ある医師が大病を患い、突然歩けなくなりました。


ときめきが続く、お花の定期便bloomee(ブルーミー)

 

何が起きたのだろうと考えるうちに病状は容赦なく進み、立つこともできなくなり、寝室の傍にあるトイレにさえ一人で行けなくなりました。


筋肉が萎縮し、力が抜けていくという病気でした。 


病状は日に日に悪化し、ペン一本すら重くて持てなくなりました。


そうなると、死ということが頭から離れなくなります。


まして、素人ではなく、医師ですから、刻々と自分が死の淵に近づいていることは、嫌がうえにもわかります。 


この人は、ある縁で、過酷なアウシュヴィッツの収容所から生還した精神科医、ヴィクトール・フランクルの知遇を得ていました。


すでにフランクル先生はなくなっていましたが、その奥さんに手紙を書きました。 


「エリーさん、さようなら。僕はいま死ぬような大病を患っています。もう二度とウィーンの街を歩きまわることはないでしょう。これからフランクル先生のもとに参ります」 


すると、フランクル先生の未亡人から返事がきました。 


「あなたがそんな病気でいるなんてとても信じられない。私は医者ではないので、あなたに何もしてあげられない。でも、ヴィクトールが生前、いつも私に言っていた言葉をあなたに贈ります」


この言葉が、この医師を死の淵からよみがえらせます。


ヴィクトール・フランクルは、次のように言っていたといいます。


 「人間だれしもアウシュヴィッツ(苦悩)を持っている。しかし、あなたが人生に絶望しても、人生はあなたに絶望していない。あなたを待っている誰かや何かがある限り、あなたは生き延びることはできるし、自己実現できる」


この医師は、この言葉を何度も何十度も、否、何百度も読み返して考えました。 


今の自分にとって生きる意味とは何だろう、と。


そして、「あなたを待っている誰かや何か」とは何か、と言うことに焦点を当てて考え続けました。


そして、自分を待っているのは、医学教育だということが分かり、医学の世界に入ってくる若い人たちに医学とは何かを伝えることだと分かりました。


リハビリに専念し、ハリ治療や漢方薬、温泉療法などにも取り組み、二年後、職場に復帰するという奇跡が起きました。 


ドクター・フランクルの言葉は、死後もなお多くの人を救っているのです。 


たとえあなたが人生に絶望しても、人生はあなたに絶望していないのです。 


 ヴィクトール・フランクル ウィキペディア