こんにちは、販促相談員の伊丹芳則です。
あるクリーニング店の先代社長さんとのお話です。
むかし、むかし、まだクリーニングのお店が、今ほど沢山なかった時代は、『外交』と呼ばれる、一軒一軒お客さんの所に立ち寄るやり方が中心でした。
ルートを決め、決められた曜日に訪問するやり方です。
当時は、今のように『クリーニング代金』が決まっておらず、その時のお客さんとの会話から、代金を決めていました。
どういう風にしていたかと言うと、お客さんが買われた『洋服代金の10%』を、『クリーニング代金』の目安にしていたのです。
<例えば>
洋服代金が10万円だったとしたら、クリーニング代金は1万円、というような決め方です。
もし、洋服代金が20万円だったとしたら、クリーニング代金は2万円となり、逆に5万円だとしたら、5千円になります。
今のように決められた料金で仕事をすることに慣れていると、何とも不思議な決め方です。
このような洋服代金が高い場合は、注意が必要になります。
それは、価格が高いから注意するのではなく、着られるお客さんの『個別の望み』が多くなり、その個別の望みを叶えないと納得してもらえないことです。
なので、お客さんから聞いた本人が、自分で洗い、自らアイロンを持って、そのお客さんの望みを叶えるように仕上げていくのです。
でも、最初は、いろいろ要望されますが、そのうち、言われなくても分ってくるので、任せてもらえるようになります。
このような決め方が成り立つのには、1つだけ条件があります。
それは、『信頼関係』です。
そんな『信頼関係』を基にして、『外交』と呼ばれるやり方が成り立っています。
そんな中、『信頼関係』も大切だが、『料金の安さ』のほうがいいだろうと、お店を中心としたクリーニング店さんが増えて来ました。
『外交』のクリーニング代金が、『洋服代金の10%』なら、お店に持って来てもらうと『洋服代金の5%』にしよう、その洋服代金も数が一番多いものに定め、『定額制にしよう』となってきたのです。
最初は、これまで通り『外交』を使われていたお客さんが、だんだん『お店』を使われるようになり、お店中心のクリーニング店さんが主流となってきました。
こんなお話でした。
私は、『外交』と『お店』のどちらかどうと言うよりも、お客さんが使いやすいほうを選ばれたら、それでいいと思います。
しかし、残念なことが1つ。
それは、『外交』の時と比べて『お店』になると、『お客さんとの信頼関係』が希薄になって、以前は、言わなくても分っていたことが、言わなければ分からなくなってきたり、言っても伝わらなくなって来たりしているところです。
これは、お店の数が増えてお客さんも多くなり、それぞれの部門を『分業』でやっているからかもしれません。
お客さんの中には、『信頼関係』よりも、『料金が安い』ほうがいいと言われる方もいるのは事実です。
しかし、そんなお客さんばかりではなく、『信頼関係を大切にしたい』と思っている方も大勢います。
<例えば>最近の価格帯別洋服の売れ行き動向を見ると
(A)10万円単位の洋服が、高級専門店で『よく売れている』
(B)1万円単位の洋服が、専門店で『苦戦している』
(C)1千円単位の洋服が、ユ〇クロさんで『よく売れている』
これをクリーニング店さんの視点で見ると
(C)の洋服は、どちらか言うと『シミや汚れ』がひどくならない限り、クリーニング店さんに出てこない衣類です。
(B)の洋服は、今まで、クリーニング店さんに出されていた衣類です。この衣類が今、洋服店さんでは、販売に苦戦しています。
(A)の洋服は、今までも数は少なかったがクリーニング店さんに出されていた衣類です。
でも、20万円の洋服のクリーニング代金を、1万円もらうお店は非常に少ないのが現状になります。
なぜなら、『信頼関係』がないからです。
『信頼関係』がないから、クレームが怖くてもらいにくいのです。
でも、(A)の洋服を買われているお客さんは望まれています。
ちょっと極端な例でしたが、『信頼関係のある関わり方』を、もう一度見直して見るチャンスが来ているような気がするのです。
ひょっとしたら、今までにないやり方が見えてくるかもしれませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
伊丹芳則