自分が泣いた話じゃないけれど。
僕の彼女は片足が生まれつき不自由で、調子が良い時は杖で、調子が悪い時は車椅子の生活です。
そんな彼女ですが、僕は彼女の杖代わりになったり、車椅子を押して散歩したりと普通に生活しています。
去年の夏ですが彼女が密かに海水浴に行きたいけれど言い出せないでいる事を、彼女の親から聞いた私はその願いを叶えようと二人で海水浴に行きました。
最寄りの駅まで電車で行き、駅からやや距離があるので、タクシーを使いました。
その時の彼女は調子が良く杖をつきながら出歩けたので、きっと楽しい海水浴になるだろうと期待をふくらませていました。
その海水浴は僕ら二人にとってとても楽しい思い出になりました。
砂浜は杖が埋まってしまい彼女は一人で歩けなかったけど、荷物と彼女を背負っている僕を見て、浜辺まで乗せてくれたタクシーの運転手さんが荷物を持ってくれました。
海の家のおばさんは僕が持ってきたパラソルを見て、それじゃ彼女が寝そべられないだろうと言い、大きなパラソルを貸してくれました。
パラソルのレンタル料を払おうとするとおばちゃんは「彼氏さんのがんばりにご褒美だよ。いらないよ。」と言ってお金を受け取ろうとし ませんでした。
ライフセーバーの方たちは「何か困った事があったら、何でも言ってくれて良いから遠慮しないで。」と声をかけてくれました。
お昼ご飯を食べる時も海の家のおじさんは「出来たら持って行ってあげるから浜で待っていな」と言い、本当に僕らのところまで出前してくれました。
食べ終わった時には食器を取りに来てくれたばかりか、かき氷をおごってくれました。
砂浜で彼女が砂遊びをしていたら、小さな女の子が一緒に遊んでくれました。
そしてそろそろ帰ろうと帰る準備をしていると、なんと朝のタクシーの運転手さんに声をかけられました。
話を聞くと、僕らが帰る頃に電話してくれと海のおばさんに頼んでいてくれたそうです。
そして僕らは海の家のおじさんとおばさんに何度もお礼を言ってタクシーに乗りました。
そのタクシーの中で彼女は突然泣き始めました。
驚いた僕と運転手さんがなだめようとすると「ちがうの、すごくうれしいの。 ありがとうね、本当にありがとうね。 とっても楽しかったよ。」と僕と運転手さんに何度も言いました。
運転手さんも涙ぐんでいました。
世の中、まだまだ捨てたもんじゃないと思いますよ。
今年もまたあの浜辺に行きたいな。
※思わず涙する感動秘話より




