「どんな仕事でも人を幸せにできる」
~「私が一番受けたいココロの授業」ごま書房新社、著者・比田井和孝さんのブログから~

先日、東京に講演を聞きに行きました。
地下鉄大手町駅に向かう途中、東京駅の丸の内北口に立ったとき、靴磨きのおじさんがいたんです。
私は靴磨きなどしてもらったことは一度もないのですが、最近はちょっと成長して、靴が汚れていると気になるようになりました。
ミリオンセラーの「夢をかなえるゾウ」という本でも、ゾウがうだつのあがらない主人公サラリーマンに一番最初に教えたのは、「靴を磨きなさい」でしたよね。
芳直さんも、「革靴を靴べらを使わずに履いてはいけません。かかとは靴の命です」 なんて、おっしゃっていました。
私もよく、かかとを踏んで靴を履いている学生には、「かかとは靴の命だ!かかとを踏むな!」と注意をします。
そんなこともあり、最近、「靴って大事だよなぁ」と思っていたのです。
そこに登場した、靴磨きのおじさんです。
看板を見ると、「700円」と書いてありました。
「ちょっと、お願いしてみようかなぁ」と思い、
「すみません、時間どれくらいかかります?」と聞くと、 「5分ぐらいですよ!」と、感じの良いおじさんでした。
「じゃぁ、お願いします」と言って、人生初の靴磨きスタートです。
まずは右足です。
手際よく、靴を磨き始めました。
私は職業柄、いろんな職業の方が、どんな思いで働いているかということにとっても興味があります。
ですので、「せっかくだから」と思い、おじさんに、「この場所は長いんですか?」と聞きました。
その答えを聞いて驚きました・・・。
「この場所ですか?そうですねぇ、親父の代から数えたら、もう60年になりますかねぇ」
私の頭の中が「??????」になりました。
「親父の代って???」みたいな感じです。
本当に失礼な話なんですが、私は、「靴磨き」という職業がこんな風に代々受け継がれていくものだなんて思ってもみませんでした。
もしかしたら、こんな不景気な時代だから、仕事がなくて仕方なく「靴磨き」をしているのかなぁ、…なんて思っていました。
だから私は、「親父の代から60年」と聞いて、ビッッックリしたんです。
「えっ、お父さんの代からここでやってるんですか?」
「そうですよ、私は学生の頃からですから、30年ぐらいですかねぇ。
いつもは、兄と一緒にやっているんだけど、今日は天気が悪いから一人で来たんです」
なんて言うんです。
またしても、ビックリです。
以前、「靴磨き」って言うのは奥が深くて、靴磨きのために、海外に修行に行っていた人の話を聞いたことがありました。
この靴磨きのおじさんも、「靴磨き職人一家」ってことなんです。
お父さんは靴磨きで家族を養い、子どもを大学までいかせているんです。
しかも、そのお父さんの姿を見て、息子さん二人が靴磨きを継いでいるんです。
感動しました。
そこからは、私の質問攻撃のスタートです!
比田井 「え~!そうなんですか?!学生のときからされていたんですね。やっぱり、靴磨きも奥が深いんですよね。」
おじさん 「下手な人は、油を塗ろうとするんですよ」
「塗るんじゃないんだよ、染みこませるんだよ。塗るだけだと、一回雨に当たればもうおしまいなんだよ。いかに染みこませるかが、腕のみせどころなんですよ」
比田井 「へ~、そうなんですか?なんかコツとかあるんですか?」
おじさん「言葉では説明できないんだよね。皮の種類、質、状態、湿度なんかで全部違うから・・・。感覚だね」
比田井 「ちなみに一人前になるのに、何年ぐらいかかるんですか?」
おじさん 「10年はかかるね。」
比田井 「へ~、10年ですか!奥深いですね~!でも、そんな名人芸だったら、お客さんはまた来てくれますよね」
おじさん 「そうだね~。8割は常連さんだね。そのうちのほとんどは社長だよ」
比田井 「ほとんど、社長さんですか?やっぱり社長さんは違いますね~!」
おじさん「違うんだよ、社長になって磨いたんじゃないんだよ。靴を磨くような人がみんな社長になったんだよ。だからお客さんも社長になれるよ(笑)」
比田井 「あ、そうですか?ありがとうございます!社長目指して頑張ります!」
みなさん、どうですか?
いつも、靴をピカピカに磨いているような人が社長になるんです。
いい仕事ができるんです。
う~ん、納得です。
結局、5分では終わらず、15分ぐらいはお話をしていましたが、その15分でとてもたくさんの事を学ばせて頂きました。
安い700円でした。
「どんな仕事でも、人を幸せにできる。それを決めるのは、その仕事をする人間の『あり方』」 そんなことを教えていただきました。
※「違うんだよ、社長になって磨いたんじゃないんだよ。靴を磨くような人がみんな社長になったんだよ。だからお客さんも社長になれるよ」
この言葉がポイントですね!(^_-)-☆

