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『運を生かすには、チャンスを「他者運」から「自己運」に変える 』 


 朝、出社すると常務から呼ばれて「編集長が倒れた」というのです。 


それは大変だと思いましたが、そのあとの常務の言葉を聞いて、私は驚愕しました。 


「それで社長と相談した結果、今日から君が編集長だ」というのです。 


当時の「女性自身」はすでに80万部の大雑誌になっていて、部員も40人くらいいました。


記者、ライター、カメラマンを含めたら、150人にのぼるでしょう。 


私は副編集長でしたが、年長の方もいれば、実力派の幹部もいます。 


その中でも最年少の私が編集長になるなど、ありえないことでした。 


「とんでもない」と辞退したことはいうまでもありません。


でも「編集長になるというのは決定事項だ」というのです。 


そこで「編集長代理で頑張ります」といいましたが、それでは許してくれません。 


それどころか「イエスというまで、この部屋からは出てはいけない」と、一人で会議室に取り残され、30分ほどたった頃、常務が戻ってきました。


「どうだ、気持ちは決まったか」と聞かれ、しかたなく「とりあえず、やってみます」と答えました。 


それだけでも私には大きな決心でしたが、常務は、「それではダメだ」といいます。 


「編集長になって成功させる、といわなければダメだ」 


そういわれても、そんな自信はありません。


私にすれば、つい1、2時間前には、思ってもみないことだったのです。 


結局、さらに30分の時間をもらって、ようやく私は「編集長になって成功させます」といいました。 


常務に「自分が編集長になる」といって、会議室から解放された私は、自分の変化にびっくりしました。 


それまで自分が編集長になることなど考えもしなかったのに、会議室を出たら、編集長として考えている自分になっていたのです。 


そうして編集部の部屋に入っていったときには、顔つきが違っていたと、あとで部員からいわれて、そのことを実感しました。 


いま思えば「頑張ります」ではなく、「成功させます」といったことで「他者運」を「自己運」に変えたのだと思います。 


「他者運」とは「人からもらった運」です。 


編集長に抜擢されたのは運のよさですが、それは「他者運」にすぎません。 


それを「自分が成功させます」と決心したところで「自己運」に変えたわけです。 


実際に編集長になってからは、さまざまな問題が私の前に立ちはだかりました。 


私が若いことで「編集長として認めたくない」という部員たちとの人間関係、ライバル誌が出たことによる部数の伸び悩みなど「編集長になっていなければ、こんな苦労はしないのに」という問題を抱えながら頑張れたのは「自己運」にしていたからだと思います。 


もしも「他者運」だけで引き受けていたら、とっくに音(ね)をあげていたでしょう。 


そうなれば、編集長の任は解かれたかもしれませんが、その後の成功も、いまの私もなかったはずです。 


こうした体験から、運を生かすには、チャンスを「自己運」にできるかどうかだ、と私は思っています。


 ※出典:「運のいい人、悪い人 ―人生の幸福度を上げる方法」 本田 健,櫻井秀勲 きずな出版


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