阿川佐和子氏の心に響く言葉より… 


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根が小心者のお調子者なので、日々落ち込んだり反省したりの繰り返しである。 


自らの努力が足りないくせに、「どうせ才能ないもんね」などとすぐひがむ。


加えて、甘ったれでもあるから、ひがんだ後は誰かになぐさめてもらいたくなる。 


「大丈夫。元気を出しなさい」 


励まされれば、まもなく元気を取り戻す単純な性格ゆえに、今まで数限りない「優しい言葉」のお世話になってきた。 


数年前にお会いした中国の映画監督である張藝謀(チャンイーモウ)氏の言葉も、私の人生において忘れられない一言となっている。 


「小さい頃から映画がお好きだったんですか?」質問すると監督は、軽く微笑んで、 

「いや、子供の頃は、映画に興味を持つ余裕なんてありませんでしたよ」


張藝謀監督は現在(二〇〇七年) 五〇代の半ば。


 父親が国民党の軍人であったため、対立していた共産党が天下を取り、文化大革命が始まってからは、夢も理想も持つことを許されない青春時代を送る。


しかしときは移り、虐げられた生活から少しずつ解放されるにつれ、そういう階級の若者にもチャンスが巡ってきた。 


「大学へ入る枠が用意されたんです。

大学卒業という資格さえあれば今よりいい職にありつける。

だからどこの大学でもよかったんですよ。

体育大学で募集があると聞けば、毎朝、走る 訓練をして受けに行き、美術大学の募集があれば、毎日、絵を描き始めるという具合にね」 


そんな勢いのなかで監督は、すでに年齢が二七歳になっていたが、ひたすら卒業資格に魅かれて映画専門大学への入学を果たす。


しかし、入った撮影科は自分より若い人だらけ。


これでは卒業後にカメラマンの仕事が巡ってこないかもしれない。


ふと隣の監督科を覗くと、年齢層が高い。


どうやらこちらのほうが将来性はあると判断し、ひそかに監督の勉強を始める。 


「私の場合、映画大学に入ったのも監督をやるようになったのも、別に理想や情熱があった わけじゃない。

だから今でも私の家族は、どうして私が監督なんかになったのかわからないと言ってますよ」


 そして監督は静かにおっしゃった。 


「でもね、人生なんて、そんなものじゃないかと思うんです。

私のように理想なんか持たず、 運命に翻弄されて、いたしかたない選択を繰り返していても、いつのまにか道が開けているんですから」


 目の前に突きつけられた二者択一を、その場の理由で選び続ける。


それがたとえ本意でなくとも、選んでいるのは自分である。


そしてその選択の積み重ねがどれほど予想外の方向へ行っ ていたとしても、自分が選んだ道なのである。 


私はここで胸が熱くなった。


これまで、「人生の目標は何ですか?」と問われるたび、私は言葉に窮してきた。


そんなものはない。


専門分野も持っていない。


現在、自分が何屋だか、何になりたいのかもおぼつかない。


こんな人間は失格かしら。


長らく私は自分の生き方に自信が持てずにいた。


しかし張藝謀監督の言葉を知ってからは、少しだけ胸を張って答えられるようになったのだ。


 「具体的な目標は何もありません。

ただ、今、目の前に与えられたことを楽しんで、誠意を尽くして、ときに怠けても、自分で選んだ責任を自覚して実行していけば、そんなに間違った 人生にはならないと思っています」


 多少、自分に都合のいいように解釈している嫌いがあるけれど、張藝謀監督のさりげない一言が、ずっと私の支えであることにはちがいない。



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成功するキャリアの8割は偶然によってもたらされる、というスタンフォード大学のクランボルツ教授の「プランドハプンスタンス」理論というものがある。


多くの子供たちの将来の夢、「サッカーや野球等のスポーツ選手」、「ユーチューバー」「芸能人、タレント、モデル」等々のほとんどは叶わない。


大多数の人は、自分に起こる偶然の出来事によって、思ってもみなかった職業に就くことになる。


クランボルツ教授はよき偶然をつかみ取るのに必要な5つの大事な資質があるという。


それが・・・


●【好奇心】新しいことに興味を持つ


●【持続性】失敗してもあきらめない


●【柔軟性】計画を変えることを恐れない


●【楽観性】出来事を前向きに解釈する


●【冒険心】小さなリスクを取ってみる


目の前に突きつけられた二者択一を、「好奇心」「持続性」「柔軟性」「楽観性」「冒険心」を持って選んでいくと、人生は明るい方向へ開ける。


「人生は二者択一の積み重ね」という言葉を胸に刻みたい。


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