夜の連続ブログ小説「産後暗いっす。」 ★第3話★ | 【バースプランは産後まで。】   



第3話:思わぬ河



カフェ・エコトコで啓示を受けた翌日。
一晩中インターネットで「産後サポート」を調べつくしたミナミは、気分は完璧な産褥シッターだった。

ネット情報によると、どうやら産後サポートのもっとも肝心な点は、家事が上手かどうかではなく、
「母子に寄り添うこと」
だそうだ。
寄り添う、の意味はよく分からなかったが、おそらく必要な手助けをなんでもやってやればいいのだろう。
出産後で家事や育児がままならないとは言え、育児は母親として泉がやって当然だし、そうなると必要なのは家事の手伝い。
・・・ってことは、結局、家事の技術が問われるだけじゃないか。
産後サポート、軽い軽い。

専業主婦になって7年、家事は100%自分が担ってきたという自負がある。
兼業主婦の泉に家事で負けるはずがない。
それならば、泉が私の産後サポートを拒む理由はない。
私は、今日から産褥シッターとして美原家に乗り込む。

美原泉、あなたは既に私の射程圏内に入っている。
「見えるぞ・・・」

「おい、どうした?行ってくるからな」
妄想中のミナミの顔の前を素通りして、夫の伸栄(のぶはる)が玄関に向かう。
「そうだ、このへん最近ホコリっぽくないか?」
伸栄が、ガンプラの箱が積んである一帯を顎で指して言う、
「たまには掃除しておけよ。ずっと家にいるんだから、テレビばっかり見てないで、俺が気持ち良く過ごせるようにしておいてくれよなぁ」
伸栄は目を細めてミナミを一瞥すると、さっさと革靴を履いて家を出た。

帰りが遅く、帰宅後はメシ・フロ・ネルしか言わない伸栄は、朝の出勤直前に小言を言うのが習慣だった。
しかも、小言を言うわりには、大事なことは何一つ言わない。
今夜は遅くなるから晩ご飯はいらないよ。
今週は土曜日も出勤になったんだ。
――こんな連絡があったためしはない。

かつてミナミが、「晩ご飯がいらないときは、早めに教えてほしい」と言ったところ、伸栄はこう言った、
「何で俺がそこまで気を遣わなきゃいけないんだ?仕事で忙しいってのに。」

ミナミは思う、
晩ご飯がいらないという連絡は、気遣いではない。
義務だ。
ホテルの予約だって、宿泊3日前からキャンセル料金が発生し、当日キャンセルは50%、無断キャンセルは100%負担となるのだ。
晩ご飯だって、無断キャンセルはペナルティが発生し、その分、食事作りを免除されてもいいくらいだ。
小言を言っている暇があったら、皿の一つでも洗ってみろ!

――いつもなら、この時間がミナミにとってもっともストレスになる瞬間だった。
だが、今日は違う。
新たなミッションを手に入れた今、ミナミにとって伸栄の小言も一瞥もまったく気にならなかった。

ミナミは大きく息を吸い込んで、ガンプラ箱の上にうっすら積もったホコリをフゥゥゥゥゥっと吹き払うと、もう一度声に出して言った、
「見えるぞ・・・私にも敵が見える!」


朝一で泉に電話すると決めていたミナミは、電話でどう説明し納得させるかをシュミレーションしてみた。

実は自分は産褥シッターの会社にパートで働いていて、産後サポートの心得がある。
本当だったら、会社を通さずに仕事を受けるのはまずいんだけど、可愛い後輩・泉のために、産後サポートをしてあげたい。
お金をもらわなきゃ会社だって怒らないだろうから、タダで産後サポートをしてあげる。
――これがミナミが考えたシナリオだ。

よし、イケる!

ミナミは泉の携帯に電話をかけた。
泉とはメールかLINEのやり取りしかしていなかったため、電話をかけるのは初めてかもしれない。
ミナミは少し緊張した。

泉の待ち受けメロディが鳴っている。
WOW WOW WOW レ~イオ~ンラ~イオ~ン ラ~イオ~ンズ ミラクル元年奇跡を呼んで~

・・・まさかの西武ライオンズ応援歌?
しかも、松崎しげるバージョン?

陽はのぼ~り~

・・・うわ、1コーラス終わってもう一回1番からリフレインだ・・・。

それにしても、忙しいわけないのに電話に出ないとはどういうことだ?・・・もう7時半になるのに、まだ寝てるのか?

「もしもし、美原です・・・ミナミ先輩ですか・・・?」

「あ、泉!いきなり電話してごめんね!」

「どうしたんですか?こんなに朝早く?」

「あなた、今日出かける用事ある?家にいる?」

「私はまだ外出できないので、家にいますけど・・・」

「そうよね!じゃあさ、今日行ってもいいかしら?」

「え?・・・どうかしましたか?」

「あれよ、あれ!あの、ほら産後のサポートってやつ!」

「産後のサポート?」

「ちょっと、泉、あんた勉強不足なんじゃない?今は、出産したら産後サポートっていうのが常識よ!」

「はあ・・・そうなんですか・・・」

「私、ほら、パートでサンクツシッターやってるからさ、泉のお手伝いしてあげたいのよ」

「サンクツシッター・・・って何ですか?」

「知らないのぉう!? 出産後のママの家で家事を手伝ったりする仕事よ!出産の“産”に屈辱の“屈”に・・・」

「産褥(さんじょく)シッターのことですか?」

「!?・・・さすが泉!私のボケをスルーしないあたり、出産してもまだまだ鈍ってないわね!今日行って大丈夫でしょ?」

「ええと・・・でも、あの・・・私、大丈夫です。自分でやれますから。」

「なんでよ!あんたは出産したばかりなんだから、寝てればいいのよ。それに、里帰りしないでしょ?私がタダで家事を手伝ってあげるって言ってんだから、甘えなさいよ!」

「あの・・・大丈夫です・・・実は、夫のお母さんが手伝いに来てくれるんです。」

「お義母さんが!? 近くに住んでるんだっけ?」

「しんとこ(新所沢)です。なので・・・大丈夫ですよ。」

義母が手伝いに来るとは想定外だった。
ミナミがネットで得た情報は、産後サポートを受けるのは里帰りしない家庭がほとんど、ということと、里帰りしない家庭に逆に親が手伝いに来るということもケースとしてはあったが、それは実母が来るものとばかり思っていた。
泉の両親は二人とも仙台で働いているため、実母が住み込みで手伝いに来ることは不可能だ。
そうなれば、事実上泉は親族の手伝いを受けることはできないと思っていたが・・・まさか義母が来るとは・・・!

完全に作戦が狂ったミナミは、どうでもいい会話で場をつなぐことしかできなかった、
「お義母さんが来るって、やりにくくないの?」

少しの間沈黙。

「・・・ミナミ先輩には関係ないじゃないですか。」

「まあ、そうだけど・・・」

「すいません、オッパイの時間なんで、切りますね。」
ここで通話は途切れた。


作戦が狂ったことは悔しかったが、それ以上にミナミをモヤモヤさせたのは、義母が家事を手伝いに来ることがどれほどのプレッシャーだろうかという思いだった。

ミナミは、泉の営業マン時代を思い出していた。
広告代理店営業をする泉のあだ名は「押しの泉」。
押しが強い営業、という意味ではない。
押しに弱い営業、という意味だ。

泉は、顧客から出稿直前の広告の訂正を求められたり、急な掲載取りやめを迫られても断れないたちだった。
そのため、デスクや編集部に年中頭を下げていた。
いやと言えない性格で損をすることもあったが、顧客からは重宝されていた。

困った顔で顧客からの電話を受けている営業時の泉と、先日の授乳しているときの泉の姿が重なった。
ミナミはノートパソコンに向かって、「産後 義母」と検索ワードを入力した。


(つづく)








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