「捨の修行①」
坂村真民
年をとると、どうして駄目になるのか。
これだけはじぶんが年をとらねば
わからぬことである。
どんな英雄でも、
年をとって駄目になり、
その栄光の歴史を、
晩年で汚している。
そのわけは一言でいえば、
自分を捨てきれない
からである。
捨てるということが、
どんなに大事であるか、
そしてどんなに難しいことであるか、
かつての柔軟な魂を喪失し、
頑固さだけが残り、
一切の判断が齟齬(そご)してゆくのである。
「捨の修行②」
仏典も聖書も捨を言う。
だから究極はここにこなくてはならぬ。
でも、ここにくることの何と至難なことであろう。
大変な行を積んだ人でも、
その行からきた
名声地位を捨てきらずに駄目になってゆく。 (中略)
人間は修行を怠ると一ぺんに駄目になる。
捨にも修行が大事である。




