本田宗一郎
これはあるテスト室での話 おやじは部屋にいて机に向かっている事など殆どない、暇さえあれば現場に行って 色々な部品を手に取ったり、眺めたりして、研究者と意見を交わすのが日課であった。
ある日、構成部品が故障するという問題が発生した、早速おやじが手にとって、ああしたら どうだ、こうしたらどうだと意見を出していた、アイデアマンのおやじは相変わらず とんでもない様な珍案奇案をポンポンと出していた。
その各案があまりにもコストの高くなりそうな様子にたまりかね、担当者が
「社長この故障は僅か 一万回に一回位ですから僅か0.01%の故障率です、対策しなくても大丈夫ですよ!」
と言った。
とたんおやじの顔がサッと変わり、いきなりカミナリが落ちた、
「バカヤロウー、、その一個を買ったお客さんにとっては100%の確率じゃないか、何を考えているのだ、、 そんな事が判らんのか!、、」
それから暫くカミナリが鳴り響いたのは言うまでもない。
私は常にお客さんの立場に立って物をみるおやじの考え方に、完全に心が洗われる思いだった。

