当時、悩んだ末に私が思ったのは、経営者と従業員が家族のような関係であればよいということだった。


単に「使う者」と「使われる者」という関係ではなく、親が子を思い、子も親のことを思うように、経営者と従業員が互いに相手のことをやさしく思いやる「家族のような関係」を会社のなかにつくれないかと考えた。


私はそうした労使関係を「大家族主義」と名づけて、今後はそれをベースとして経営していこうと思った。


しかし、家族のような関係を社内に築こうといっても、しょせんは赤の他人だ。


「親子の関係でやりましょう」とどれほど言っても簡単にうなずくはずはない。


そのため、まずは「企業経営者として、この会社をどのように経営していくのか」という考え方や哲学を確立し、それを共有することで同じ判断基準を持てるようにした。


いろいろ勉強して思いついたことを書きとめ、それを共有してもらうためにことあるごとに話をした。


ただ、当時はそういうことを従業員に話しても、「考え方は自由じゃないか」と受け取られることが大半だった。


民主主義社会では、どんな考え方で会社に勤めるのか、どんな考え方で人生を歩くのかは個々人の自由だ、というのである。


「自分はこういう人生観で生きていきたいと思うし、こういう考え方で会社経営をしていこうと思っている。それを理解してくれ」

といっても、


「社長の考え方をわれわれに強制するのはおかしいのではないか」と返ってくる。


特にインテリの従業員ほど強く反発してきた。


「確かにどのような考え方をしようと自由だ。しかし、うちの会社はこういう考え方で経営をしていくつもりだから、うちの会社で一緒にやっていこうと思うのなら、ぜひそれを理解してもらいたい。

理解できない人は自分の考えを理解してもらえる会社に行ってもらってよい」


そのように話しながら、私は一生懸命、自分の考えを伝えていった。 


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経営コンサルタントの福島正伸先生は、企業理念のことをこういいます。


「企業理念とは、その企業が何のために存在し、何を大切にし、何を目指しているのかをまとめたものです。

私は、

〈目指す理想像(ビジョン)〉

〈大切にしたい価値観〉

〈経営方針〉

〈行動基準〉

などをまとめて〈企業理念〉と呼んでいます。


企業理念は、企業の存在価値そのものであり、社会の未来につながるものでもあり、人が働く理由そのものでもあると思います。


企業は、企業理念に基づき、何を柱にして、どういう仕事をして、どういうサービスや商品を提供していくのかを考えます。


さらに、それをみんなで実践するための方法や計画も、企業理念に基づいて考えていきます。


ですから、企業にとって最も大事なことは、企業が成長することでも、もうかることでもなく、企業理念をどれだけ実践できているかだと思うのです。


私は、〈企業理念を実践すること〉が〈仕事〉だと考えています。


企業理念を実践することを通して、私たちは、社会における自分の存在価値をつくっているのだと思います」


ピーター・ドラッカー氏は「企業は社会の道具だ」と言いました。


ユニクロの柳井さんも「世の中が必要としない会社は生き残れない」と言っています。


社会に必要とされなければ、見放され、捨てられてしまうのです。


自分本位で誰の役にも立っていなくて、誰も幸せにしていない会社は生き残っていけません。


そういう会社では、働きたいとも思ってもらえません。


喜びや笑顔を増やし、悲しみや涙を減らすことが、そのまま「やり甲斐」や「貢献感」にも繋がりますね♪


今一度、理念を実践していこうと思います。 


 ※魂がふるえる話より