最近、X(旧Twitter)で、複数の実名や匿名の弁護士から、

 

  1. 別の弁護士が、その人の家計状況から見て明らかに無理のある任意整理をまとめる(弁護士費用がかなりかかっていたり、弁護士と実際に会ったことがないことも指摘されています。)。
  2. 当然、すぐに任意整理で合意した内容通りの支払ができなくなり、破産する必要が生じる。
  3. しかし、任意整理をした弁護士は、破産には対応してくれず、(一般的な弁護士費用より、弁護士費用がかなり安く設定されている)法テラスを利用して別の弁護士に依頼するように言われてしまった
…という流れで受任した破産事件に関するポストがなされました(関連するポストを「無理な任意整理」関連まとめにまとめました。)
 
このようなケースでは、任意整理のために払った弁護士費用&任意整理に基づいて途中まで支払った金額が無駄になり、債務整理がご本人の生活再建に全く役立っていません。
 
そもそも任意整理は、
 

①  当初の取引より全ての取引履歴の開示を求め

②  利息制限法の利率によって元本充当計算(引き直し計算)を行い、債権額を確定

③  それまでの遅延損害金、将来利息は付さずに和解案を提示
 

するものですが、出資法の改正(平成18年12月改正)とその施行(平成22年6月18日)から長期間が経過した現在、上限金利が20%に引き下げられ、グレーゾーン金利が撤廃されたことにより、任意整理において利息制限法の利率によって引き直し計算をすることが必要な場合(引き直し計算によって元本が大幅に減ったり、過払金が発生したりする。)はかなり少なくなっています。引き直し計算をしないのですから、元本は減りません。
ですので、大部分の債務整理において、合理的な選択肢は、債務を支払う必要がなくなる破産です。
 

債務整理の相談当初、「できれば破産は避けたい」と仰る方はいらっしゃいます。ご本人の意思に反して破産手続を進めることはもちろんありませんが、「できれば破産は避けたい」との希望は破産手続に対する誤解や抽象的な不安・イメージに基づくことが多く、誤解を解いたり不安を解消していただくための説明をすることで、やはり経済的には最も合理的な破産手続を選択されることが多いです

それなのに、一部の弁護士や司法書士が(客観的にみて手続選択として破産が妥当でも)「任意整理」を行い、任意整理の失敗後の破産手続は行わない理由は、裁判所を介さない任意整理は、債務・資産・収入等に関する客観的資料を揃え、債務増加の経緯等も書面化して裁判所に申立をすることが必要(しかも破産や個人再生の運用には地方によって差もある)な破産や個人再生より楽で、広告により全国から大量に集客して定型的な処理を行い、効率よく稼ぐことに向いているからだと思います。

しかし、そのような任意整理を行っても、払いきれずに結局、破産や個人再生を行うことになるのであれば、依頼者の生活再建にはなんの意味もありません。


日本弁護士連合会の会規である債務整理事件処理の規律を定める規程には、債務整理事件の勧誘、受任及び法律事務処理に関して弁護士が遵守すべき事項として、債務整理事件を受任するにあたっては、弁護士が依頼者と自ら面談することや、債務の内容だけでなく、債務者及び債務者と生計を同じくする家族の資産、収入、生活費その他の生活状況等も聴取することが定められています

なお、日本司法書士連合会にも、債務整理事件の処理に関する指針があり、債務整理事件の依頼を受けるに当たっての直接面談や、面談においては、負債の状況、資産及び収入の状況並びに生活の状況等の現状を具体的に聴き取り、依頼者の置かれた状況を十分に把握したうえで、債務整理事件処理及び生活再建の見通しを説明することが定められています

弁護士が直接、生活状況等を伺った上でなければ、その方にとって最もベストな手続選択(任意整理なのか、破産なのか、個人再生なのか)はできません。また生活状況等を伺った上で破産や個人再生が適切な場合であれば、債務や収入や資産に関する資料をご用意頂き、その内容について確認させて頂くことは不可欠です(複数の資料を同時に見ながら打ち合わせをさせて頂きますので、債務整理事件処理の規律を定める規程がなくても、直接お会いせずに事件処理をすることは困難です。)。

債務整理を扱っている弁護士や司法書士の広告・宣伝が全て問題なわけではもちろんありませんが、債務整理事件における弁護士や司法書士の直接面談の重要性からは、全国に支店があるわけでもないのに全国対応を打ち出していたり、事務所に所属する弁護士・司法書士の数に比して非常に多い件数を債務整理事件処理の実績として掲げている広告・宣伝には大きな疑問があることを知って頂きたくこの記事を書きました。