「だからさ、あれは悪かったよ。あそこまで飛ぶとは思わなかったんだ」
大輔さんが何度も私に謝る。
「まあ、外野フェンスが工事中だったというのもあるけどな。あの隙間に打球を飛ばせるなんて、或る意味すごいよ」
「し、省吾。それはいいから」
「宮里、悪かったな。赤嶺に代わって俺が謝る」
今度は新城先輩が私に謝る。
まるで掛け合い漫才の様なふたりのやりとりに、思わず笑みが零れる。
「もういいですよ。なんともなかったから」
傍らで、ひかりがにこにこと微笑みながらこっちを見ている。
「おっと、そっちの可愛い子ちゃんは?」
大輔さんと新城先輩が揃ってひかりの方を見る。
「あの、転校生です。私のクラスに転入してきたばかりなの」
そういって、私はふたりにひかりを紹介した。
それから、四人はよく一緒にいる様になった。
ひかりがアメリカの高校の野球選手だったという話しに、ふたりはとても興味を持った様だ。
ただ、会話が得意でないひかり。時々、私がひかりの「通訳」みたいになって会話が進む。
私は幼馴染の大輔さんに惹かれるものがあって、大輔さんがひかりに好意を抱くのにすこし嫉妬した。
だけどひかりは、私のそんな気持ちをわかっているかの様に、大輔さんとは距離を置いていた。
そうすると、なにか自然に、ひかりと新城先輩が接近していく様な感じになった。
或る日。
母に頼まれた買い物をするために街に出て、偶然にひかりを見かけた。
ひかりは新城先輩と一緒に歩いていた。
私はなにか嬉しい気持ちになり、心の中で、「頑張れ」とひかりに言った。
すると、ひかりが突然振り向き、こちらを見た。
「・・えっ?」
距離はかなりある。しかも、こちらは人混みの中。
ひかりは私を見つけて、嬉しそうに手を振ってきた。
新城先輩はすこし照れた様な顔をしていた。
私もふたりに手を振り、小走りに近寄って行った。
でも。。どうして、ひかりは私に気付いたんだろう。
私とひかりはかなりの頻度でLINEをしている。
その日の夜も、いつもの様にひかりとLINEで話しをしていて、昼間の話題になった。
私「ところでひかり。先輩と何処行ってたの?w」
ひ「え・・あ、あれね」
私「教えてよ」
ひ「えっと、まゆに会う前に偶然に会ったの」
私「え、そうなの?」
ひ「そうだよ」
私「なーんだ。つまんないw」
ひ「つまんないって言われても・・」
私「ね、ひかり。最近さ、新城先輩と仲良いよね?w」
ひ「え・・そうかな」
私「そうだよ~。私の目は誤魔化されないよw」
私「ひかり、新城先輩の事、好きなんでしょ」
ひ「えええ?」
私「ね、ひかり。正直に自白しなさいよw」
ひ「そ、それは。。好きか嫌いかと言えば、好きな方だけど」
私「やっぱりーー!」
ひ「でも、でも、まゆも赤嶺先輩も、おんなじ位好きだよ」
私「ほうほう、そう来ましたかw」
ひ「まゆったら、もう」
私「ひかりって、新庄先輩と一緒にいるとさ、ラブラブオーラ出てるよw」
ひ「ラブラブ・・オーラ?」
私「そうそうw」
そう。LINEをしながら思い出していた。
ひかりと一緒にいると、ひかりの気持ちの様なものが伝わってくることがある。
上手く言葉では言い表せない不思議な感覚。
最近、四人でいる事が多い私達だが、特に新城先輩が居る時、ひかりの嬉しそうな気持ちが伝わってくる。
ラブラブオーラ。ほんとにそんな感じだ。
私は新城先輩の事をもっとひかりから聞きだそうとしたが、上手くはぐらかされてしまった。
だけど私は確信した。
ひかりは新城先輩に好意を持っている。
奥手のひかり。私がなんとかしてあげるね。
WONDER-四 「事件、そして」に続く…