TPP:日本が参加した場合は… Q&A

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の発足を目指す米国など9カ国は28日、ペルーでの交渉を終えた。11月に米ハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)での大枠合意に向けた作業が進む中、日本国内では交渉参加を巡る議論が大詰めを迎えている。TPPの狙いや日本が参加した場合の影響を探った。【和田憲二】

 Q TPPとは?

 A 工業製品や農産物などの輸入にかかる関税をなくしたり、各種の国内規制に共通ルールを設定する枠組みで、Trans-Pacific Partnershipの頭文字。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが06年に発効した経済連携協定(EPA)「P(Pacific)4」が母体で、米国や豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わろうと拡大交渉を進めている。11月12~13日のAPEC首脳会議で大枠合意、来年6月の正式合意を目指している。

 Q 他のEPAや自由貿易協定(FTA)との違いは?

 A 関税の原則撤廃を掲げ、サービス業の規制緩和や投資の自由化、知的財産保護の強化など対象が広い。労働者の権利保護など、世界貿易機関(WTO)で扱われないテーマもあり、交渉は21分野(24の作業グループを設置)に及ぶ。国境の垣根を低くしてモノやサービス、人の移動を拡大しようとしている。

 Q 米国主導のイメージだ。

 A 米オバマ政権が09年に参加表明したのが、拡大交渉の発端だからだ。08年のリーマン・ショックで経済が低迷した米国は、成長市場のアジアに目を付けた。工業品や農産物の輸出を増やしたり、得意な金融分野などで海外展開を強化したいようだ。日本も参加させて世界1、3位の経済大国が加盟する大型EPAに育て、中国をけん制する狙いもありそうだ。日本国内では、「早期に交渉に参加すれば、ルール作りで日本の事情も考慮してもらえる」との意見もあるが、参加に慎重な意見も高まっている。

 Q 日本にとってメリットは?

 A 輸出が拡大し、国内雇用を増やせるかもしれない。自動車や家電で競争している韓国は米国や欧州連合(EU)とFTAを結んでおり、日本の産業界のあせりは強い。対外投資がしやすくなれば、海外で稼ぐチャンスも広がる。また、輸入品が安くなれば消費者にはメリットだ。

 Q デメリットは?

 A 農業団体は「安い農産物が出回れば、国内農家は経営が成り立たない」と心配する。農家1戸当たりの農地面積は、米国が日本の約90倍、豪州は約1500倍と格差が大きい。TPPでは、日本が過去のEPAで「国内への影響が大きい」として除外してきたコメや小麦、乳製品、牛肉など940品目についても関税撤廃を求められる。また、食品安全基準の緩和を求められる可能性があり、消費者団体は食の安全を懸念する。日本医師会は、保険診療と保険外診療を組み合わせる混合診療の拡大や、外資の病院経営参入などで「医療格差が生じる」と批判している。

 Q 国内全体ではどうなる?

 A 各省の影響試算は推進、反対の思惑も混じって、整合性がとれていなかった。経済産業省は昨年、日本がTPPに参加しなければ20年に日本の実質国内総生産(GDP)が最大で1.53%(10.5兆円)減り、81.2万人の雇用が失われると試算。一方、農林水産省はTPP参加で農業生産額が年4.1兆円減り、340万人が失職するとしたが、いずれも前提が極端だとの批判を浴びた。内閣府が今月、農業などの生産減をその他の分野の生産増が上回り、実質GDPは0.54%(2.7兆円)増えるとする試算を発表。政府はこれを「統一見解」とする方針だ。

毎日新聞 2011年10月29日 20時05分(最終更新 10月29日 20時30分)