昔インドの小さな村に一人の農夫がいました。不運にも彼は、村の金貸しに多額の借金をしてしまいました。

その金貸しは年老いて醜い男でしたが、農夫の美しい娘を自分のものにしたいと思っていました。

そこで金貸しはある取引を提案したのです。

金貸しの言い出したその取引とは、”自分と娘を結婚させたら、農夫の借金をなかったことにしてやろう。”というものでした。

農夫と娘は恐ろしくてぞっとしました。

すると悪賢い金貸しはこの問題を神様に解決してもらおうと言い出したのです。

金貸しは次のように言いました。

まず金貸しが黒い小石と白い小石を空の金袋に入れます。

そして娘がその袋から小石を一つ取り出します。


1. もし娘が取り出したのが黒い小石であったら、娘は金貸しの妻になり父親の農夫の借金はなかったことになる。

2. もし娘が取り出したのが白い小石であったら、娘は金貸しの妻にならなくてもよく、しかも父親の農夫の借金もなかったことになる。

3. しかし、娘が小石を引くことを拒むなら、父親は牢に入れられるだろう。


3人は農夫の庭の小石が敷かれた道の上に立っていました。

話しながら金貸しはしゃがみ込んで2つの小石を拾いました。

その時、めざとい娘は、金貸しが黒い小石を2つ拾い上げて袋に入れたのに気付きました。

金貸しは娘に袋から小石を一つ取り出すように言ったのです。

さてここで、あなたがこの庭に立っていると想像してみてください。

もしあなたがこの娘であったらどうしますか?もしあなたが娘に助言する立場であったなら、あなたはなんと言いますか?


1. 娘は袋から小石を選ぶことを断るべきである。

2. 娘は袋の中には黒い小石が二つ入っていることを示して、金貸しがだまそうとしていることを明らかにすべきである。

3. 娘は黒い小石を引いて、父親が借金のために投獄されることから救うべきである。


さて、あなたなら娘になんとアドバイスしますか?

娘のとった方法とは次のようなものでした…。娘は袋の中に手を入れて小石を取り出しました。

そして取った小石の色を見ないまま、それを小石が敷き詰められた道に落っことしてしまったのです。

落ちた石はたちまち他の石に紛れてどれがどれだか分からなくなってしまいました。

「あら、私ったら何て不器用なのかしら。」

娘は言いました。

「でも大丈夫。袋に何色の石が残っているかをみれば、私の引いた石の色が分かりますから。」袋に残った石の色は黒なので、娘が引いた石の色は白だということになります。

金貸しは自分が最初にいんちきをしたとはとても言い出すことができませんでした。

こうして娘は、絶体絶命と思われた状況を、自分にとって非常に有利な状況に変えたのでした。


※『 思わず涙する感動秘話』