産後の連続ブログ小説「Daddy,Brother,Sister and Littleboy」★4 | 【バースプランは産後まで。】   



第4話:贖罪


一誠は、子どもたちを前後に乗せたママチャリを駐輪場に停め、ネクタイを緩め、ワイシャツの一番上のボタンを外した。暑すぎる。バスと電車で通勤している一誠には、子どもふたりをママチャリに乗せて通勤することがこれほどハードだったとは思いもよらなかった。
保育園の駐輪場に並ぶ数台の自転車はすべて電動自転車だった。うちも電動買わなきゃダメかな…一誠は、このあと再び自転車で駅に向かうことを考えると憂鬱になった。

「パパ、はやくおろして」
誠治に言われて、一誠は慌てて誠治のベルトを外した。

「なあ、誠治、ママは毎朝チャリンコで送り迎えして、疲れてる?」

「…わかんない。でも雨のときは大変そう」

「雨?…雨の日もチャリンコで来てるのか?…まあ、そうだよな。タクシーってわけにいかないもんな…」
雨の日の送り迎えのことなど考えたこともなかった。一誠の知らないところで、尚美は黙々と送り迎えを遂行していたということか。
やはり電動自転車くらい買うべきだと一誠は思った。
一誠は恵美のベルトを外し、抱っこで自転車から降ろすと、さっさと保育園の入り口に向かう誠治を追って、恵美とともに保育園に入っていった。


誠治が園舎に入った途端、廊下の向こう側から男の子がふたり駆けてきた。運動会のときに見たことがある、と一誠は思ったが名前は思い出せなかった。

「せいじ!おっはよー!」
駆けよられた誠治の方はまんざらでもない顔をしながら、わざと素っ気ないふりをしている。

「おい、誠治、おはようって言うんだろ」
一誠に促されてようやく誠治が小声であいさつをする。

「せいじ、はやくこいよ!」
「あたらしいきんぎょが来たんだぞ、こいよ!」
ふたりに引っ張られて、誠治は脱いだ靴を靴箱にしまうこともなく、奥の年長さんの部屋に消えていった。

一誠はとりあえず、恵美の靴を脱がせて靴箱に入れると、自分も靴を脱いでスリッパに履き替え、恵美の手を引いて3歳児クラスに向かった。
「おはようございます…」
部屋では3歳児たちが積み木を積んだり、お人形をおんぶしたりして思い思いに遊んでいる。一誠はところ狭しと広げられているオモチャを踏まないように慎重に入室した。

「おはようござ、あ、恵美ちゃん、今日はパパと一緒なんだ?いいねえ!」
担任のミキ先生が恵美に顔を近づけてニコニコする。恵美も笑顔で応えた。
「今日はお母さん、お仕事で早出されたんですか?」

「ええ…そうですね、そんな感じです」

「今、アレですもんね?赤ちゃんが、ね?」

「はい、あはは、そうなんですよ。ええ」

「大事にしなきゃですもんね!お父さんの送り迎えがこれからときどきあるってことですか?」

「どうかなあ…まあ、もしかしたら、そういうことになるか、どうだろう?」

「じゃ、お父さんのために、朝の準備の仕方を説明しますね」

「ああ、はい…」

「まずは、お父さん、そのスリッパ、保育室内には履いて来ないようにお願いします~。すみません、まぎらわしくて。衛生面を考えて、スリッパや上履きは廊下だけなんです。基本的に、送り迎えのときにはスリッパは皆さん履いてませんから、そのまま入っていただいて大丈夫ですからね」

一誠は一層汗をかきながら、スリッパを廊下に出すと、一連の朝の準備のレクチャーを受けた。

「それとお父さん、写真の申し込みが今日までなんですけど、申込用紙持ってこられました?」

「え、写真?いや…聞いてなかったな…」

「できれば今日のお迎えのときか、難しかったら明日の朝必ずお願いしますね」

「はあ…」
今の連絡事項のせいで、ついさっき教わった朝の準備がすっかり飛んで行ってしまった。また次に朝の登園に来たときにはイチから教わらないといけないだろう。
一誠は腕時計を見た。もう保育園について15分も経つ。これじゃ保育園のために会社を遅刻するんだか、会社を遅刻するために保育園に来てるんだか分かりゃしない。
次は誠治の準備だ。
3歳児クラスを出ようとした瞬間、恵美が一誠の足にしがみついた。
「パパ、だっこ」

「ちょっと待てって、今から誠治のところ行くんだから」

「だっこ!」

「時間がないんだよ」

「やだ!だっこ!」

「はぁぁぁ…分かったよ、はい、だっこ」
一誠は強引に恵美を抱き上げて、そのまま廊下の奥に向かおうとした。

「ちぃがぁう!」
恵美は大暴れで、一誠の抱っこから落ちそうになった。

「何が違うの」

「ママのだっこはこういうのじゃないもん!」

「じゃ、どういうの」

「もっと、ひこうきみたいにおっきくだっこするもん!」

「いいか、ほら、見てみろ。パパはこっちの手でカバンを持ってるだろ?」
一誠は恵美を右手一本で抱え、左手で黒革のビジネスバックを恵美の顔の前に出した、
「だから、そんな難しい抱っこはできないんだよ。この抱っこがいやなら、自分で歩きなさい」

「やだー!ひこうきのだっこがいいもん!」

「いい加減にしなさい。パパだって仕事に行かなきゃならないんだ。それ以上言ったら下ろすぞ」

「やだぁぁぁぁ!パパなんかきらぁいぃぃぃぃ」
恵美は廊下で声を張り上げて泣き始めた。すかさず、恵美のクラスからミキ先生が飛び出してきて、一誠の腕から恵美を抱き上げた。
「恵美ちゃん、どうしたの?ママが早くお仕事に行っちゃったから心配したの?」

「ママ、おうちにいるもん!」

「あら、そうなの?それじゃ、今日は具合が悪いのかな?」

「ゲエ出そうだっていってたの」

「あら、そう。それは心配だわね。じゃ、ママはおうちでゆっくり休んでてもらって、パパはお仕事がんばってもらって、恵美ちゃんは…どうする?お砂場行く?」

「おだんごつくる」

「よおし、じゃ、今日はお砂場行っておだんご作ろう!」

大粒の涙を目に貯めて、恵美は小さくうなずいた。
「じゃ、お父さん、恵美ちゃんはお預かりしますね、行ってらっしゃい!」
ミキ先生は恵美を抱いたまま、鼻歌を歌いながら、部屋の中に入っていった。


一誠はポケットからハンカチを出し、額の汗をぬぐうと、年長さんクラスに向かった。誠治は自分の準備を終えているだろうから、声だけかけて帰ろうと思い、年長さんクラスに入ったところ、部屋中に散らばる無数の服。
部屋の片側に男子が3人。と、もう片側に男子が3人。うち一人が誠治だ。
その3対3が、まるで雪合戦でもしているかのごとく、服を投げ合っている。どうやら自分たちの着替え用の服を投げているようだ。とてもじゃないが、部屋には入れない。
こんな最前線のような状況にも関わらず、女子たちはまったく気にもかけず、金魚の水槽を覗き込んで、口々に可愛いとか目が大きいなどと喜んでいる。
さっきののほほんとした3歳クラスとの差はなんだ。誰もこの服投げ遊びに疑問を感じないのか?

一誠は背中をドンと押されてつんのめりそうになった。

「ちょっと!あなたたち!お洋服で遊ぶってどういうこと?今投げてある服は先生がもらってもいいですか?」
年長組担任のメグミ先生だ。
「あ、ごめんなさい、誠治君のお父さん、ぶつかっちゃった。やだわ、私ったら~」

「いえ、大丈夫です…」
一誠はメグミ先生の胸元の名札に「めぐみ」と書かれてあるのを発見し、あれ?…思ってたのと違う…と思いつつも、自分の母親とほぼ同年齢のメグミ先生に道を譲った。

「お父さん、大丈夫ですよ。あとは自分でやらせますから。お仕事行ってくださいね」

「ああ、そうですか…」
一誠は逃げるようにして園舎を後にした。
保育園に来てから25分。あまりにも重労働だ。満員電車の方がはるかにラクだ。
尚美よ、早く回復してくれ…!


そのころ年長さんクラスでは、洋服の後始末をしながら、誠治が信彦(のぶひこ)から情報収集を開始していた、
「ノブ、ちょっと教えてくれよ。三人きょうだいって、どうよ?」

「どうした、セージ?お前、きょうだい増えるのか?」

「ああ。おふくろが妊娠中なんだ」

「まじか!三人目来たか」

「で、どうなんだよ?」

「お前はどっちに付くんだ?」

「何が?」

「おふくろか、おやじか。どっちに付くんだよ」

「なんだよそれ。別に決めてねえよ」

「決めておけ。それが運命を左右する」

「はあ?なんで?」

「今に分かる。自分の立ち位置を決めるときなんだよ、家族が五人になるってのは」

 
(つづく)




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