
しずかちゃんと出来杉くんが演じる白雪姫のラストシーンを劇の練習とも知らずに目撃したのび太は、顔を真っ赤にして嫉妬しますクヨクヨ考え込むのび太に、ドラえもんはタイムマシンに乗って結婚式を見てくるようにすすめます未来に向かった二人しずかちゃんと結婚するのは……のび太でした独身生活最後の日、しずかちゃんは親子三人、お別れパーティをやっていましたママに促されて、パパに挨拶に向かおうとするしずかちゃんの姿を見て、タイムマシンでやってきたのび太は「なんか沈んでる。もっとうれしそうにウキウキしなくちゃ」とひとり思います「結婚の相手がきみだもんね」というドラえもんの冗談このあと、しずかちゃんが爆弾発現をするのです「パパ! あたし、およめにいくのやめる!!」「透明マント」を被ってこっそり見守っていたドラえもんとのび太は驚天動地の表情です「わたしが行っちゃったらパパさびしくなるでしょこれまでずっと甘えたりわがままいったり……それなのに私のほうは、パパやママになんにもしてあげられなかった」するとパパはこう返します「とんでもないきみはぼくらにすばらしいおくり物を残していってくれるんだよ数えきれないほどのね最初のおくり物はきみがうまれてきてくれたことだ午前3時ごろだったよきみの産声が天使のラッパみたいにきこえたあんな楽しい音楽はきいたことがない」ソファーに腰を下ろし、パイプをくゆらせながら静かに語るパパソファーから立ち上がり、絨毯が敷きつめられた部屋を数歩進んで窓際に立つと、 パパは楽しげにこう述懐します「病院をでたとき、かすかに東の空が白んではいたが、頭の上はまだ一面の星空だったこんな広い宇宙の片すみに、ぼくの血をうけついだ生命がいま、うまれたんだそう思うとむやみに感動しちゃって涙がとまらなかったよ」「それからの毎日、楽しかった日、みちたりた日々の思い出こそ、 きみからの最高の贈り物だったんだよ少しぐらいさびしくても、思い出があたためてくれるさそんなこと気にかけなくていいんだよ」しずかちゃんは心の底にあった言葉をパパに正直に告げます「あたし……不安なの。うまくやっていけるかしら」 次のパパの言葉はこうです「やれるとものび太くんを信じなさいのび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよあの青年は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人だそれがいちばん人間にとってだいじなことなんだからね彼なら、まちがいなくきみをしあわせにしてくれるとぼくは信じているよ」現実世界の翌日、しずちゃんが玄関のドアを開けると、そこに立っていたのは、涙を流しながら 「きっときっと、きみをしあわせにしてみせるからね!!」 と叫ぶのび太と、右手で大粒の涙を拭って立ちすくむドラえもんでした
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「ドラえもんのび太の結婚前夜」より
