「朝の光」  谷川俊太郎 


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朝の光は通り過ぎる 


あなたの柔らかい肌をかすめて 


テーブルの上のオレンジを迂回して 


窓から見えるあの桟橋へ 


そしてもっともっと遠くの海へと 


影のうちに心はいる 


光の素早さにおびえながらも 


それが動きやめぬことに安らいで 


繰り返すものは


どうしていつまでも新しいのだろう 


朝の光もあなたの微笑みも 


いま聞こえているヘンデルも…… 


 一度きりのものは


あっという間に古びてしまうのに 


人々が交わす


おはようとさよならのざわめきの中を 


朝の光は通り過ぎる 


まだ心は影のうちにいる 


夜の夢にとらわれて



リッドキララ