
私が子どもたちの将来のことを思い、この世からなくしたいものがあります。
それは、テレビ、携帯電話、ゲーム、ファストフードです。
これらは家族が心を交わす時間を侵害するものだと思うからです。
しかし、どうあがいても、それらをすべて排除することなんてできません。
では、どうすればいいのか。
私たち大人が一歩でも、いや半歩でも踏み出してみることだと思うのです。
それは特別なことではありません。
食卓を囲むときはテレビを消して会話を楽しむ。
食卓には携帯電話を持ち込まない。
朝、子どもが登校するときに、玄関まで行って送り出し、おふくろ料理にとことんこだわってみるといった具合にです。
これまで子どもの誕生日にしかお祝いをしなかったら、両親の誕生日をお祝いする。
しかも、子どもが率先して、両親の誕生日をお祝いできるような子に育てる。
それが子育ての着地点のように思えてなりません。
わが家には、長女が生まれてから毎年クリスマスにサンタクロースがやってきました。
もちろん、サンタは私たち親。
長女が二十歳になったときのことです。
長女の部屋にサンタから一枚のカードが届きました。
「サンタクロースは子どもにささやかな夢と希望とプレゼントを運んできます。
あなたは今年、二十歳になりました。
もう、あなたのところに来ることは出来ません。
夢と希望を叶えたいと思えば、自分の力と少しだけお父さん、お母さんに手伝ってもらって叶えてください」。
長女は、「サンタさん、もう来ないんだって。たくさんの夢をありがとう」と号泣しました。
〈優しい子に育ってくれたのね〉。
私もそうつぶやきました。
私は子どもを産んだとき、初めて「愛おしい」という言葉の意味が理解できました。
子どもが幸せになってほしいと願わない親はいないはず。
人は愛されて人になるのです。
ぜひお母さんたちには今しか味わうことのできない子育てを楽しんで、たっぷりと愛情を注いでいってほしいと願っています。
内田 美智子さん (助産師)
『やくしん』2012年2月号 (佼成出版社)より一部抜粋


