あの時代は小室哲哉さん
96年頃のことですが私、
若手シンガーのレコーディングで、
蓼科のスタジオに泊まり込んだり、
音楽事務所にも時々
出入りしていたことがあります。
シンガポールでCDを出していた頃です。
日本の当時はシンセの打ち込み最盛期で、
いかにノリのリズムが作れるか、
というのが売れる売れないを分けた時代でした。
小室哲哉さんの全盛期です。
TRFなどがアルバムを出すといえば
まだ名もない作曲家たちも曲を作り、
楽曲提供の売り込みをしていました。
原宿にとある小さな音楽事務所がありました。
シャカシャカリズムが聞こえています。
アクリル板(防音のため)で囲まれた中で
一日中リズムを作っている男子がいました
音楽はリズム
コイツの音楽ってなかなかいいんですよ
と太った中年社長。
そのとき私は一時帰国者の身ですから
今の日本はこうなのか
とはじめて知りました。
音楽というのはリズムのこと
という時代に驚きます。
ずっと鳴ってるシャカシャカ
=ダンスリズムですね。
それを「音楽」と言ってるのです
もうメロディではないのね。
これが日本での
小室さんの作った流行なのだと知りました
さて、そのリズムを聞きながら、
そのテカった社長がね、
「ビ・ク・ト・リー~」
ってのはどうだ?
とか歌うわけですよ。
椅子にのけぞって座ったままで。
歌というより念仏みたいでもある
「ビクトリ~♪いいですね!」
とその男子は素直な反応をします。
曲を一発当てなくてはそこにいられない。
そのとき一緒に同行していたのは
阿久悠さん時代というか、
メロディ重視時代の先輩たちです。
その事務所を出てから
お茶しながら嘆く嘆く・・・
あんな簡単に曲は作っちゃいけないよ
音楽の曲とはやはり
メロディがしっかりしているんだよね
あんなんが売れたらさ、
作曲家としてもう最悪な時代だな
で、結果なのですが
そのビクトリーというの採用されたそうで、
TRFのアルバムに入ったらしいです。
時代はノリであって
メロディなんかじゃない
という時代も過ぎて、
そして今はなんと日本は
前奏部分なくいきなり歌のサビへ
が人気だといいますよね。
イントロなんてタラタラ聞いてられない
プレリュードなんてもいらない
という直結型が多いので
インスタのリール=ほんの何秒かで見せる
というのも人気なのでしょう。
私はかつて
15秒勝負といわれるテレビCMの
音楽を作曲していた時代があるので
結構その時代に乗れそうな気もしますが、
無駄というものや
頂上の直前が一番素晴らしいという
そこの醍醐味を知ったこの年齢では
もうそこに戻る気はない(と思う)
時代にちょうど合うというのはやはり
運を掴んでいるということだと思います。
今流行っているものを「ソレいいね」
と、そう感じられるひとは
時の運をもっているといえます。
私なんて何を見てもふーん
若いからまだわからないのね
とミエの境地(笑)