「自然に、充分自然に」伊東静雄

草むらに子供はもがく小鳥を見つけた。
子供はのがしはしなかつた。
けれど何か瀕死に傷きずついた小鳥の方でも はげしくその手に噛みついた。
子供はハツトその愛撫を裏切られて 小鳥を力まかせに投げつけた。
小鳥は奇妙につよく空(くう)を蹴り 翻り 自然にかたへの枝をえらんだ。
自然に?
左様 充分自然に!
――やがて子供は見たのであつた、 礫(こいし)のやうにそれが地上に落ちるのを。
そこに小鳥はらくらくと仰けにね転んだ。
伊東静雄ウィキペディアhttps://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E6%9D%B1%E9%9D%99%E9%9B%84


