今から30年以上前、定食屋で昼食をとっていた若き日の明石家さんまのもとに、一人の学生服姿の少年が駆け寄った。おもむろに差し出されたのは、一本の割り箸袋。「サインもらえますか?」。食事中の無遠慮な頼みに、さんまは内心「失礼なやつやな」と腹を立てた。しかし、それでもペンを走らせ、少年にサインを手渡した。それから20年の月日が流れた。新幹線で移動中のさんまに、一人のサラリーマンが深々と頭を下げて声をかけた。そして、大切そうに財布から取り出したのは、一枚の色褪せた割り箸袋。そこに書かれていたのは、紛れもなく20年前、あの定食屋で書いたさんまのサインだった。「あの時の中学生です。今でも僕の宝物です」男の言葉に、さんまは雷に打たれたような衝撃を受けた。あの日、苛立ちながらも書いた一枚のサインが、20年もの間、一人のファンの人生を支えるお守りになっていたのだ。「まだ持っとったんや〜!」。驚きと感動で目を見開いたさんまの心に、熱いものがこみ上げた。この奇跡の再会を境に、さんまのファンに対する姿勢は大きく変わる。「一生に一度しか会えない人もいる。これからは何にでも書こう」。そう心に誓ったという。割り箸袋一枚から始まった20年越しの物語。それは、お笑い界のトップを走り続ける男に「一期一会」の大切さを教え、現在の「神対応」伝説の原点となった、心温まるエピソードである。