倉吉市清谷の住宅街の一角に小さなバイオリン製作工房を構える岡野壮人(たけひと)さん(29)が今春、県内で唯一というバイオリンの「製作学校」を工房内に開いた。独立して3年目という岡野さんだが、岡野さんに憧れて入門を志願した鳥取市の表(おもて)飛悠人(ひゅうと)さん(19)を受け入れ、職人として養成するために開校した。20歳代後半で師匠になった岡野さんは「楽器づくりに年齢は関係なく、全てが実力の世界。自分の腕と経験を信じて、若い人に技術を伝えていきたい」と話している。(上田貴夫)

 岡野さんが、バイオリンの魅力にふれたのは中学2年の時。母と一緒に行った倉吉市内のクラシックコンサートで「あんな小さな箱みたいな楽器がホールの隅まで美しい音を響かせるなんて」と感動した。小学生の頃からものを作るのが好きで、廃材を使って空き地に小屋を建てるほどの工作好き。演奏よりも、きれいな音を生み出す楽器そのものに興味を持った。

 その年の夏休みに母の知人を通じて、東京都内に工房を持つバイオリン製作の第一人者・無量塔(むらた)蔵六さんを訪ね、「すぐにでも弟子入りさせてほしい」と頼み込んだ。無量塔さんから「高校を卒業して、バイオリンが弾けるようになったら来なさい」と願いはかなわなかったが、言葉通りに高校卒業までの4年半、米子市の音楽教室に通いながら、苦手なバイオリン演奏を習得した。

 念願かなって高校卒業後、すぐに入門。無量塔さんの工房では、最初は20人ほど仲間がいたが、次々と脱落していく中、6年間修業した。卒業しても製作者になれる人は1割という厳しい世界。岡野さんはさらに技術を磨くためにすぐには独立せず、東京在住のドイツ人製作者に3年間弟子入りし、そこで18世紀のイタリアの職人ガルネリによる300年前の名器のレプリカを作る仕事を間近で見て、その技術にふれた。

 独立して、古里の倉吉市に工房を設けたのは2009年10月。ブランド力があるイタリアやプロ音楽家の多い東京に比べると立地条件は厳しいが、「いいバイオリンを作るのに場所は関係ない。世界の音楽家が認める楽器を作っていきたい」と目を輝かせる。

 美しい曲線を描くバイオリンの製作には、ノミを使ってマツやカエデの板を100分の1ミリの精度で曲面を削る繊細な作業が多い。一般的なバイオリンを一つ作るのに2か月かかり、レプリカなら半年になるという。

 県立鳥取西高の管弦楽部員だった表さんは一昨年、同校に楽器の修理に訪れた岡本さんに出会った。会話を交わすうちに、落ち着いた岡野さんの語り口の中にも、世界一の楽器を作りたいという熱い思いを感じた。「ひたむきに仕事に向き合う姿が輝いて見えた。こんな大人になりたい。直感的に将来の道が見えた」と、昨夏に管弦楽部の顧問の教諭や母と一緒に工房を訪ね、修業したいと頼み込んだ。

 岡本さん自身もまだ駆けだしの職人だが、「古里でチャレンジしたいという思いは一緒。本人の熱い思いをしっかり受け止めたい」と、表さんを初めての生徒として受け入れ、4月から指導している。無量塔さんの工房での経験を踏まえ、4年間のカリキュラムを組んで教え、今後、ほかにも希望者があれば受け入れていくという。
(2011年9月24日 読売新聞)
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