済的にも成り立たせる努力をしているかどうか。

 

 

 

 

欲張りなあたしはその全てを1つの所で満たそうとしちゃうんだけれど。笑 

 

 

 

 

 

でも、やっぱりミュージシャンも、自分から働きかける必要があると感じているあたしは、新しくオファーが来た時に、そこのバランスが取れているプロジェクトかどうかを最初の段階で見極めるようにしています。

 

 

 

 

自分のプロジェクトも然りですけれど。

 

 

 

何となくで始めたけれど、やり始めたからには、こんだけ沢山の人に本気の仕事をして頂いている限り、自分の最善を尽くして多くの人に聴いてもらって、彼らの素晴らしさを知ってもらいたいし、それをまた彼らに還元したい。

 

 

 

 

だから、色々勉強している最中です。

 

 

 

 

 

 

 

さて、動画の話に戻ると。笑

 

 

 

 

ボストン時代、インディバンドでアメリカ全土を周るツアーをしていた時、レーベルもついていないし、全てのブッキングなどは主要メンバーがしてくれて、演奏しかせずにただついて行っていただけのあたし。

 

エアベッドを積み込み、行く先々でメンバーの家族や友達の家に泊まらせてもらって、バンドみんなで一緒の部屋で寝るのは当たり前、ベッドが足りなければ兄弟みたいな関係のメンバーと同じベッドで寝るなんて事もしょっちゅうありました。

 

彼らが物凄く良い人達で、素晴らしいケアをしてくれたから、当時、好き嫌い激しくて人見知りで何もしようとしない本当にどうしようもないヤツだったあたしでもどうにかツアーを周り切ることが出来ました。

 

 

 

 

だけど、

 

 

 

仕事として音楽やりたいのにこんなのもうイヤだ!!!

 

 

 

という思いは強くなり。

 

ニューヨークに引っ越したので彼らと演奏を続けることは難しくなり、次第にあたしの仕事の仕方も変わっていきました。

 

 

 

 

お金を頂く為に演奏をする。

 

だから

 

 

 

音楽が好きか、信頼出来る人か。

 

ちゃんと最初にビジネスの話が出来るか。

 

時間や移動距離、リハーサルや事前の準備にかけた時間と見合う報酬か。

 

 

を確認する。

 

 

 

 

ニューヨークで、時間をかけて漸く「大好きなミュージシャンとちゃんと報酬のあるギグだけをする」ということが出来る様になって。

 

そこからベルリンに移って客席を周ってお金を頂くという経験をして。

 

 

 

 

 

この動画を見て思ったのは、

 

 

 

 

もし自分が、聴いてくれる人や、泊めてくれる人達とちゃんと繋がることが出来ていたら、あの経験は全然違うものになったのじゃないか

 

 

 

 

ということでした。

 

 

 

 

実の所、あたしはめちゃくちゃ人見知りです。

 

 

HSPコーチにも言われたけれど、最初は様子を見たい。

 

 

相手がどういう人で、自分に対してどう思っていて、自分はどう立ち回れば良いのか、それが分かるまで、自ら話しかけるということはしません。

 

 

 

だけど、というのか、だからこそ、なのか。

 

ややこしいことにあたしという人間は、それなのに人との繋がりを強烈に求めているんだと思います。

 

 

 

誰よりも。

 

 

 

 

そしてそこで起きる1つ1つの感情を楽しみ、自分の生を確認し、相手との相違から自分というものを浮かび上がらせ、理解する。

 

 

相手にも、あたしという人間を理解して欲しい。

 

 

 

 

 

 

ギグという場で、お店やバンドの常連さん、たまたま音楽を聴きに来た人、誰かの誕生日を祝う為に居合わせた人、バンドメンバーの友人、ベニューの店員、オーナー。

 

ランダムな人の集まりに、それでもあたしが自分の居心地の悪さをちょっとだけプッシュして相手を信頼してそこにいる事が出来たら。ステージから観客と目を合わせてみたら。自分のやっている事に120%納得して帽子を持っていたら。

 

ステージの上と下で「楽しませる人と楽しませてもらう人」という対峙では無く、一緒にその空間と時間を共有して楽しむという意識でいたら。

 

「演奏してお金を貰う」という事に付随するあらゆる出来事を更に大きな愛の目で俯瞰することが出来たら。

 

 

 

 

 

 

直接お金を受け取りに行くという行為の中に、相手とのコミュニケーションを見出して、そのお金が意味するもの、お金が運んでいるもっと大きなエネルギーをしっかりと受け取ることが出来るんじゃないだろうか。

 

 

それをする為には、もっともっと自分がドラムを叩く事に本気で、そしてその時に一緒にいる人・演奏する音楽・場所、そういう自分が選択できる1つ1つにもっともっと向き合って、自分が納得している事が大事なんじゃないかと思いました。

 

 

 

 

きっとあたしは今よりもっと純粋にそこにいる事が出来るんだと思う。

 

 

 

 

そして自分の音楽を演奏する、自分のプロジェクトをするというのはそれを大きく手助けしてくれるんじゃないかと思います。

 

 

 

 

その掘り進む過程、めっちゃ大変ですけれど。笑