今回は、田村琢実埼玉県議団長の選挙区(さいたま市貝沼区)もある、さいたま市の学童保育待機児童問題について詳しく見ていきたいと思います。

 

さいたま市の待機児童数は公式統計で政令指定都市ワースト1位(昨年で311人)ですが、この公式統計には暗数がかなりあります

 

まず、さいたま市における学童待機児童とは、市に申込みをする公設学童の待機児童を基準として算出されます。

さいたま市が公表している「さいたま市の放課後児童クラブのあり方」でも、待機児童を「公設放課後児童クラブに入所待ち児童をいいます。」と定義されています。

 

さいたま市の学童保育が全て公設の学童保育であれば、上記の定義でも実態にあった待機児童数が算出されるのでしょうが、さいたま市/放課後児童クラブ一覧によれば、令和5年度のさいたま市における公設学童は74カ所公設放課後児童クラブ一覧)であるのに対し、民設学童は令和5年10月時点で240カ所令和5年度民設放課後児童クラブ一覧。こちらには施設数の合計が書いていないので数えました。)。民設学童が公設学童の3倍以上あり、さいたま市の学童保育に占める公設学童の割合は約23.6%にも関わらず、さいたま市の待機児童の定義は「公設放課後児童クラブに入所待ち児童」となっているのです。

 

さいたま市の学童保育の待機児童の算出方法については、さいファミ!さいたま市ファミリーのためのWEBメディアの記事、【さいたま市の学童情報まとめ暫定版2023③】入れない?倍率は?待機児童(放課後児童クラブ令和5年)も是非ご覧ください。

 

さいたま市は、公設学童への入所不承諾となった人数から、市が委託している民設民営学童に入所できた人数等を引いて待機児童数を算出しているのですが、ここで問題なのは、そもそも、さいたま市には公設学童がない学区もかなりあるということ。

 

下の表は、令和5年2月6日のさいたま市の公設放課後児童クラブ令和5年4月入室一次選考結果ですが、大宮区の申込者数が他の区に比べて極端に少ないことが分かります(なお、令和5年の一次選考の不承諾数は1807ですが、令和4年は1602)。

 

調べたところ、大宮区は、区全体の学区が9学区あるのに対し、公設学童のある学区は2学区!しかありません。公設学童がない学区の方は、申し込む公設学童がありませんから、公設学童への申込みはしたくてもできません

 

さいたま市の学童待機児童数は、あくまでも「公設学童へ申し込んだけど入れなかった人」を基準にしているので、公設学童のない地域の人は、どんな状況でも待機児童にカウントされないのです。。さいたま市の放課後児童クラブのあり方」にも、「待機児童数は、公設クラブ数と相関関係にあり、公設クラブの少ない大宮区、北区などでは、待機児童は少なくなっています」との記載があり、さいたま市が(さいたま市全体の学童保育の4分の1以下の)公設学童保育への申込みをして不承諾になった人数を基準に待機児童数を算出していることが分かります。

 

さいたま市の場合、大きな合併をしてできた市である関係で、旧大宮市(西区、北区、大宮区、見沼区←田村琢実埼玉県議団長の選挙区)が他の区より、明らかに公設学童が少なく、「公設学童が少ないから待機児童も少ない」状況になっています。。

 

公設学童のない地域はどうするのかというと、民設民営学童保育に入ることになります。

さいたま市の場合、民設民営学童保育の多くは、保護者会由来のNPOです。さいたま市が公開している資料によると、令和4年におけるさいたま市の民設学童保育が222カ所ですが、そのうちの120カ所が保護者会由来のNPOが運営する学童保育であることが分かります。

 

 

そして、さいたま市では、公設の学童保育は平成28年から令和4年まで全く増えておらず、その間、最も学童保育を増やし、保護者の就労と子どもの安全で豊かな放課後の両立のための受け皿を用意してきたのが保護者会由来のNPO法人であることも分かります

 

保護者会由来のNPO法人では、学童保育の入所希望者が増えると、保護者達が仕事と育児の傍ら、休日を削ってローラー作戦で学童保育に適した空き物件を探し、市議等にも根回しして地域の理解を得て、無償の活動で学童保育を増やしているのです。

 

同じ小学校に通う保護者同士で、待機児童を出したくないから

 

学校外における学童保育づくりは、残念ながら地域の反対が起こることもあり、市議や自治会を通じて地域への根回しも重要です。さいたま市の市議の方にも、学童保育を増やすことの大変さの観点から、あの埼玉県虐待禁止条例改正案の無茶さを理解される方もいらっしゃると思います(私も編著者である、子どもにやさしい学童保育 学童保育の施設を考えるにも、さいたま市の保護者会由来のNPOによる学童保育の施設づくりの事例がありますが、そこには地域議員への協力依頼についても記載があります。)。

 

私も保護者運営の学童保育で市保護者として学童保育の施設づくりを経験しましたが、心身を害するレベルの大変さとプレッシャーです。学童保育がないとどれだけ困るか当事者としてよくよく分かっているからこそ、大きなプレッシャーがありました。

 

でも、さいたま市において、公設学童がないから公設学童に申込みをしていない地域での、学童保育に入れた・入れないの問題はは、さいたま市の公式統計の数字には出てきません。

 

また、公設学童のある地域でも、公設学童の不承諾者数は非常に多く、公設に入れなかった人の受け入れ先の多くが、先輩保護者が必死で場所探しをしてできた民設民営学童であることも変わりありません。

 

話題の田村県議団長が、保護者がこのような苦労をされている旧大宮市区域の選挙区(貝沼区)であることを知り、学童保育の待機児童解消を保護者任せにしている実態のある地域が「旗振り役の選挙区」なのに、埼玉県虐待禁止条例改正案はあの内容だったのか、という気持ちが強くなりました。

 

それでなくても、場所が見つからなくて多くの待機児童が出たらどうしようと思いながらの、仕事と育児の傍らの場所探しは大変です。

 

埼玉県虐待禁止条例改正案が通っていたら、さいたま市では

「学童保育に入れなかったら、虐待と通報されるのに怯えて仕事するか、辞めるかしかありません、、でも、仕事を辞めたら生活が成り立たないんです。私は学童保育に入れそうですか?」

 

という悲痛な思いをする保護者のための場所探しを、保護者がしなければいけない状況でした。

 

今回の件を機に、学童保育の待機児童問題の暗数、実態把握の難しさについても、多くの方に知って頂きたいと思っています。