「こんな顔で ~山田寺の仏頭によせて~」 相田みつを

宮沢賢治の詩にある
「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」
というのはこんな顔の人をいうのだろうか-
この顔はかなしみに耐えた顔である
くるしみに耐えた顔である
人の世の様々な批判にじっと耐えた顔である
そしてひとことも弁解をしない顔である
なんにも言い訳をしない顔である
そしてまたどんなにくるしくても
どんなにつらくても
決して弱音を吐かない顔である
絶対にぐちを言わない顔である
そのかわり
やらねばならぬことは
ただ黙ってやってゆくという
固い意志の顔である
一番大事なものに
一番大事ないのちをかけてゆく-
そういうキゼンとした顔である
この眼の深さを見るがいい
深い眼(まなこ)の底にある
さらに深い憂いを見るがいい
弁解や言いわけばかりしている人間には
この深い憂いはできない
息子よ
こんな顔で生きて欲しい娘よ
こんな顔の若者とめぐりあってほしい
※山田寺 ウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E7%94%B0%E5%AF%BA




